いつも他人からの評価を気にしては、一喜一憂してばかり。誰もが認める優秀な同僚がうらやましい。それに比べて自分は仕事が遅いし、一番になったこともない。ストレスはたまる一方だ……。そんなにガツガツしていないのに、どうしてあの人は誰よりも優秀なんだろう?
――その秘密は、「優秀な人が大事にしている3つのこと」にあります。さっそく説明しましょう。
1.健全な優越性を追及している
ベストセラーとなった『嫌われる勇気』の共著者で、哲学者の岸見一郎氏によると、優越性には「不健全な優越性」と「健全な優越性」があるそう。これは、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称された、精神科医で心理学者のアルフレッド・アドラーが伝えた言葉です。
「不健全な優越性」とは、“他者より優れていたい”と考えること。この考えに惑わされると、ときには他者を蹴落としてまで“のし上がろう”とします。アドラーは、そうした競争心が、精神的健康をもっとも損ねるといったそう。
一方、「健全な優越性」の場合、他者との競争は無縁です。なぜならば、これは自らの一歩を前に踏み出す意志であり、昨日の自分より、今日の自分をもっと高めようとすることだから。他者ではなく、自分自身と競うわけです。金メダリストのフィギュアスケーター・羽生選手も、「敵は自分自身」とよく口にするそう。
もしもあなたが、いつも他者と比較しては一喜一憂しているなら、それは「不健全な優越性」を追い求めている証拠。いつも結果を出す人に余裕があって楽しそうなのは、「健全な優越性」だけを追求し、他者との競争が無縁の世界で生きているからです。
2.新しい仕事は少しだけ進めて、置いておく
人材活性ビジネスコーチ、アークス&コーチング代表の櫻田毅氏は、米国系企業で資産運用のコンサルタントをしていたときの同僚が教えてくれた、仕事を劇的に速くする仕事術を紹介しています。その同僚は、櫻田氏が知っているなかでも卓抜したパフォーマンスを見せてくれる人物だったそう。方法は、たったこれだけ。
「どんなに忙しくても、新しい仕事が来たら、とりあえず少しだけやっておく」
しかも、そのあとは、いったん“横に置いておく”のだとか。それにより以下のメリットがあるそう。
(1)難易度を把握できる
新しい仕事やタスクの場合、いざ始めてみたら「思っていたよりも大変」ということがあります。ちょっとだけでも進めておけば、難易度がわかり、スケジュールを万全にしておくことが可能です。
(2)内容を正確に理解できる
疑問が生じて依頼主に質問しようとしたときに、必ずしもその相手がすぐつかまるとは限りません。質問できず疑問を解消できなければ、仕事が停滞してしまうでしょう。しかし、仕事を受け取った時点で少しでも手をつけておけば、早い段階でわからないところを質問することができ、本格的な着手の際には内容を正確に理解していることができます。
(3)必要な準備を進められる
いざ仕事を始める段階で「あのデータが必要」「〇〇さんとの打ち合わせが必要」なんてことになったら、大慌てで仕事をしなければなりません。もうダメだ、期限に遅れてしまう……! なんてことも。ちょっとだけでもやっておけば、前もって必要な準備を進めることができるのです。
(4)受信感度が高まる
少しだけ仕事を進めておけば、その内容に対する受信感度が高まるはず。いったん横に置いて、他の仕事を進めている最中でも、関連情報を集めやすくなるでしょう。「そういえば、あの仕事に役立ちそう」と脳が反応してくれるからです。そうすることで脳が情報に馴染んでいくので、本格的な着手がよりスムーズになるはずです。
つまり、優秀な人はいつも、新しい仕事を受け取ったらすぐに「ちょっとだけやっている」わけです。
3.脳の健康に役立つことをしている
【ブレインフードの摂取】
独学で東京大学とハーバード大学院に合格した本山勝寛氏は、脳機能の活性化につながるブレインフード「brain foods」を意識的に摂取しているそう。そのブレインフードとは、以下の3つのこと。
- コーヒー
- 高カカオチョコレート
- 大豆製品
コーヒーは、カフェインが覚醒効果と集中力を高めてくれるから。米ジョンズ・ホプキンス大学の研究では、記憶や空間認知などにかかわる「海馬」の働きを強化し、記憶力を高めるという実験結果がでています。
また、高カカオチョコレートは、カカオポリフェノールが脳の血流量を増やし、記憶や学習などの認知機能を高める可能性があるといいます。イタリアのラクイア大学の研究チームは、カカオ豆に含まれるフラバノール(ポリフェノールの一種)が、ヒトの認知機能を保護し、さまざまな認知機能の低下を抑えうるとの見解を明らかにしているそう。
そして、大豆や、豆腐・納豆・味噌・豆乳といった大豆製品は、大豆レシチンを含むことがポイントです。レシチンは、神経伝達物質のアセチルコリン生成を促し、記憶力や学習機能の向上に寄与するそうです。
【脳に悪影響があることはしない】
また、本山氏は、以下3つの脳に悪影響を及ぼすことについても言及しています。
- お酒の飲みすぎ
- ダラダラスマホ
- ストレスのため込み
イギリス医師会雑誌『British Medical Journal(BMJ)』に掲載された論文では、適量の飲酒でも脳の海馬が萎縮する可能性を高めると発表されています。この研究については、まだ確固たる結論を引き出すことはできないそうですが、過度な飲酒が脳にもたらす悪影響については十分に実証されているとのことです。
ジャーナリストでもある森田豊医師は、スマートフォンなどを長時間使用することによって、快感や意欲を感じる脳内物質「ドーパミン」が過剰分泌されて脳細胞が死滅し、認知機能が低下すると話しています。
そして、本山氏によれば、慢性的なストレスは、前頭前野の樹状突起を萎縮させるため、その機能を低下させる可能性があるとのこと。前頭前野は脳のもっとも高度な機能をコントロールしている中枢。集中力や計画力、洞察力や判断力のほか、ワーキングメモリーにも深くかかわります。そのため同氏は、運動や歌などの趣味を思いっきり楽しんで、ストレス解消を心がけているそうです。
つまり、優秀な人は、常に脳の健康に役立つことをして、悪影響を及ぼす可能性を排除しています。
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優秀な人が大事にしている3つのことを説明しました。
- 健全な優越性を追及している
- 新しい仕事は少しだけ進めて、置いておく
- 脳の健康に役立つことをしている
これらを実行することで、あなたが誰かを“うらやましい”と思うことはなくなるかもしれませんが、誰かにうらやましがられることはあるかもしれませんね。ぜひお試しください!
(参考)
THE21オンライン|「アドラー心理学」入門 ストレス社会をサバイブする!
東洋経済オンライン|仕事を「爆速で終える人」は何をしているのか
東洋経済オンライン|頭の働きを鈍らせるやめにくい「悪習慣」3つ
ダイヤモンド・オンライン| カラダご医見番|カフェインで記憶力がUP 細部を覚えたいならコーヒーを
健康長寿ネット|レシチン・コリンの効果と摂取量
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト|「チョコレートは、あなたの脳力をブーストする」との研究結果
AFPBB News|「節度ある」飲酒も脳に悪い? 流ちょうさに影響も 研究
日刊スポーツ|スマホやりすぎでデジタル認知症/森田豊の健康連載 - 健康
Study Hacker|絶対評価を意識する。羽生選手に学ぶ「敵は自分自身」という考え方。
岸見一郎著,古賀史健著(2013),『嫌われる勇気』,ダイヤモンド社.