仕事には、いつも全力で取り組まないといけない。そのように思って、常に全力投球しようとしている方は多いと思います。
確かに、常に一生懸命に仕事をしているあなたの姿は、見ていてかっこいいものかもしれません。しかし、仕事の効率という観点から考えると、いつも全力でいることは必ずしも正解ではありません。全力を出し続けていて、疲れていませんか? 日々を頑張りすぎて、ここぞというときにパフォーマンスが発揮できなかったことはありませんか?
仕事をするうえで大切なことは、適度に手を抜くことです。今回は、仕事を効率化するための賢い手抜き術を紹介します。
手抜きは悪ではない
皆さんは「手抜き」という言葉に、どのようなイメージを持っていますか。きっとマイナスのイメージを持っている方が多いと思います。仕事は手を抜かず真面目にコツコツやることが美徳だとされがちな世の中ですから。
しかし、人間とは「いかに楽をするか」を追求することで進化してきた生き物。ならば仕事においても同じように考えてよいはずです。質を落とさずに効率よくこなす方法を考えれば、仕事における作業効率は進化させられます。
とはいえ、いつも手を抜いていればよいのではありません。もちろん全力投球すべき仕事もあります。手を抜くべき仕事と本気を出すべき仕事を区別して、それぞれに見合った仕事の仕方をすれば仕事の効率はアップさせられるということなのです。
また、手を抜くことにはほかのメリットもあります。エネルギーの節約につながるため、疲労度を低下できたり、その分ほかの重要な案件に集中力を振り分けることができたりします。
手を抜くことは決して悪いことではなく、むしろ賢い行動だといえるでしょう。
努力とは有限なもの
では、私たちはなぜ手を抜く必要があるのでしょう。
単純に、頑張りすぎて疲れると嫌な気持ちになるから、というメンタル的な理由も考えられます。しかしもっと重要な理由は、人間の体力・脳力の有限性にあります。
人間の体は、疲労がたまるとパフォーマンスが低下します。具体的に言うと、水分が喪失したり、血糖値が低下したり、乳酸が蓄積したりするなど、生体反応として疲れやだるさが出てくるということ。このような肉体の悲鳴を無視して自分の体を酷使し続けると、体調不良や集中力の低下などにダイレクトにつながります。
例えば、頑張りすぎて残業や休日出勤を繰り返した結果、体調を崩して長期療養するといったケースは、まさにこのパターンです。このように、努力できる量には限りがあるため、その限界を超えないように要所要所で手を抜く必要があるのです。
ここで手を抜く・ここは手を抜かないを明確に
さきほど、手を抜くべき仕事と本気を出すべき仕事を区別することが必要だと言いました。それはつまり、仕事の中で、どの部分なら手を抜いてもよいのかを見出すことです。
そのための方法として、医師と経営コンサルタントという二つの立場を持つ裴英洙氏がすすめる3つの原則を紹介します。
1点目は「仕事のボールを持っているときには手を抜かない」ことです。 仕事では、上司・同僚・客など必ず相手がいます。仕事を課されたときや相手と一緒に仕事をするとき、客を相手にしている場合などには、手を抜いてはいけません。仕事相手に対して失礼のないようにすることが大切です。
2点目は「ルーチンワークのときには極力手を抜く」ことです。 ルーチンワークとは、定例的な仕事のこと。たとえば、通勤することやメールチェック・コピー・パソコンの立ち上げなどが挙げられます。頭や体をそこまで意識して動かす必要のない時間のことですね。このようなときは全力で手を抜きましょう。あれこれ難しいことを考える必要はありません。
3点目は「食事中と布団の中では完全に手を抜く」ことです。 食事中と寝る時間は完全に手を抜きましょう。栄養補給と疲労回復の時間ですから。布団に入ってから頭を使って悩んだり考え込んだりする人もいるかもしれませんが、あまりおすすめできません。「布団の中は完全に手抜きの時間だ」と割り切って考える。そして堂々と手を抜いて、ぐっすりと眠るようにしましょう。
*** 自分の仕事の中に、ルーチンワーク化した部分、あまり頑張る必要のない部分がないか、探してみてください。見つかった場合は、その部分で手を抜いてみましょう。手抜きをうまく使って、効率の良いワークライフを。
(参考) 裴英洙著(2012),『10の仕事を1の力でミスなく回す トリアージ仕事術』,ダイヤモンド社. 夏山直道著(2012),『なぜ非常識な人ほど成功するのか』,ぱる出版. NIKKEI STYLE|頑張り過ぎない仕事術(上) 上手な手抜きで自衛