「いまひとつ思考が深まらない感覚がある」
「考えているつもりなのに、答えが出ないことが多い」
そのような人は「思考停止」に陥っているのかもしれません。
思考停止とは、物事を考えることや判断することをやめてしまった状態のこと。無意識のうちに起きている可能性が高いものです。
この記事では、思考停止している人の特徴を4つご紹介します。当てはまっていないか確認してみてください。ギクッとしたあなたにおすすめの改善策もご提案します。
【特徴1】悩みの解決方法を自分なりに考えない
「仕事のスランプ。何をどう改善したらよいのだろう……」
「いまの職場に残る? それとも転職するべき……?」
「人間関係がうまくいかない。どうしよう……」
こうした悩み事を毎日頭のなかでぐるぐるとループさせ、答えを出さないでいる状態は、思考が停止しているようなもの。これを打破するためにすべきことは、きわめてシンプル。とにかく「答えを出してみる」のです。
第28代東京大学総長で、現在は三菱総合研究所理事長を務める工学者・小宮山宏氏は、何かを考えるときの大前提は、「課題(問題点)とそれに対する自分なりの答えを、必ずセットにして考える」ことだと述べています。
情報が飽和状態の現代において、自分の頭で考える力をもつことの重要性が高まっている――そう語る小宮山氏は、優秀な若者の多くに、人に言い負かされることを恐れて議論をしないという傾向があると指摘します。
しかし議論とは、勝つためではなく、自分の視野を広げるためや、足りていない知識を補うために行なうもの。課題に対する自分なりの答えを考え出すには、怖がらずに人と話し合うことが大切だと、小宮山氏は説きます。
あなたも、仕事や人間関係について悩んでいることがあったら、人と話し合ってみてください。話をしてアウトプットすれば、自分でも気づいていなかった本心が見えたり、思いもよらない質問や指摘をもらって新しい糸口が見えてきたりするかもしれません。
人生には悩みがつき物とはいえ、悩んでいるだけではあまり健康的とは言えないでしょう。「誰かに話す」ことと「自分なりに答えを出してみる」こと。このふたつを意識して思考停止状態を脱し、解決(もしくは前進)するための第一歩としてとるべき行動を決め、実行に移すことが大切です。
【特徴2】方向性を決めず、自動思考に身を任せている
「新しくできた店に仕事帰りに寄ろうと思っていたのに、無意識に帰宅していた」
「いつも無意識のうちに、まったく同じプロセスで業務を進めている」
このように無意識に行動してばかりいませんか?
営業職向けのトレーニングを手がける企業FPGの最高経営責任者ジェーソン・フォレスト氏によると、無意識に行動しているとき、脳は「オート・パイロット」という自動思考に切り替わっているそう。歯磨きや通勤などはその代表例ですね。
オート・パイロットは、脳のエネルギーを節約するための機能です。しかし、自分で考えて方向性を決めることをしないまま、自動思考に身を任せてばかりいるのはもったいないこと。大切な機会を逃し、目標に向かって成長するスピードを下げてしまうかもしれないからです。
フォレスト氏いわく、正しい方法でオート・パイロットを取り入れることで、意義のある毎日を過ごせるとのこと。オート・パイロット状態を有効に使うための4ステップがこちらです。
- 日々のタスクを機械的にこなす前に、全体像を定めることが大切。「営業成績を伸ばしたい」「3ヶ月後の資格試験に受かりたい」など、自分にとって最も優先度が高いことは何かを確認しましょう。
- すべての行動に「なぜやるのか」を問いかけ、自分にとって優先度の高い事柄を達成するうえで重要な行動なのか否かを判断します。
- 「問いかけ」を日々続けるうちに、それ自体が自分にとっての自然な行動となり、自動思考でできるようになります。優先度の高い事柄につながらない行動を軌道修正しやすくなるのです。
- 何かをやるときは、毎回「これは目標とどう関係するだろうか」と考える癖をつけましょう。
このように、「方向性の正しい行動」を自分で判断して選ぶということが、オート・パイロットでできるようになれば、思考停止を抜け出せるばかりか、人生を好転させることもできるでしょう。
【特徴3】不安を感じているけれど行動しない
不安が強くて行動に移せない人も、思考停止状態になっている可能性大。「何かと不安を感じやすいほうだ」という人は、気をつけたほうがいいかもしれません。
精神科医の樺沢紫苑氏によると、不安を感じるのは「ノルアドレナリン」という脳内物質が分泌されるからだそう。ノルアドレナリンが分泌されると、私たちの体は「攻撃態勢」に入ります。たとえば、野生の動物に襲われそうになったときに「逃げるか、戦うか」と判断を迫られているような状態――それが「不安」なのだと言います。
樺沢氏いわく、脳からノルアドレナリンが出て、判断を迫られている状況であるにもかかわらず、「どうしよう、どうしよう」と思考停止状態でじっとしていると、不安はどんどん増幅するとのこと。
逆を言えば、不安に一番よい対処法は「行動する」こと。樺沢氏のおすすめは、以下3つのアウトプットを行なうことです。
- 話す
誰かに話を聞いてもらえば、ストレス解消になるほか、話をしているうちに問題が解決する場合もあります。 - 書く
頭のなかにあることを日記などに書くと、ストレスが軽減するそう。さらに悩みの内容が可視化され、客観的に整理するのにも役立ちます。 - 体を動かす
100メートル全力で走るだけで、不安が軽くなるとのこと。運動するとノルアドレナリンの分泌が正常に戻り、リラックスできるそうです。
「不安だ、不安だ」と思考停止したままでいるより、行動を起こすほうが、ストレスが軽減して生きやすくなるでしょう。結果的に、悩みや不安の原因が解消する可能性も考えられますよ。
【特徴4】人間関係がうまくいかなくても放置してしまう
「職場の人間関係がイマイチ。でもどうしたらいいかわからない」
「あの人との関係にモヤモヤ。でもなんの対処もできずにいる」
人間関係の悩みにただ耐えて、ストレスをためている人はいませんか? 「我慢するしかない」と思うかもしれませんが、それもじつは思考停止の危険なサインです。
臨床心理士の向後善之氏によると、人間関係がうまくいかないと感じる場合は、そのことについてじっくり考える時間を設けるほうがいいとのこと。関係が悪くなっている理由を突き止め、改善法を見いだすことが大切だと言います。
向後氏は、以下の3ステップで状況はよくなるとアドバイスしています。
- 自分自身の思考の癖を知る
対人ストレスに直面したとき、自分がどういうリアクションをするタイプかを把握することが大切。向後氏が挙げる以下12項目のうち、あなたはどれに近いでしょうか。
- 先行きを悲観する(やっぱり私はこういう運命なんだ)
- 自己否定する(私は最低な人間だ)
- 自責の念にかられる(私が全部悪いんだ)
- あきらめる(何をやっても無駄だ)
- 強くあきらめる(どうせ私は何をやってもダメだ)
- 完璧主義になる(何とかしなければならないのに…)
- 思い込みが強くなる(みんな私を嫌っているんだ)
- 否定的結論を先取りする(私に改善できるわけがない)
- 恐怖を先取りする(絶対に悪いことが起こるに違いない)
- 思考停止する(どうしよう、どうしよう…)
- 被害者的思考に陥る(何で私ばっかりが)
- 後悔する(何てことをしてしまったんだ)
(引用元:Sankei Biz|対人ストレスの対処法が変わる 「自動思考の癖」を自己認識)
- ネガティブな出来事に対する自分の感情を受け止める
感情を否定せずにありのまま見つめることで冷静になれて、次のステップの「原因を突き止めて行動に移す」ことができるようになります。 - 対人ストレスの原因を探り、改善行動をとる
嫌いな人を無理やり好きになろうとする必要はありません。ただ出来事をありのまま見つめ、ストレスの原因を落ち着いて考えるのです。信頼できる人に相談して、自分自身にも変えたほうがいい点があるのか、どう対処したらよさそうか、率直な意見をもらうのもいいそう。
もちろん、これだけですぐに人間関係の悩みが解決するわけではないでしょう。ですが、思考停止して我慢するよりもずっといいはず。自分にとれる第一歩を踏み出してみることで、今後の人間関係のヒントにもなるかもしれません。
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思考停止している人の特徴を4つご紹介しました。心当たりのある方は、日々、意識的に思考停止を防ぐ対策をしていきましょう。
(参考)
PRESIDENT Online|東大式「モヤモヤ感、思考停止」の悩み解決【1】
PRESIDENT Online|東大式「モヤモヤ感、思考停止」の悩み解決【6】
PRESIDENT Online|茂木健一郎「バカな脳がピンとくる脳に変わる」科学【3】
Entrepreneur|Is Your Brain on Autopilot? Here's How to Re-Engage and Think Big
ダイヤモンド・オンライン|精神科医が教える「不安がすーっと消える対処法」
Sankei Biz|対人ストレスの対処法が変わる 「自動思考の癖」を自己認識
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。