忙しい日々のなか、仕事や勉強に高いパフォーマンスを発揮しようと努力している皆さん。「睡眠の時間と質を確保する」「机周りに余計なものを置かない」といったコツを、すでに実践している方も多いかもしれませんね。

しかし、「いろいろ工夫しているはずなのに、なぜかどうしても集中できない」という人はいませんか? 眠いわけではない、デスク周りはすっきり片づけている、温度と湿度の管理も完璧――それでも仕事や勉強に身が入らない。人間ですから、そんなこともあるでしょう。

では、そんなときに集中できない原因は、どこにあるのでしょうか? これから2つの質問を提示しますので、自分が当てはまっているか確認してみてください。

不安・ストレスを抱えていないか?

頭の片隅に、生活に関する不安や仕事・学業におけるストレスがありませんか? 終身雇用制度や年金制度の揺らぎがよく知られている現代ですから、将来に対する漠然とした不安を抱えている人もいることでしょう。家族関係の悩みもあるかもしれません。さらに、職場や学校における人間関係のストレスや、ノルマ・締め切りがもたらす過度のプレッシャーにさらされていては、目の前のことに手がつかなくなるのも無理はないでしょう。

脳科学的に説明すると、不安やストレスが頭の片隅にあるのは、「ワーキングメモリ」の容量が圧迫されている状態です。ワーキングメモリとは、脳科学を専門とする齊藤智教授(京都大学)によると、「課題遂行中にその課題を遂行する目的で一時的に必要となる記憶の機能・それを支えるメカニズムやシステム」のこと。ニンテンドーDS専用ゲームソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』の監修で知られる脳科学者・川島隆太教授(東北大学)の説明では、「情報を一時的に脳内に保ちながら、その情報を操作し利用することを含む、一連の記憶の過程」です。たとえば、初めてかける電話番号を目にし、それを記憶しつつ番号をプッシュしたり、料理のレシピを見て一時的に覚えてから、必要な材料を買い物メモに書き出したり、といったときに、ワーキングメモリが働いています。

ワーキングメモリの容量には制限があり、個人によって容量が異なると考えられています。心理カウンセラーの西橋康介氏によれば、ワーキングメモリの容量がいっぱいだと、「他のことをやろうとしてもできない」「集中しようとしても集中できない」という状態になるそう。これを解決するには、不安をワーキングメモリから追い出すか、ワーキングメモリの容量を拡大する必要があります。

ワーキングメモリから不安を追い出すには、悩んでいることを書き出してみるのが効果的です。米シカゴ大学の研究によると、学生たちに、不安に思っていることを書く時間を10分与えてからテストを受けさせたところ、成績が向上したそう。ワーキングメモリを占めていた不安を外部に書き出したことで、記憶しつづけることをやめられたのですね。

皆さんも、仕事や勉強に集中しづらいとき、ストレスや悩みを抱えているのではないでしょうか? そんな場合には、紙やコンピューター内のメモ帳に、自分の感じているストレスや、どうして悩んでいるかなどを書いてみてください。もやもやしていた気持ちを言語化することで、解決策が見つかるかもしれません。少なくとも、「ワーキングメモリの解放」という点では効果がありますよ。

また、ワーキングメモリの容量を拡大する方法についてですが、一回ですぐに効果が表れるわけではなく、日々の習慣にする必要があります。容量を拡大すると、複数の作業を処理しやすくなるので、この機会にワーキングメモリを鍛えてはいかがでしょうか。詳しくは「脳の『ワーキングメモリ』を鍛える方法。仕事の能力、勉強の効率アップには、ワーキングメモリの強化と解放が効く!」をご覧ください。

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椅子に座りっぱなしではないか?

長時間、同じ姿勢で椅子に座りつづけてはいないでしょうか? 立ちっぱなしも辛いものですが、「座る」という行為は人体に大きな負担をかけています。肉体的ストレスを抱えた状態では、目の前のことに集中するのが難しくなってしまうのです。

立っていたり歩いていたりする状態では、体のバランスを保つため、私たちは脚の筋肉を使っています。しかし、座っている状態だと、脚の筋肉はほとんど動きません。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、下半身の血液を心臓に押し戻すポンプの役割を持っているのですが、座った状態だとポンプの役割が停止し、全身をめぐる血流が滞ってしまいます。

血流が滞ると、どうなるでしょう。立命館大学の総合科学技術研究機構でスポーツ科学などを研究する塚本敏人氏らの実験では、脳血流量が減少した状態で被験者に課題を行わせたところ、パフォーマンスが有意に低下したことから、「急性の脳血流量減少と認知機能の低下との直接的な因果関係」が明らかになりました。

医薬品の開発などを手がけるヤンセンファーマ株式会社によると、認知機能とは「記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力」のこと。つまり、座りつづけていると血行が悪くなり、脳に充分な血液が届かず、私達は思考や判断がうまくできなくなってしまいます。そのために目の前の業務や課題をうまくこなせず、「なんだか集中できないな」と感じるのです。

このような事態を避けるには、どうしたらよいのでしょう? まず、可能であれば、椅子から立って散歩をすることです。周囲をひと回りして戻ってくる頃には、脚の筋肉が動いて脳に血液が循環していることでしょう。

オフィスであれば、自動販売機やトイレに向かってはいかがでしょうか。離席の理由として自然ですし、かかる時間はほんの数分です。少し体を動かすだけでも血流は改善されます。

業務中や授業中で、自由に立ち上がれない場合、机の下でこっそり脚を動かしましょう。StudyHackerのコラム「長時間デスクワークで老化が進む!? 老化を防ぐ、デスクのエクササイズ3選」では、以下のような運動を紹介しています。

椅子に座ったまま足を床から10cmほどあげた状態でキープするというもの。両足もしくは片足ずつでもOKです。ただ足を上げ続けるだけでも腹筋と大腿筋(ももの筋肉)が鍛えられますよ。慣れてきたらオフィスの環境において許される範囲で、座ったまま足踏みをしたり、自転車を漕ぐような動作をしてみるのも良いでしょう。

(引用元:StudyHacker|長時間デスクワークで老化が進む!? 老化を防ぐ、デスクのエクササイズ3選

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私たちが物事に集中できないのには、さまざまな原因があります。その原因をひとつひとつ潰し、仕事も勉強もスムーズにこなしたいものですね。

(参考)
J-STAGE|ワーキングメモリ理論と発達障害
J-STAGE|自発的過換気による急性の脳血流量の減少が認知機能に及ぼす影響
任天堂ホームページ|東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング:ものすごく「脳を鍛える」とは?
北海道大学学術成果コレクション|ワーキングメモリ容量とは何か? : 個人差と認知パフォーマンスへの影響
カウンセリングルームWILL大阪|ワーキングメモリと強迫観念の関連性
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StudyHacker|長時間デスクワークで老化が進む!? 老化を防ぐ、デスクのエクササイズ3選