上司に提出する報告資料に、打ち合わせのための資料、営業先に持参する提案資料、研修レポート……。何かと時間がかかるのが書類作成です。
資料作りに計画的に取り掛かれず、完成はいつもギリギリ。締め切りになんとか間に合わせたものの、クオリティはボロボロ、結局締め切り後に突き返されて訂正するはめに……。
こんな「無計画」な姿勢で仕事をしている人はいませんか? これでは、パフォーマンスはもちろん、モチベーションまで下がってしまいます。「どうせ自分には、完成度の高いものは作れない」と。
書類作成のように計画性が求められる仕事において、最重要なのが「準備」。どんな風に整理し、どうやって進めていくのかをしっかり計画しておくことによって、仕事の出来栄えはほとんど決まってしまうのです。
今回は、仕事の計画を立てる上で肝に銘じるべき3つの準備を紹介しましょう。
1. ゴールを明確にする
はじめに、タスクにおけるゴールを明確にしましょう。どのレベルを「完成」とみなすのか、はっきりさせるのです。
今回は例として、こなすべきタスクを「大学に提出するレポートの作成」とします。みなさんも大学生になったつもりで一緒に考えてみましょう。
レポートと一口に言っても、色々な種類があります。何を目的としたレポートなのかによって、ゴール設定は変わってくるはずです。例えば実験レポートなら、データ分析を重視する必要がありそうですね。講義終わりに書くコメントペーパーでは、自分の意見を書かないと評価してもらえないでしょう。
ここでは「期末試験の代わりになる重めのレポートを書く」ことについて、考えていきます。この場合、ゴールはどのように設定すればよいでしょうか。
ここでおさえておきたいルールとして、「MORSの法則」を紹介します。
MORSの法則は「具体性の原則」とも呼ばれ、四つの条件から成り立っている。 ・Measured(計測できる) ・Observable(観察できる) ・Reliable(信頼できる) ・Specific(明確化されている)
(引用元:石田淳著(2007),『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』,ダイヤモンド社.)
これは、実践すべき行動を具体的に表現するためによりどころとなる法則。MORSの法則に沿って考えれば、明確なゴール設定を行うことが可能です。
そこで、「2つの参考文献を引用しながら、最終的には1万字のものを仕上げる」ことをゴールに設定しました。
ここで特に注意してほしいのが、「数値を使って明確なゴール設定をすること」です。「2つの参考文献」「1万字」と数値に基づいて話をしているので、ゴールの達成具合を計測・観察することが可能ですし、達成したかどうかの判断も非常に明確です。また、どこの誰がこのゴール設定を見ても、同じ行動を取れますから、信頼できるゴール設定だと言ってよさそうです。
まずは、タスクに対する明確なゴール設定を行ってください。
2. 現在地を知り、スタート地点を確認する。
次に設定するのは、スタート位置です。自分がどの段階にいて、ゴール達成のためにはどんなことをすればいいのか、整理しましょう。
ゴールと同じで、スタート位置も、タスクによって異なります。自分が専攻する学問のレポートなのか、専門外の分野のレポートなのか。自分のスタート位置が違えば、レポート作成というタスク処理において起こすべき行動も、当然変わってきます。
専攻している学問分野のレポートならば、前提知識がある程度入っていますから、すぐに専門的な知識のインプットをしても問題ないでしょう。しかし、専門外の講義のレポートを書くならば、前提となる基本的な知識やニュースをネットや新書でインプットから始める必要があります。
このようにタスク処理とは、自分の今いる「スタート」から、完了地点となる「ゴール」までのギャップを埋める行動です。これはレポート作成に限らず、どの種類のタスクにも言えることですから、注意してみてください。
今回のレポートは、専門外の講義のためのもので、前提知識のインプットから始めねばならない、という仮定のもと、解説を進めていきます。
3. タスクを細かく分割しよう
デカルトの有名な言葉「困難は分割せよ」の通り、タスクは小さく分割すると効率よく終えることができます。
レポート作成というタスクを、以下の3つのステップに分割します。
1, 課題設定 2, デスクリサーチ 3, 執筆
まだこの段階では、各々のステップのゴールが明確でないため、さらに分解していきます。「1. ゴール設定」の項目で説明したMORSの法則を意識して、分解してください。
1, 課題設定 →関連する新書を一冊読む。 →そこで生じた疑問を最低5つメモにまとめる。
2, デスクリサーチ →1で生じた疑問に対応する専門書を引用する。 →疑問に対する解決案や答えを最低3つずつメモする。 →最終的にどの疑問について執筆するかを決定する。
3, 執筆 →目次を作る。 →目次に沿って仮説・検証をそれぞれ2,000字ずつ書き落とす。 →3回チェックする。
このように、具体的な数値を使いながら、完了/未完了がはっきりわかるレベルにまで分割しましょう。そうすることで、全体にかかる時間や、タスクごとの難易度もはっきりします。
4. 分割したタスクに沿って実行する
ここまでで、レポート作成に必要な準備段階は終了しました。最後は実行のフェーズです。
実行するなんて当たり前なのにわざわざ取り上げる必要があるのか、と疑問に思われる方がいるかもしれませんが、とても大切なことです。
今回紹介したような計画立案や、分解したタスクのリスト化は、しばしばそれ自体が目的化しやすいもの。学生時代に英単語カードや勉強計画表を作成したことのある方ならわかるかもしれませんが、作ったことに満足して終わりになってしまうことが多いのです。
スタートとゴールを明確化し、タスクを分割したはいいものの、結局いつも通り締め切り間際……では意味がありません。
せっかく完璧な計画を立てたのですから、締め切りから逆算して、確実に実行に移してください。 計画実行も計画のうち、と心得ましょう。
(参考) シゴタノ!|タスク分割のコツ 石田淳著(2007),『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』,ダイヤモンド社. POSTD|15分で分かるGTD – 仕事を成し遂げる技術の実用的ガイド