「社会人になってからというもの、勉強に身が入らない」
「新しいことを学びたいけれど、やる気が湧かない」
「昔に比べて、記憶力や集中力が衰えた気がする」
こう感じている人はいませんか?
普段仕事で疲れているせいか勉強に意欲を注げない、頭が働かない……。社会人になると、勉強を強制されることが少なくなるぶん、独学で勉強を進める能力が試されます。学びを止めず、自分の能力を高めていきませんか。今回は、大人になっても勉強を独学で続けていく4つのコツをご紹介しましょう。
1. 好奇心を大切にする
「グローバル時代だから、英語を話せないとマズい気がする」など、「やったほうがよさそうだから」という理由で学ぶ対象を決めていませんか。気が進まないけれどもなんとなく……という理由だけでは、勉強を継続するのは難しいでしょう。
『東大合格者が実践している 絶対飽きない勉強法』『資格試験に「忙しくても受かる人」と「いつも落ちる人」の勉強法』などの著書をもつ弁護士の鬼頭政人氏は、「楽しめなければ学習は続くはずもない」「学ぶ対象はやりたいことを軸に選ぶべき」と述べています。
たしかに、興味のあることならば進んで知りたくなるもの。好奇心に突き動かされるトピックを選んだほうが、勉強ははかどるのです。
鬼頭氏は、勉強するトピックを決めたら、その分野の情報を濫読し、いろいろな角度から情報をインプットすることをすすめています。学生時代の勉強では、参考書を完璧にこなすことで点数がとれましたが、大人の勉強においては、さまざまな角度から学習することで、その分野の理解が深まっていくのです。
たとえば、ある分野に関する本を図書館でたくさん借りたり、インターネットで情報を探したりするのがよいでしょう。最近は、その分野の専門家がブログや動画で発信しているケースも増えているので、それらも参考になりそうですね。
2. 勉強する環境にこだわる
勉強する分野を決めたら、次に環境を整えましょう。学習しようと思ったのに気がついたら漫画に手を伸ばしていた……なんて経験はありませんか。自宅で勉強する場合は、誘惑が多いもの。散らかった机は集中力を妨げるので、勉強に必要なもの以外はすべて片づけましょう。
特に、誘惑となるような楽しいものは、目に触れないところにしまっておくのがベストです。漫画は本棚に戻すのではなく、クローゼットにしまってしまいましょう。スマートフォンは電源を切って、別の部屋に置いておくのがよいですね。目の前のことに集中できる環境をつくりましょう。
勉強中に集中力が切れてきたら、場所を移動するのがおすすめです。心理学者のロバート・ビョーク氏によると、違う部屋に移動したり、図書館やカフェなど外に出たりして、環境を変えることで、集中力も上がり、記憶を呼び起こす能力も上がるのだとか。たまにはキッチンやダイニングのテーブルで学ぶのもよさそうですね。パソコンや本を持って、カフェや公園に足を運ぶのもよいでしょう。
3. 大人になっても記憶力を低下させない
「勉強したい気持ちはあるけれど、学生時代に比べて頭に定着しづらくなった」と感じている人に朗報です。じつは私たちの記憶力は、鍛えれば何歳からでも強化することが可能。『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル2』の著者で、2019年度記憶力日本選手権大会の優勝者である池田義博氏によると、記憶力を伸ばすには3つのポイントがあるそうです。
1つめは、覚える意思や意欲をもつこと。「どうせ自分は記憶力がない」「年だから覚えられないんだ」という考えをもつことで、記憶力は低下してしまうそう。薬のプラセボ効果と同様に、自分に「効果があるぞ」「できる」と言い聞かせることで、本当に記憶力は上がっていくのだとか。記憶力が衰えない人は、年齢のせいにはせずに、自分に「できる」と言い聞かせているのですね。
2つめは、反復すること。一度覚えたことも、時間が経てば忘れてしまうのは自然なこと。一度ノートに書いたからといって記憶に定着するとは限りません。たとえば、そのノートを1週間後にもう一度読み返し、さらに1週間後にまた読み返せば、しだいに記憶が定着していくでしょう。
3つめは、感受性を豊かにしておくことです。喜怒哀楽といった感情に反応する脳の「扁桃体」という部分は、記憶をつかさどっている脳の「海馬」のすぐ隣にあります。感情が動くことで扁桃体が反応し、隣り合っている海馬も刺激を受け、記憶が強化されるのです。いくつになっても、感動したりワクワクしたりする日々を送ることが大切なのですね。おいしいご飯を味わったり、楽しくおしゃべりしたりして、日常のなかで扁桃体を活性化させる工夫をしてみましょう。
4. 学習スピードが高いのはデジタルよりも紙の本
上で述べたとおり、自分の好奇心をそそる「学びたいもの」を決めたら、その分野について濫読することがおすすめです。そのとき、可能であれば、デジタルよりも紙の本をチョイスしましょう。
たしかに、タブレット端末のほうが軽量で、一度に何冊も持ち歩けるため、便利ではあります。しかしある研究によると、勉強においては紙の資料のほうが優勢のよう。
イギリスのレスター大学で心理学を教えるケイト・ガーランド博士は、生徒らに「本で勉強した場合」と「タブレットで勉強した場合」とで、どちらのほうが効率的か試してもらったそう。すると、同じ内容の資料でも、紙の本に比べてタブレットのほうが頭に入りづらいということが判明したのです。
被験者となった生徒らによると、紙の資料だと一度読めば頭に入る内容でも、デジタルで読むとなかなか記憶できず、何度か読む必要があったのだとか。デジタルのほうが、学習内容を記憶に定着させるのに時間がかかることがわかったのです。
UX(ユーザーエクスペリエンス=ユーザーがサービスを通じて得られる体験)という概念の生みの親として知られるジェイコブ・ニールセン氏も、人間の短期記憶は繊細であるため、本のようにいま読んでいる文章の前後が一目で見えるほうが理解しやすいと述べています。また、紙のページをめくるほうが、デジタルのページをスクロールするよりも脳のエネルギーを使わないことも要因のひとつとのことです。
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社会人になって勉強をやめてしまう人が多いからこそ、頭ひとつ抜きん出るために、学びの継続は重要になってきます。自分の興味のある分野を学び続けて、優秀な人材を目指しましょう!
(参考)
The Best Colleges|17 SCIENTIFICALLY PROVEN WAYS TO STUDY BETTER THIS YEAR
東洋経済オンライン|自粛中に社会人が「学ぶ習慣」を付けるコツ3つ
Wired|Everything You Thought You Knew About Learning Is Wrong
東洋経済オンライン|年を取っても記憶力がいい人と低下する人の差
TIME|Do E-Books Make It Harder to Remember What You Just Read?
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。