仕事が終わってから寝るまでの時間をどのように過ごしていますか?
ただでさえ1日の疲れがたまってくる夜。なんとなく過ごして、気がついたら寝る時間……そんな過ごし方をしていては、いつまでも二流どまりかもしれません。
翌日フルパワーで一流の仕事ぶりを発揮するためには、夜によい習慣をもつことが重要です。今回は、一流のビジネスパーソンになりたい人におすすめの夜習慣を3つご紹介します。
1.「即レス」しても評価は上がらない。仕事力が高いのは “夜を自分のために過ごす人”
リモートワークが普及したいま、働いている時間とそうでない時間が曖昧になった人は多いのではないでしょうか。
仕事が終わっても、メールをチェックしたり、上司からチャットで連絡があれば即応答したり……。デキるビジネスパーソンだからこその行動であるように思えるかもしれませんが、そんな夜の過ごし方はあまりおすすめできません。
コンサルティング会社Opty.G.K. 代表の久能克也氏は、「即レスしない時間が宝の山」だと言います。いつでもメールやチャットに応答できる状態でいると、思考が断片的になってしまい、まとまった時間を確保して深く考える仕事ができなくなってしまうのとのこと。
たしかに、返信が速い人は、上司や取引先から評判がいいかもしれません。しかし、それはあくまで「返信の速い人」というだけの評価。本当に評価される人になるには、即レスをすることよりも、企画を練ったり、提案の内容を深く検討したり、発想につながる経験をすることのほうが大切だ――そう久能氏は断言しています。
そこで久能氏が提案するのは、メールやチャットから離れて、深い思考に静かに集中するための時間を確保すること。
就業時間中であれば、「この時間はメールを返信する時間」「この時間はメールは確認しない」などと決めて、スケジュールに組み込むのがいいですね。そして就業時間が終わったら、「翌日まで緊急のこと以外は連絡に応答しない」と決め、夜の時間は自分のために使ってはどうでしょうか。
そうして確保した時間は、静かに思考をめぐらすもよし、リラックスやセルフケア(以下でご紹介します)にあててもよし。翌日フルパワーで働くために備える時間を大切にしましょう。
2.「無理ばかり」してもストレスがたまるだけ。リラックスを大事にしてメンタル強化を
「仕事は修行だ」「大変でも我慢するのが普通」などと考え、無理に無理を重ねることは、決して一流のやることとは言えません。
短期的には結果が出たとしても、そんな働き方を続けていては、長い仕事人生を乗りきることはできないでしょう。休息を十分にとらなかったり、ストレスをため続けたりすると、メンタルが弱る・体調を崩すなど、いいことはないのです。
微生物学や栄養学などに関する研究を手がけるヤクルト中央研究所によると、ストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」は、上昇すると身体のさまざまな機能に影響を及ぼすことがわかっているそう。不眠症やうつ病などのメンタル不全や、生活習慣病などのストレス関連疾患につながる可能性があるのだとか。
そこで、毎日の夜習慣にストレスを軽減させる行動を取り入れ、メンタルを強くしていきましょう。有効なのが「ヨガ」と「読書」。
ヨガを行なうと、ストレスの軽減と睡眠の質アップが期待できます。シドニー大学の研究によれば、強いストレスを抱えている人が「ハタヨガ(ヨガの流派のひとつ)」のクラスを受けたところ、「コルチゾール」のレベルが下がり、入眠がスムーズになったそう。最近ではオンラインのヨガレッスンも豊富にあるので、気軽に受けることができるのではないでしょうか。
ヨガとあわせて行ないたいのが読書です。イギリスのサセックス大学の研究によると、読書をする人は、しない人に比べて、ストレスが68%も低下するという結果が出ているそう。ただし速読ではなく、ゆっくり読むほうが、ストレス軽減効果は高まるのだとか。最低30分で、それより長く読んでもOKとのこと。
ジャンルはフィクションがおすすめです。リンカーン大学の研究で、フィクション小説に陶酔すると共感力が上がるという結果が出ています。共感力を高めれば、ストレスの原因となりやすい対人関係をよりよくするのにも役立つでしょう。
3.「寝る直前のスマートフォン」は脳への脅威。枕元に置くべきは紙とペン
寝る直前までスマートフォンを見ていませんか? 近年、多くの研究から、スマートフォンがメンタルヘルスや睡眠に悪影響を及ぼすことがわかってきています。
精神科医で作家のアンデシュ・ハンセン氏によると、長時間のスマートフォン使用がストレスと不安を引き起こすそう。そして何よりも影響を受けるのは、睡眠だと言います。
ハンセン氏いわく、ベッドに入る前にスマートフォンを利用すると、私たちの脳では「HPA系」という緊急性の高い脅威に遭遇したことを知らせるシステムが作動してしまうそう。
現代の私たちには、命に関わるような脅威はないものの、SNSの「いいね」があまりつかない、仕事のメールが気になる、などのストレスを感じることで、脳内では同じシステムが作動するそう。すると、コルチゾールが分泌されストレスが増加。脳は「危険なことがあるかもしれない」と察知することで、よく眠れなくなるそうです。
スマートフォンは、寝室とは別の場所に置いて、代わりに紙とペンをベッドサイドに置いてみましょう。そしてぜひ実践していただきたいのが、「寝る前に翌日のToDoリストを書くこと」。
Journal of Experimental Psychologyに掲載されたベイラー大学の研究によると、眠る前に「翌日やらなければならないこと」を書き出すことで、入眠のスピードが上がるそう。
研究に携わったマイケル・スカリン氏によると「不安について書き出すことで、眠りにつきやすくなる」ということはこれまでの心理学研究で明らかになっていたそうですが、さらに「具体的なToDoリストを書くことで、不安が軽減されて寝つきがよくなる」ことがわかったようです。
筆者がある日作成したリストを以下にご紹介します。
書くときのポイントは、できるだけ具体的であること。たとえば「資料をつくる」という仕事なら「リサーチをする」「下書きを終わらせる」「表紙をつくる」など細かくかみ砕いて書くのです。
日々、仕事が忙しかったり心配事があったりすると、考えることが多すぎてイライラしがち。それらをToDoリストとして書き出し、モヤモヤを手放してしまえば、感情を好転させることができるでしょう。
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一流を目指すなら、長い目で見て何が自分にとってプラスになるのか考えるのが大切です。スピードが求められる世の中ですが、それに振り回されていてはすぐに燃え尽きてしまうでしょう。
「深い思考をするために即レスしない」「メンタルを強化する」「翌日フルパワーで働くためにしっかり眠る」などよい習慣を取り入れることで、長期的に活躍できるビジネスパーソンを目指してください。
(参考)
The Owner|「即レス」を今すぐやめたほうがいい理由
INSIDER|4 benefits of Hatha yoga and how it can improve your physical and mental health
ScienceDirect|A single session of hatha yoga improves stress reactivity and recovery after an acute psychological stress task—A counterbalanced, randomized-crossover trial in healthy individuals
DaiGo(2018),『ストレスを操るメンタル強化術』,KADOKAWA.
ヤクルト中央研究所|コルチゾール
PLOS ONE|How Does Fiction Reading Influence Empathy? An Experimental Investigation on the Role of Emotional Transportation
HEALTH PRESS|明日の「やることメモ」を書くとぐっすり眠れる~寝る前のTo-Doリストが不安を減らす
American Psychological Association|The effects of bedtime writing on difficulty falling asleep: A polysomnographic study comparing to-do lists and completed activity lists
Forbes|Writing A To-Do List May Help You Fall Asleep Faster
Baylor University|Can Writing Your ‘To-Do’s’ Help You to Doze? Baylor Study Suggests Jotting Down Tasks Can Speed the Trip to Dreamland
アンデシュ・ハンセン(2020),『スマホ脳』,新潮新書.
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。