タスクの整理がしきれず締め切りギリギリになってしまう。感情のコントロールができず仕事に集中できないときがある。自分の向き不向きが分からないためただ目の前にある仕事をこなすことに終始してしまう……。そんなふうに悩んではいませんか?
仕事において自分のパフォーマンスを向上させるには、自分自身をマネジメントする力、つまりセルフマネジメント能力を身につけることが重要です。今回は、セルフマネジメント能力を身につける方法をご紹介します。
セルフマネジメント能力とは
一般的には自己管理能力だと解釈されることの多い「セルフマネジメント能力」という言葉ですが、ビジネスパーソン向けにプロジェクト管理について解説しているサイト・MyManagementGuide.comでは、次のように説明されています。
Self-management skills are those abilities that allow an employee to feel more productive when doing daily routine regardless of the working environment. Well-developed self-management skills will help you efficiently communicate with co-workers, management and customers, make right decisions, plan your working time, and keep your body healthy.
(引用元:My ManagementGuide.com|Self-Management Skills For Employees, Or How To Be A Productive Employee)
訳すと、以下のような意味になります。
「セルフマネジメント能力とは、従業員が日々の業務をこなす際、労働環境に関係なくより生産的であると感じられる能力のことであり、その能力が高ければ、同僚および顧客に対して良きコミュニケーションをとることができるだけでなく、正しい決断をし、時間管理を的確に行い、心身ともに健康でいられるのだ。」
つまり、セルフマネジメント能力とは単なる自己管理力というよりは、自分自身という貴重な資源を最大限に生かして自身が成果を上げることはもちろん、周りに対してもプラスの影響を及ぼし得る能力のことを指すと言えるでしょう。よってこのセルフマネジメント能力の良し悪しは、少なからず自身のこなす仕事の結果を左右するのはもちろん、自分の所属するチームの評価や目標の達成にも大きく関わることとなります。
では、セルフマネジメント能力は具体的にどう身につけていけばいいのでしょうか。日常の中ですぐに実践できる「セルフマネジメント能力の身につけ方」を3つご紹介します。小さなことから始めてみてください。
その1:己の強みを知れ
著書『マネジメント』で有名な経営学者のピーター・ドラッカーによると、正しいセルフマネジメントを行うためには、まずは「自分の強み」や「得意な仕事のやり方」および「自分の価値観」をしっかり把握することが大事なのだとか。己を知ることで得るべきところが分かり、より効率良く仕事ができるということですね。
新しい技術やツールができているにもかかわらず従来のやり方を引き継ぐことに終始してしまうことはありませんか。今までやってきたから、周りも同じ方法で取り組んでいるから……、と固着してしまうのではなく、自分に合った方法を選ぶことが大切です。例えば短期集中型の人は、長期的な目標を立てるのではなく、様々なタスクを短いスパンで小分けにして段階ごとに小さな目標を立てていくほうが向いているでしょう。逆に複数のタスクを同時にこなしていくことが難しい一点集中型の人であれば、目の前の1つのタスクに集中し、終わらせてから次のタスクへと移るほうが賢明です。
自分の強みは何か、どんな仕事が得意で、どんなやり方が自分に向いているのか、スッと答えられますか? ドラッカーによると、これらを理解していないうちは一流の仕事はできないそうですよ。まずは自分のことを知って、自分にピッタリ合った方法を模索していきましょう。
その2:自分に合ったスケジューリングを
前述したとおりセルフマネジメント能力は単なる自己管理能力のことではありませんが、自分を管理できるのが基本中の基本です。今自分が果たすべき職務や達成したい目標があれば、それらを全て明確にしなければなりません。ぼんやりと「最終的にはこうなりたい」というイメージを持っていても、ゴールまでの道順が分からないと向かうことすらできませんよね。
そこで、大きめの付箋を使ってTo-do リストを作り、各タスクの優先順位を書いてよく見える位置に貼っておくのがオススメです。目に見える形で残しておくことで「早くこなさなければいけない」といった焦りが生まれます。必ずしも締め切りの近い物から順にこなしていく必要はありません。自分の適性に合わせて、負担のかかりすぎないスケジュールを立てるようにしましょう。
次に、スケジュールの立て方です。もし既に締め切り日が分かっているものがあれば、そこから逆算していつまでにどの辺りまで終わらせなければならないのか明確にすることはできますよね。ただ、このスケジュールの立て方は人それぞれ異なって当然なので、周りの人と比べる必要はありません。1つのことに多くを求めすぎるのではなく、少しずつできることからこなすと良いでしょう。例え予定通りに進められなかったとしても、決して自分を責めないように。あまりに厳しく律し管理してしまうと、モチベーションが下がってしまう恐れがあるからです。臨機応変に柔軟に対応し、修正を重ねて自分に合ったスケジューリングの方法を知っていきましょう。
Time is money. 自分に与えられた限りある時間を有効に使うために、優先順位を考慮したスケジューリングをぜひ試してみてください。
その3:ココロの休養
プロサッカー選手の長友佑樹選手は日々のトレーニングにヨガを取り入れているそうです。ご自身の著書で次のようにコメントしています。
僕はヨガと出会い、日頃から実践していく中で、ココロとカラダの変化に気づきました。これまで、怪我が多く苦しい時期を過ごしていたのですが、ヨガをやり始めた後から、関節の可動域が広がり、プレーにも柔軟性をもたせることができ、パフォーマンスは上がりましたし、怪我もしなくなりました。さらには、ココロの面でも感覚が研ぎ澄まされ、日々のトレーニングやミーティングでの集中力が高まったと思います。
(引用元:長友佑都著(2016),『長友佑都のヨガ友 ココロとカラダを変える新感覚トレーニング』,飛鳥新社.)
また、精神科医の香山リカさんは、自社メディアの開発、運営などを行っているTrenders主催である女性の働き方をテーマにした講演会・トレンダーズサロンにて、セルフマネジメントについて次のような点が大事だと述べていました。
・疲れきってしまう前に強制的に定期的に休むこと ・過去の成功体験を思い出してセルフリスペクトできる自分になること ・仕事はプロとして役割を演じているだけであるため、人格や過去に絡めないこと
心が弱っている状態では、能力を存分に発揮することはできません。仕事をこなすことも重要ですが、休むことも同じくらい大切にしましょう。イライラしていたり落ち込んでいたりする状況では、初歩的なミスが増えてしまいがち。体と心を適度に休ませてあげることで、感情のコントロールもうまくできるようになり、それが仕事にも活きるのです。
心を休めるということは、単に寝る時間を増やしたり、活動量を減らすことで身体を安静に保つことを指すのではありません。これも人それぞれ異なるため、自分自身で自分の心が休まる方法を探す必要があります。例えば、普段とは違う行動をとる、静かな場所でのんびり読書をする、軽いストレッチをやってみる等でしょうか。探し方のヒントとしては、1日休みをとって何もやるべきことが無い状態をつくった時にやりたいと思ったことをする、というものがあります。
*** セルフマネジメントとは、己の、己による、己のための訓練と言えるでしょう。自身の生活をより良いものにするため、できることから1つずつ始めてみてくださいね。
(参考) My ManagementGuide.com|Self-Management Skills For Employees, Or How To Be A Productive Employee ピーター・F・ドラッカー著,上田淳生訳(2001),『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』,ダイヤモンド社. 長友佑都著(2016),『長友佑都のヨガ友 ココロとカラダを変える新感覚トレーニング』,飛鳥新社. excite. ニュース|心の疲れを取る効果的な方法