面接で失敗したら、「面接」という言葉を見聞きするだけで不安を感じるようになった。プレゼンテーションでうまく喋れなかったので、「プレゼン」と聞くだけでゾッとする……。

そんなとき、嫌な体験を忘れようと “心地よい情景や音” で頭のなかをいっぱいにしようとしても、恐怖や不安はなかなか消えません。新しい研究では、むしろその恐怖体験を、頭のなかで想像したほうが効果的だと示されたのだとか。その内容と、活かし方を紹介します。

「想像力」で恐怖を克服?

米コロラド大学ボルダー校と、マウントサイナイ アイカーン医科大学の研究チームが、新しい脳イメージング研究を行ったところ、恐怖や不安を持つ人々にとって、「想像力」が強力なツールとなり得ることが示唆されたそうです。

コロラド大学ボルダー校の Tor Wager 教授はこう伝えています。

「この研究は、想像力が私たちの健康にとって重要な手段で、脳やカラダに影響を与える神経学的な現実であることを証明している(“This research confirms that imagination is a neurological reality that can impact our brains and bodies in ways that matter for our wellbeing,”)」

(引用元:University of Colorado Boulder| CU Boulder Today|Your brain on imagination: It’s a lot like the real thing, study shows

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新たな脳イメージング研究の具体的な内容

この研究では、まず最初に68名の健康な参加者が、苦痛ではない不快な電気ショックと「音」が関連づくよう訓練されました。その後、

(1)脅威と関連づけられた「音」に再びさらされるグループ
(2)頭の中で脅威と関連づけられた「音」を想像するグループ
(3)心地よい鳥や雨音を想像するグループ

という、3つのグループに分かれたそう。そして、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて脳活動を測定し、肌のセンサーでカラダがどう反応したか測定したとのこと。

すると、「再び音を聞いたグループ(1)」と、頭の中でその「音を想像したグループ(2)」の、脳活動は著しく類似していたのだとか。また、そのあと参加者全員が、再び脅威と関連づけられた「音」を聞いたところ、(1)と(2)のグループは、もはや恐怖反応がなかったそうです。

一方、(1)と(2)のグループとは異なる脳反応を示していた「心地よい鳥や雨の音を想像したグループ(3)」は、脅威と関連づけられた「音」に対する恐怖反応は消えていなかったのだとか。

※この研究は、2018年11月21日に学術誌「Neuron」にてオンライン公開されています。

新たな脳イメージング研究が示したこと

前項で紹介した脳イメージング研究は、「脅威を感じた経験」を、「安全な環境」で再び「想像する行為を繰り返す」ことで、その出来事に対する恐怖心(脳反応)が鎮静化することを示しています。

もちろん、脅威が物理的に繰り返し発生したら、恐怖が刷り込まれてしまいます。重要なポイントは、安全な環境で想像を繰り返す」ことです。また、心地よいことだけを想像しても、恐れや不安を減らすことはできないとも示されたわけです。

研究チームのひとり、コロラド大学ボルダー校・心理学・神経科学科の大学院生 Marianne Cumella Reddan 氏は、「役に立たない、もしくは心を傷つけるような記憶があれば、想像力を使ってそれを変更し、再統合し、考え方や方法を更新することができる」と強調します。

新たな脳イメージング研究の活かし方

もしも、たとえば次のような経験をして――

・面接で失敗した
・ミスをしてしまった
・思いがけず注意された
・理不尽なことを言われた
・プレゼンでうまく喋れなかった

・上手く人とコミュネーションできなかった

――同じような状況になるたびに、もしくは関連したワードを耳にするたびに恐怖や不安がよみがえるようならば、

・自宅や実家など
・くつろげるカフェ
・安心できる人の隣

といった「安全な場所」で、そのときの状況をザックリと思いだしてみてください。記憶をたどるというよりは、再度その場に“いまの自分”がいるような感覚で、繰り返し繰り返し、脚色していきます。つまり、「想像力」を駆使します。

そうして自分が現実的にはいま安全で、コントロールできると感じられるようになれば、いやな経験が再概念化され、自分を脅かす恐怖や不安の刺激の強さを軽減していけると考えられます。

ちなみに筆者の場合、たまたま入院時に出会った人の、他者に対する理不尽な言動を何度も想像しているうち、「言えなかったこと」「言ってほしかったこと」「こんな態度に改めてほしかったこと」などが想像のなかで成され、面白いことにその人物の顔が愛嬌のある“ぬいぐるみ”に変わっていきました。そうしていくうち、嫌悪感を抱いていた相手の心情を、少しだけ考えられるようにまでなったのです。

なお、研究者によれば、より鮮明な想像力を持つ人が、脳の変化を経験する可能性が高いとのこと。ネガティブな気持ちだけではなく、ピアノをうまく弾きたい、上手に歌いたい、いいサッカープレイヤーになりたい、上手にプレゼンテーションしたいなど、自分を高める方法としても活用してみてください。

***
なお、どんなに想像しても一向に恐怖心や不安感が消えていかないようであれば、ぜひ周囲の信頼できる方に相談してみてくださいね。多かれ少なかれ、誰でも「恐怖」や「不安」を抱えているもの。自分を責めず、無理せず、うまく「恐怖」をコントロールしていきましょう。

(参考)
University of Colorado Boulder| CU Boulder Today|Your brain on imagination: It’s a lot like the real thing, study shows
Neuron|Attenuating Neural Threat Expression with Imagination