本当に勉強がデキる人は “スランプ” をこうやって克服している。

ダブル・ループ学習でスランプ克服1

「目標や計画をしっかり立ててから勉強するのに、なかなか結果が出ない」
「これまでいろいろな勉強法を試してきたけど、どうも自分には合わない」
このような悩みをもつ人におすすめしたいのが「ダブル・ループ学習」です。勉強効率を上げたい方はぜひ参考にしてください。

そもそもの前提を見直す「ダブル・ループ学習」

ダブル・ループ学習」とは、既存の方法論や前提を疑い、その軌道修正を行なうことで学習効率を上げるという問題解決型の学習プロセスです。アメリカの組織心理学者であるクリス・アージリス氏とドナルド・ショーン氏による1978年の共同著書『組織学習』(原題 : "Organizational Learning" )で提唱されました。

対になる概念は「シングル・ループ学習」。これは、もともと身につけている思考の枠組みのなかで物事を行なうことを指します。株式会社マネジメントソリューションズでエグゼクティブ・ディレクターを務める有馬亮二氏によると、シングル・ループ学習は「想定した目標をどうすれば達成できるのかを検討する」考え方なのだそう。

たとえば、自分がイベントを主催することになった際、100人の参加者を目標にSNSや知人を通じた宣伝活動を行なった結果、参加予定者の数が20人、30人、50人と増えていったとしましょう。このように、「行動→結果→行動→結果」と順にプロセスを踏むシングル・ループ学習は、「PDCAサイクル」にも似た構造をもっています

しかしあるとき、行動を起こしているにもかかわらず、50人を境にして人数がいっこうに増えなくなってしまいました。このシングル・ループ学習によって行き詰まってしまった問題を解決するにあたり、ダブル・ループ学習がその効果を発揮します。

先述のとおり、ダブル・ループ学習は「想定した目標・方法自体が間違っているのではないかと前提を疑う姿勢」です。集客の例に当てはめると、

  • そもそも、100人も集められるほどイベントに魅力はあったのか?
  • 宣伝用のチラシは集客に効果があると本当に言えるのか?
  • 集客に利用しているSNSの使用人口は、はたして十分多かったのだろうか?
  • 同じ知人ばかりに声をかけてしまってはいなかったか?

など、シングル・ループ学習をしているときにはあまり目を向けていなかった前提部分に着目します。そうすれば、より効果的な宣伝活動を行なえる可能性が高まるでしょう。たとえば、チラシのデザインを見やすくしたり、使用人口が多いSNS媒体だけに絞って広告を流してみたり、あるいは知人に新規の人を紹介してもらったりと、改善できる点がきっと多く見つかるはず。

シングル・ループ学習によって既存の枠組みのなかでの学習・行動を繰り返しつつ、ダブル・ループ学習によってその前提を随時見直し新たな視点を増やしていくことで、既存の枠組みを強化しながらアウトプットしていくことが可能になるのです。

ダブル・ループ学習でスランプ克服2

勉強に「ダブル・ループ学習」を応用する

これは勉強にも応用できます。「ロシア文学史」を例に説明しましょう。

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上の図は通常の勉強(シングル・ループ学習時)です。よくある、作品名と作者をただ機械的に結びつける一問一答形式の覚え方ですね。しかし、この単調な方法だと、だんだん退屈になってきたり、そもそも覚えづらかったりするのが事実。そこで、覚え方を変えてみます。

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ダブル・ループ学習においては、シングル・ループ学習で行なった、作品名と作者の結びつきだけを覚えていく方法を見直しました。ここでは、作品の特徴や社会背景といった補足事項を青色で示し、時代区分による政治イデオロギーの変化も一緒に確認できるように改善しています。

単なる一問一答形式の暗記から、時代背景も交えた覚え方に変更したため、たとえば記述式の問題にも対応しやすくなるでしょう。そもそもの覚え方を疑うというダブル・ループ学習のプロセスを通じて、ロシア文学史の流れを、ひとつのストーリーとして記憶できるようになったのです。

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「ダブル・ループ学習」で勉強方法をちゃんと改善できた!

ひとつのシングル・ループ学習に限界を感じたら、ダブル・ループ学習のように、シングル・ループ学習時の前提を疑いつつ勉強方法をアップデートさせていくことで、思い出すスピードや精度は格段に上がります。さまざまな勉強法をむやみやたらと試すのではなく、これまでの方法をどのように改善すればうまくアウトプットできるようになるかを積極的に考えましょう。

たとえば、「学習環境」「タイムマネジメント」「効率的な記憶」といった観点から、いまの勉強法を見直してみてください。「一生懸命勉強する→もっと一生懸命勉強する」ではなく、「一生懸命勉強しても結果が出ない→3時間ずっと机に向かっているため、集中力が低下し効率が落ちている→30分ごとに時間を区切って休憩を挟む」といったように、具体的な改善策を実践できるようになりますよ。努力がきっと無駄にならないはずです。

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いつもうまくいかないと感じている人は、前提を疑うダブル・ループ学習を、自分の勉強に役立ててみてください。みなさんの成績は向上するに違いありません。

(参考)
コトバンク|シングルループ学習・ダブルループ学習
日経BizGate|失敗を繰り返す組織とどのように向き合うべきか
藤沼貴, 井桁貞義, 水野忠雄(2003), 『はじめて学ぶロシア文学史』, ミネルヴァ書房.

【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。

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