緊迫の医療現場に学ぶ「優先順位」の定め方

皆さんは、日々のタスク管理をしっかりできているでしょうか?

毎日たくさんの仕事や課題に追われるなかで、それらをひとつひとつを着実にこなしていくのは意外と難しいものですよね。特に、上司から新しい仕事を振られたり、緊急に取り組まなければいけない案件が舞いこんできたりして、当初の計画にはなかった “想定外” のタスクが降ってきてしまったときはなおのこと。「あれもやらなければ、これもやらなければ」と焦ってミスが誘発されやすくなってしまいますし、そもそもいったい何から手をつければいいのかさえわからなくなってしまうものです。

そこで今回は、複数のタスク(マルチタスク)をこなしていくうえで避けては通れない「優先順位のつけ方」をご紹介します。キーワードはトリアージ。一刻一秒を争う緊迫の医療現場で実際に用いられている手法なのですよ。

タスクに優先順位をつけることの大切さ

ご経験がある方も数多くいらっしゃるかと思いますが、マルチタスクをそつなくこなそうと考えても、さまざまな難しさが障壁となって私たちを錯乱させますよね。

やるべきことをやり忘れてしまう、重要な仕事がわからなくなってしまう、ほかのタスクが気になって目の前のタスクに集中できない……。そしてこのような弊害があるために、一般的に「マルチタスクは効率が悪い」と結論づけられがちなのも事実です。

でも考えてみてください。日々の仕事を進めていくうえで、私たちは複数のタスクに直面する宿命からは逃れられません。「毎日ひとつのタスクしかしなくていい」という人なんておそらくいないでしょうからね。「メールの返信」「取引先への電話」「企画書の作成」「会議の準備」「データの分析」等々、私たちが1日のうちにこなさなければいけないタスクは多岐に渡ります。

だからこそ、「複数のタスクがある状況のなかで、いかに適切にやるべきことを判断し着実にこなしていけるか」、つまり「優先順位のつけ方」が大切になってくるのです。

優先順位を正しくつける手法 「トリアージ」

医療の現場、特に一刻一秒を争う救急医療の現場では、「トリアージ」という優先順位のつけ方のルールが採用されています。これは「まず誰を助け、誰を後回しにするか」といった救命の順序を短時間で判断するために、患者の重症度に基づいて治療の優先度を決めていくという手法です。

具体的には、患者を次の4つに振り分けています。

カテゴリーⅠ:最優先治療群……赤色。一刻も早く処置するべき。 カテゴリーⅡ:待機的治療群……黄色。赤色よりは急ぐ必要はないが、早めに処置すべきもの。 カテゴリーⅢ:保留群……緑色。今すぐの治療は必要でないもの。 カテゴリー0:無呼吸群……黒色。直ちに処置を施しても助からないもの。

このカテゴリー分けを迅速に行い、治療に移ります。実際の医療現場では、色分けしたタグを患者に貼ることでトリアージしているのだそうです。

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「トリアージ」をタスク管理に活用しよう

それでは実際に、「トリアージ」を普段のタスク管理に取り入れていきましょう。実際の医療現場で用いられているトリアージのタグにのっとって、タスクを優先度が高いほうから順に 赤色→黄色→緑色→黒色 と色分けしていきます。

まずは現状の資源で対処できるかどうかから考えます。「予算が足りない」「人員が足りない」「スキルが足りない」など、現状では “資源” が足りないためにすぐに動きだすのが難しそうなものは、カテゴリー0の黒色に振り分けてください。これはいったん放置してしまってよいでしょう。

残りのタスクを赤色、黄色、緑色にどう振り分けていくかは、以下の要素から総合的に判断します。

・残された時間 ・自分の能力・リソース ・チームメンバーの能力 ・これまでの経験

例えば、今あなたが抱えているタスクとして、

  1. 明日取引先に持っていかなければいけない資料の作成
  2. メールのチェック
  3. 「今日の夕方までに提出するように」と急に上司から言われた報告書
  4. 1週間後までに作成しておく企画書
  5. 書類整理

があったとしましょう。

赤色は、優先度が最も高いもの、つまり緊急かつ重要度が高いものを設定します。この場合は、締め切りが目前に迫っており自社の信頼にも大きく関わってくる 1 と、同じく期日が迫っている 3 が該当しますね。

赤色の次に優先度が高い黄色に該当するのが「2. メールのチェック」でしょう。毎日のルーチンワークのひとつであり、たしかに重要ではありますが、緊急性はそこまで高くないからです。また「4. 1週間後までに作成しておく企画書」も、締め切りがそれほど近くないという理由から同じく黄色に振り分けられます。

残りの「5. 書類整理」は、やったほうがよいのですが今すぐである必要はないため、緑色に振り分けます。これは、赤色や黄色のタスクが完了し、時間に余裕ができたときに取り組むものとします。

仮にいきなり赤色や黄色だということが判断しづらいようであれば、“いつでもできる” “誰でも処理できる”といった、簡単で重要度が低いタスクを先に緑色に振り分け、残りを赤色と黄色に振り分けていくという順序でもかまいません。

そしてこの色分けは、「トリアージ」らしく各タスクに実際に色をつけていくことでさらなる効果を発揮します。手帳やノートなどアナログな道具を使ってタスク管理をしている場合は “記入した各タスクの横に該当の色のふせんを貼る” “各タスクを該当の色で囲む” といった方法がありますし、スマートフォンやPCなどデジタル機器上でタスク管理をしている場合でも、“文字色を変える” “背景色を変える” といった方法で代用できるでしょう。重要度に応じて色分けされているのは視覚的にもわかりやすくて効果抜群。どのタスクから取りかかればよいのか迷う心配もなくなるはずです。

このように色分けを施したうえで、優先度に従ってタスクに取り組んでいきましょう。

ちなみに、同じ色に振り分けられた複数のタスクのうち何から着手し始めるかは各人の好みによる部分もありますが、自分にとって難易度が低そうなものを先に選んでしまうのがおすすめです。作業興奮という言葉があるように、手をつけ始めるとやる気がどんどん出てきます。これに乗って作業を進め、その流れで残りもこなしてしまいましょう。また、重要度が高いものが並行してしまってどちらを先に始めればいいのか決められない……、そんなときは、仕事を終えた際の成果のインパクトが大きいものを選ぶのも手です。

*** 医療の現場で使われている「トリアージ」。自分のタスク管理に当てはめて、ぜひ活かしてみてくださいね。

(参考) U-note|マルチタスクで仕事を効率化!同時進行で業務をするときのこなし方 Diamond Online|第1回これは使える!マルチタスクをミスなく大量にさばける、3つの法則 wikipedia|トリアージ

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