緊張の原因をつきとめてパフォーマンスを向上させる——佐藤委子『ビジネスシーンで役に立つ「伝える技術」』第4回

社内の朝礼やプレゼン、結婚式の友人代表のスピーチなど、社会人になると人前で話さなければならない機会も増えていきますね。そこでやっかいになってくるのが「緊張」。伝えるプロとして人前で話すとき、今でももちろん緊張します。ですが、今の私にとって、緊張は恐い対象ではなく、心地良い対象として存在しています。

そのために必要なのは、緊張をコントロールするということ。緊張をコントロールできるようになると、人前で話すときに硬い表情になってしまったり、早口になってしまったり、言葉を間違えてしまったりといった状況も減り、より良いパフォーマンスにつながります

第4回目の今回は、緊張の原因を探ることからはじめましょう。この緊張の原因を細かく探っていくことでその解決策を見出せますよ。

緊張の原因【1】 準備不足

人前で話す際に、緊張してしまう大きな原因になるのが、この準備に関するものです。いざ人前に出る直前になって、この表現で正しいかな? 資料は確認したかな? 他の人にもチェックしてもらえばよかったかな? と思ってしまうのは、ずばり、準備が足りないということです。まず、準備不足を解消するためのコツをご紹介します。

1. 原稿や資料は納得が行くまで確認 上述したような不安要素は、どんな小さなものでも、自分の番が来るまでに頭の中でぐるぐると反すうすることによって、いつの間にか大きな不安となり、緊張へとつながってしまいます。私の仕事においても、この準備の部分がとても重要になってきます。例えば、ほかの人が作った原稿を伝える際でも、内容を理解することはもちろんですが、こちらが原稿の間違いを指摘するくらいの意識で細部までチェックを行います。

2. 「想定外」をすべてなくす そして、人前で話す際の準備というのは、原稿や資料など、見えるものだけではありません。想定される問題について事前に対応策を考えておく必要があります。頭の中で考えていても見落としが出てくるので、想定される事柄を紙に書き出してみることをおすすめします。

【例】 ・聞き手から○○についての質問があるかもしれない →資料を改めて確認し、想定される質問に対しての簡潔な答えをメモしておく。

・配分時間が短くなった →あらかじめ省略可能な箇所を決めて緑のマーカーで囲む。

・配分時間が長くなった →関連するネタを1つ2つ準備し、ネタを挟むタイミングに★マークなどの目印をつけておく。

・聞き手が飽きてきたor寝ている人が多い →時間に余裕があれば休憩。もしくはブレイクになるような話題を考えておく。または聞き手に質問をしてみる。

このようなリストを元に、不安要素をつぶしていき、想定外の事態をできるだけ起こさないようにしましょう。

3. しっかりと本番をイメージしたリハーサルを行う これまでの準備が整ったら、本番を想定したリハーサルを行いましょう。場所は、実際の会場でできれば一番良いですが、無理な場合は自宅などでもかまいません。ただ、リハーサルを行う際に注意したいのが、だいたいこんな感じかなという中途半端な感覚で終わらせないこと。これではやった意味がありません。

時間、声の大きさ、手や目線の動きも含めて本番を想定して行うことです。これを行うことにより、新たな問題点を見つけることもできますし、うまくできれば自信へとつながります。

準備はしすぎるということはありません。準備を万全にすることが緊張をコントロールするための大切な要素です。そして、コラムの第1回の発声についてと第3回の滑舌についての訓練も、長い目で見れば準備のひとつです。ここでもう一度読み返して実践してみてくださいね。

緊張の原因【2】 場の雰囲気に圧倒されてしまう

講演会など、初めての場所、初めて会う人たちの前で話さなければならないときもありますよね。そんなとき、いくら万全の準備をして、本番をイメージしていたとしても、その場の雰囲気に圧倒されてしまうこともあります。初めての環境で緊張するのは、相手が自分のことを知らない、つまり、周りが敵ばかりと思ってしまうからです。そんなとき、緊張を和らげるちょっとしたコツをお伝えしたいと思います。

ひとりでもいいのです。あなたの味方を作ってしまいましょう。そこにいる担当者、会場で最初に会った人など、誰でもかまいません。笑顔で挨拶を交わすだけで、そこには関係性が生まれます。初めての場所でも自分の味方がいるだけで、そこは自分のフィールドへと変わります。そのためにも、現地に早めに着き、その場にいる人と雑談するくらいの時間と心の余裕を持つようにしましょう。

緊張の原因【3】 本番中に間違えてしまった

ひとまず一度深呼吸して、ゆっくりと言い直します。そして、あなたの最終目標を思い出しましょう。考えた原稿を一字一句完璧に話すことではなく、あなたの想いを伝えることです。起きてしまったことはひとまず忘れて、気持ちを切り替えて最後までやり抜きましょう。大切なことは、あなたの話を全て聞き終わったときに、聞き手に何が伝わったかです。

加えて、聞き手はあなたが思っているほど、人の話を聞いていませんし、細かい間違いを気にしている訳ではありません。人前に出たら、完璧にこなすこと、自分を良く見せようという考えは捨てることがポイントとなります。

*** 人前で話すことは、何も怖いことはありません。緊張をコントロールすることができるようになると、その場を楽しむことができるようになります。また、緊張がないとケアレスミスが多くなるため、適度な緊張は、パフォーマンスの向上につながるとも言われています。対処方法を身につけて、緊張とうまく付き合って行きましょう。

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