「世界で活躍できるエンジニアになりたい。英語力はどれだけ必要だろう?」
「エンジニアが英語を学ぶメリットは何?」
「エンジニアに必要な英語力は、どうやって身につければいいの?」
そんな疑問をもっていませんか。IT社会を支えるエンジニアは、これからも世界中で求められ続けます。エンジニアが活躍できる場はグローバルに広がっているのです。その前提となるのが、英語力。
本記事では、エンジニアに英語力が必要な理由、エンジニアが英語力を身につけるメリット、そしてエンジニアが効率よく英語を勉強する方法などをご紹介しましょう。
【監修者プロフィール】
田畑翔子(たばた・しょうこ)
米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部部長。
堀登起子(ほり・ときこ)
大学で言語学を学び、卒業後は英語講師やPR企業の海外担当として活躍。通訳・翻訳として10年以上のキャリアをもつ。大学院では国際言語教育について学びつつ、多読スクールを運営。脳科学とComplex Theoryの視点から第二言語習得をとらえることがライフワーク。大学の助教として英語を指導したこともある。TESOL修士取得。株式会社スタディーハッカーコンテンツ戦略企画部。
- エンジニアに英語が必要なのはなぜ?
- エンジニアが英語力を身につけるメリット
- エンジニアに役立つ英語の勉強法
- エンジニアが英語を学習するうえで意識すべき点
- 英語力を活かせるエンジニア職の例
- エンジニアがもっと効率よく英語力を伸ばすために
エンジニアに英語が必要なのはなぜ?
まずは、エンジニアに英語力が必要とされる理由を見ていきましょう。主な理由は、次の3つです。
- 取引先が海外企業の場合もあるため
- 幅広い情報収集に必要であるため
- エラーメッセージにすばやく対処するため
順番に詳しくご説明しましょう。
1. 取引先が海外企業の場合もあるため
IT業界では、エンジニアの取引先が海外企業や外資系企業であることは決して珍しくありません。
製薬会社向けのデータ解析やシステム開発などに携わる株式会社pipon代表取締役社長の北爪聖也氏は、システム開発には日本以外にいるエンジニアとのコミュニケーションが必須、と自身のエンジニア経験から述べています。英語で直接コミュニケーションをとれるエンジニアは、特に重宝されるのだそう。
海外企業と円滑なコミュニケーションを行なうためには、ビジネス英語のスキルは必須なのです。
2. 幅広い情報収集に必要であるため
IT業界では、GoogleやAppleなど英語圏の企業が、世界規模で大きな影響力をもっています。こうした高い影響力をもつ企業から情報収集するためには、英語が欠かせません。英語圏のニュースや、他国のエンジニアから技術情報を得る際にも、英語が必要です。
また、外資系企業などでは、社内の公用語が英語の場合もあります。マニュアルやディスカッション、セミナーの言語は、原則すべて英語。必要な情報にスムーズにアクセスするには、日本語訳に頼らず、英語で情報収集できる力がなくてはならないのです。
3. エラーメッセージにすばやく対処するため
コンピュータープログラムなどの欠陥に対処する業務を担うエンジニアの場合、英語で書かれていることが一般的なエラーメッセージを迅速に正確に読み取る力が必須。そもそもエラーの内容が分からなければ、エラーをスムーズに解決できるはずがありません。
エラーメッセージの内容や原因をすぐに理解できる英語力が、エンジニア業務では前提となっているのです。
エンジニアが英語力を身につけるメリット
現役のエンジニア、あるいは今後エンジニアのキャリアを検討している方が英語力を身につけると、さまざまなメリットがあります。主にどのようなメリットがあるでしょうか。
1. 単価の高い海外の案件を得やすい
エンジニアの業務は、国内より海外のほうが単価の高い案件が多いと言われています。海外の案件を扱う場合、資料の読み込みやクライアントとのミーティングをはじめ、さまざまなことを英語で行なう必要があるため、英語力を身につけておいたほうが、活躍の幅が大きく広がるでしょう。
2. 仕事が円滑になる
英語力を身につけておくことで、マニュアルや会議資料、メールの読み取りだけでなく、会議やプレゼンなどで、相手の言っていることの聞き取りがよりスムーズになります。
また、会議でのディスカッションやチャットの返信がスムーズになると、業務がはかどり、信頼関係が築きやすくなるのもメリットです。辞書で意味を調べたり、英語の得意な人に尋ねたりする時間を短縮でき、その時間を自分の業務に費やすことができますよ。
加えて、自分の伝えたいニュアンスで相手に確実に伝えられるようにもなります。コミュニケーションには自動翻訳を使えば十分だ、という方もいるかもしれません。しかし、自動翻訳そのものが間違っていることもあるもの。自分の伝えたい内容が正確に翻訳されず、相手へ誤解を生じさせたり、業務上のミスにつながったりする可能性も考えられます。自分の言いたいことを、英語で自ら相手に伝えられるスキルを身につけておくほうが、そのようなトラブルに巻き込まれずにすみますね。
3. キャリアアップが狙える
英語を身につけておくことで、キャリアアップを狙えることがあります。
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が実施した「英語活用実態調査2019」によると、エンジニアの業種にあたる「情報通信・通信サービス」の500~999人規模の企業における、TOEIC®︎の昇進・昇格スコアの目安は、係長・主任級が500点、課長級が600点、部長・役員級が720点だそうです。
高い英語力を身につければ、エンジニアとして海外で勤務できたり派遣されたりできる可能性もあるでしょう。
加えて、海外転職のチャンスも広がります。エンジニアとして海外へ転職すると、より高収入を得られる可能性や、世界中の優秀な人材とともに働くことでスキルを磨けるメリットがあります。詳しくはこちらの記事もぜひ読んでみてください。
>>サクフリブログ|ITエンジニアが海外転職・就職する方法【最適な英語学習法も紹介】
以上のように、英語を身につけると、ほかのエンジニアに大きく差をつけることが可能となるのです。
エンジニアに役立つ英語の勉強法
ここからは、現役のエンジニアやエンジニアを志す方々が効率よく英語を身につけるための勉強法をご紹介しましょう。単語、文法、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングに分けて見ていきます。
単語
単語は次のように学習を進めると、覚えやすくなります。
- 1セット50語を目安に、新しい範囲の単語を覚える
- 単語の音声を聞いて、50語の発音と意味を確認する。音声に続いて発音しながら、英単語と日本語訳を目で見て覚える。
- 日本語の意味を見ないで、英単語を見て発音しながら、意味をすぐ想起できるか確かめる。その後日本語訳を見て、想起した訳が合っているか答え合わせをする。
- セット内の全単語の意味が瞬時に思い浮かぶようになるまで、3.を繰り返す。覚えているか覚えていないかは問わない。5周ほど行なうと効果的。
- 翌日、前日に学習した単語の復習と、新たな単語の学習を行なう。既習単語は3.の手順で手短に確認し、未習単語は1.〜3.の手順で学ぶ。
セット数を50語と多めに設定しているのは、遅延効果を生み出すため。遅延効果とは、ある情報に出会ってから、その情報に再度出会うまでの期間を長くすることで、覚えておける期間を伸ばしやすくするという効果です。
もし10個ほどの少ない語数にかなりの時間をかけて覚えると、学習したあと、まだその単語の記憶が鮮明に残っている状態で、同じ単語を再び学習することになります。そうすると、遅延効果が働かなくなり非効率的。記憶は思い出そうとするときに強化されます。「忘れそう......」というタイミングで同じ情報に出会うことで、「思い出そう」とする力が働き、より記憶が残りやすくなるのです。
日が明けたら、前日に覚えた内容を復習し、その後も少しずつ間隔を空けて復習を重ねるようにしましょう。
さらに重要なのは、発音しながら意味を確認すること。正しい発音を理解していなければ、リスニングで正しく聞き取ることが困難になります。
スピーキングでも、ご自身が意図していることと異なったかたちで相手に理解される恐れが。単語帳などに付属している音声を聞いて、正確な発音の仕方を理解してから、声に出すことを意識するのがポイントです。
また、エンジニアの業務でよく使われる単語を覚えることも重要。以下にその単語と例文を紹介しますので、使えるようにしておきましょう。
【エンジニア業界で頻出の主な英単語と例文】
- debug(デバッグ):
プログラム内の欠陥(バグ)を特定し、除去すること
<例文>
We spent the whole day debugging the server issue.
「サーバーの問題をデバッグするのに一日中かかりました」
Let's debug this issue.
「この問題をデバッグしましょう」 - refactor(リファクタリング):
プログラムの動作を変更せずに、内部設計や構造を見直し、コードを書き換えたり書き直したりすること
<例文>
Refactoring the code will make it easier to maintain.
「コードをリファクタリングすると、メンテナンスが容易になります」
We need to refactor this part.
「この部分はリファクタリングする必要があります」 - optimize(最適化):
対象の実質は維持しつつ設定や内部の構造などを調整し、より好ましい状態に組み替えること
<例文>
We need to optimize the algorithm to reduce computation time.
「計算時間を減らすために、アルゴリズムを最適化する必要があります」
This feature needs to be optimized.
「この機能は最適化する必要があります」 - scalability(スケーラビリティ):
機器やソフトウェア、システムなどが性能や機能を拡張できる可能性や度合いのこと。拡張性、拡張可能性。
<例文>
Scalability is crucial for our application to support more users.
「より多くのユーザーをサポートするために、私たちのアプリケーションのスケーラビリティは重要です」
Let's scale up the system to handle more traffic.
「もっと多くのトラフィックを処理できるように、システムをスケールアップしましょう」
など
こうした単語を駆使して、技術的なコミュニケーションをより円滑に行ないましょう。
文法
もう学生でもないのに英文法を学んで、なんの意味があるのかと疑問に思う方もいるでしょう。しかし、ビジネスの世界ではメールやビジネスチャットなど、英文の正確さが求められる場面が豊富にあります。エンジニアの仕事も例外ではありません。
その正確さの土台となるのが文法力。あまりに文法的に不正確な英文で表現すると、ビジネスで信頼を得ることは厳しくなるでしょう。少なくとも中学、高校で学習する英文法の知識は身につけておきたいところです。
とはいえ、学校で丸暗記で英文法を勉強してきた方にとっては、英文法は難しいイメージがあるかもしれません。そんな方は、これから説明する認知文法とパターンプラクティスに取り組むと、効率よく英文法を習得できますよ!
1. 認知文法
認知文法とは、「ネイティブがどのように世界を認知し、それを言語に反映させているか」というアプローチで文法を説明しようとする文法理論のこと。
ネイティブスピーカーがもっている文法感覚をイメージとしてとらえていけば、丸暗記や、日本語の訳に頼らずとも、本質的に英文法の意味や使い方を把握することができます。
進行形で使うing形を例にご説明しましょう。 ing形は「〜している」だから、「The leaves are falling.」は「葉っぱが落ちている」という意味だと思っていませんか?
正しい意味は「葉っぱは落ちつつある(ひらひら空中を舞っている)」。ing形には「動作の途中」という基本イメージ(コア)があり、falling完全に「落ちる」までの途中経過を示しているのです。ですから、 「The leaves are falling.」の時点では、まだ葉っぱは地面には落ちていません。
こうして、文法を基本イメージでとらえる学習の仕方をすると、大量の丸暗記や訳をしなくても理解できるため、効率よく英文法を理解できます。
2. パターンプラクティス
基本イメージを通して英文法を理解できたら、パターンプラクティスを行ないましょう。パターンプラクティスとは、習得したい文法項目を含む例文の主語や動詞などを部分的に変化させて、繰り返し声に出すトレーニングです。
パターンプラクティスでは、主に次のように文を変化させていきます。
【例】現在進行形(be動詞+現在分詞)を習得したいとき
- パターンを意識しながら例文を音読
I am eating lunch now.
She is eating lunch now.
We are eating lunch now. - 基本文の一部の表現を指示に従って入れ替え、それ以外の部分を自分で変形
I am eating lunch now. → 指示:she → She ( is eating lunch now ). - 肯定文を、指示に従って疑問文や否定文に変形
She is eating lunch now. → 指示:疑問文 → ( Is she eating lunch now )?
口をついて出てくるようになるまで繰り返すことで、日本語訳に頼らずに瞬時に意味をイメージできる文法の知識に変わっていきます。
リーディング
単語や文法がわかっていても、技術書やメールを読むのがどうしても遅くなるエンジニアのみなさん。英文に最後まで目を通してから後ろに戻って訳し上げていく「返り読み」をしていませんか?
英語と語順が異なる日本語に訳しつつ理解しようとすると、英文を行ったり来たりしながら読むことになり、読みきるのに時間がかかってしまいます。
そこで取り組むべき学習法がこちら。
- チャンクリーディング
- サイトトランスレーション
- 音読
順番に詳しく見ていきましょう。
1. チャンクリーディング
チャンクリーディングとは、英文を意味のかたまり(チャンク)ごとに、頭から内容をとらえて読んでいくトレーニング。チャンクの内容をイメージして、主語の範囲や名詞のかたまりがどこまでかなどを考え、文構造を意識して読んでいきます。
まずは、以下の英文を見てみましょう。
The cat sat on the warm, sunny window sill, watching birds fly by outside.
チャンクごとに区切ると、このとおり。
The cat sat /
猫が座っていた
on the warm, /
暖かい
sunny window sill, /
日当たりのよい窓辺に
watching birds /
鳥を見て
fly by outside. //
外を飛んでいく
チャンクごとの意味をとらえるのに慣れていくにつれ、複雑な構造の英文でも、英語の語順で理解することが可能です。
2. サイトトランスレーション
サイトトランスレーションは、チャンクごとに意味を思い浮かべ、それを瞬時に日本語に訳して言うトレーニング。こなれたきれいな日本語に訳せるかよりも、すぐに正しく内容が理解できるか、ということを確認する意識で取り組むのが重要です。
こちらもリーディングスピードを上げていくためのトレーニングですから、スピードを意識してください。
瞬時に日本語が出てこなかった部分は、知らない単語や文法事項が含まれているということ。そういった箇所を発見するのも、サイトトランスレーションの目的のひとつです。日本語がすぐに思い浮かばなかった単語や文法は、単語帳や文法参考書などで見直しておきましょう。
3. 音読
チャンクごとの意味が瞬時にイメージできるようになったら、次は音読。チャンクごとに意味をイメージしながら、声に出して読むのがポイントです。
人は英文を読むとき、脳内で音読していると言われています。目で見て認識した文字を頭のなかで音に変え、その情報を脳内にある「辞書」と照らし合わせ、すでにもっている語彙や文法の知識を駆使して理解しているのです。
音読することで、目で認識した文字を脳内で音に変えるプロセスを自動化でき、音に変換するために必要な脳のリソースを軽減できます。すると、その後の「理解」の処理にすばやく移行できるため、音読はリーディングスピード向上に効果的と言えるのです。
リスニング
エンジニアの場合、研修や会議の内容を聞き取る場合に英語のリスニング力が求められます。こうしたとき、英語がうまく聞き取れないのは、ネイティブの話す英語が早すぎるからと思う方もいるかもしれません。
じつは、もっと大きな原因として考えられるのは、「自らが想定している発音」と「ネイティブスピーカーが実際にしている発音」にギャップが生じていること。学校などでこうだと習った発音と、ネイティブの発音が異なっていたら、うまく聞き取れないのも無理はありません。
リスニングは、聞き取った音を英語の音として理解する音声知覚と、意味内容の理解のふたつのプロセスから成り立っています。まずは、耳に入ってきた音を英語の音として認識できることが、リスニングでは大前提なのです。
リスニングの効率的な学び方はこちら。
- 音声変化のルール学習
- 「音」に重点を置くディクテーション
- シャドーイング
どのように行なうか、詳しく見ていきましょう。
1. 音声変化のルール学習
エンジニアに必要な英語リスニングを身につけるうえで効率的なのが、音声変化のルールを知っておくこと。ネイティブは自然に話す際、音をつなげたり短くしたりして、音を変えながら発音しています。
学習者が知っておくとよい「音声変化」のルールは5つ(連結、同化、脱落、弱形、ら行化)のみ。
音声変化のルールと発生しやすい条件を理解したうえで、発音練習を繰り返すことで、音声変化が起きている箇所を含む細かな部分まで聞き取れるようになりますよ。
音声変化のルールや条件に関してさらに詳しく知りたい方は、コラム「英語の『音声変化』の特徴と効果的な学習方法」を読んでみてください。
2.「音」に重点を置くディクテーション
ディクテーションとは、聞き取った英語を、紙に書き取るトレーニング。「音」に重点を置く場合は、文法や文脈の推測になるべく頼らず、聞こえてきた英語をすべて書き取っていきます。聞き取れていない箇所がどこか、明確に把握するのが目的です。
まずは、聞き取った音声を紙に書き取りましょう。スペルが不明な箇所は、カタカナで書いてもOK。書き取りが間に合わなかったり、聞き逃したりした箇所があれば、繰り返し聞くことも可能です。5回ほど繰り返し聞いても書き取れない箇所は、すぐに答えを確認しましょう。
ひととおり書き出したら、スクリプトと書き取った英文を照合します。知っている語句が書き取れなかった場合、そこが「読めばわかるのに音では対応できない」部分。そのなかでも、個々の単語の発音がわかっているのに聞き取れなかった場合は、どのような音声変化が起きているかを分析し、音声に続いて発音練習をしましょう。
答えを文字で確認した際に、知らない単語などが多くて理解できない場合は、単語の意味や発音をその場で確認しましょう。あまりに知らない語句が多い場合は、難しすぎる教材を選んでいる可能性があるため、簡単な教材に変えることをおすすめします。
ディクテーションでは、TOEIC®︎ Part 2のような、短期記憶に留めておける程度の短くてシンプルな英文を、教材として使いましょう。
ディクテーションで聞き取れなかった箇所がわかっただけでは意味がありません。このあとにすべきは、オーバーラッピング。スクリプトを見ながら、流れてくる英語の音声の始めから終わりまで、重なり合うように英文を読み上げるトレーニングです。
言い始めから言い終わりまで完全に、音声にかぶせて発音するためには、音声変化が起こっている箇所を含め、子音や母音の細かな発音やリズム、抑揚など細部に注意を向けて再現しなければなりません。
繰り返すことで、正確な発音や英語らしいイントネーションなどが身につくため、ネイティブが実際にする発音とのギャップが埋まり、細部まで聞き取れるようになります。
オーバーラッピングでも、簡単な単語のみで構成されている短めの英文で行なうのがおすすめです。言い始めがずれることのないよう、スクリプトは必ず見て行なうようにしましょう。
3. シャドーイング
シャドーイングは、流れる音声に続いて、1、2語遅れでまねして発音していくトレーニング。発音するとともに、先の音声も聞き取る必要があり、負荷が高いトレーニングです。それでも繰り返すことで、聞き取る作業の負荷を減らし、音声知覚を自動化(無意識でも処理が行なえるようになること)させることができます。
最初はスクリプトを見てもかまいませんが、最終的には何も見ずに、スムーズにシャドーイングができるようにしましょう。文字情報はシャドーイングの補助として活用します。
まずは音声だけに注意を払うプロソディ・シャドーイングを行ないましょう。よく音声を聞いて、発音や抑揚などを、モデル音声をまねて発音します。ただ音だけに集中して、正しい発音を同じような速度で復唱できるのを目指しましょう。
プロソディ・シャドーイングがスムーズにでき、音声知覚が自動化されたら、次はコンテンツ・シャドーイング。音声を聞きつつ、内容をイメージして行なうシャドーイングです。
コンテンツ・シャドーイングができるようになると、聞き取った英語を理解する処理がスムーズになり、英語を聞いて瞬時に理解する力が身につきます。
エンジニアに必要な英語のリスニング力を身につけるには、以上のようなトレーニングを実践しましょう。
スピーキング
取引先とのやり取りや、会議での発言などで英語で話す場面などで、英語が必要なエンジニアもいるでしょう。相手の英語は聞き取れても、適切な言葉がすぐに出てこなくて返事に時間がかかったり、なんと返事したらよいかわからないというエンジニアの方は、以下の勉強法を取り入れるとよいでしょう。
1. ストーリーリテリング
ストーリーリテリングとは、読んだり聞いたりした英文全体の内容を、できるだけ英語で再現するトレーニング。チャンクリーディングやシャドーイングなどで扱った英文、その日に読んだエンジニア関連のニュース記事をそのまま暗唱するのではなく、聞き手を意識して自分の言葉で言い換えたり、意見を述べたりします。
話した内容を録音しておくと、すぐに出てこなかった単語や表現に気づくことが可能です。アウトプットでは、こうした気づきが大切。気づきを得ることで、言えなかった表現を意識するようになり、そうした語句や表現をあとで調べることで長期記憶にも定着しやすくなり、より効率的なインプットになります。
2.「4/3/2」スピーキング
「4/3/2」スピーキングとは、同じテーマのスピーチを3回繰り返すトレーニング。4分→3分→2分と、英語で話す時間をだんだん短くしていきます。
手順は次のとおり。
- テーマについて考え、必要なキーワードをメモして話す準備をする
- 4分間話し続ける
- 4分間で話した内容を、次は3分間話す
- 最後に2分で同じ話をする。ここで流暢かつ端的に話せるようにする
4分間、3分間で話す準備を経てから、本番の2分間スピーチで、テーマに関して流暢かつ端的に話せるようになるのが、このトレーニングの目標。繰り返していくうちに、まわりくどい説明や言い淀み、沈黙がなくなり、言いたいことを流暢に話せるようになっていきますよ。
以上のような勉強法を試して、エンジニア業務に必要な英語のスピーキング力を鍛えていきましょう。
ライティング
海外が取引先の場合や、海外のエンジニアと連携して作業を行なう場合、運用マニュアルや仕様書、チャットやメールは英語で作成する必要があります。最近は自動翻訳の技術が発展していますが、ご自身の英語で伝えたほうが、あなたが伝えたいニュアンスを相手により伝えやすくなるでしょう。
そこで、エンジニアの業務に応用できるライティングスキルを鍛える、主な勉強法をご紹介しましょう。
1. 復文
復文とは、日本語訳つきの英文を準備し、日本語訳だけを見て元の英文に復元するトレーニング。語彙や文構造含め、自分が書く英文を見本の英文とすべて一致させる必要があるため、ライティングの正確性を上げるのに効果的です。
見本の英文に目を通す段階では、英文を丸暗記するのではなく、単語や文構造をきちんと理解することを意識しましょう。いくつかの英文に目を通して文構造を理解できたと思ったら、英文を隠し、日本語訳を頼りに英文を復元していきます。
短い1文だけでこの手順を行なうと、丸暗記したものを即座に書き出すことになるので、なるべく2~3文くらいに目を通したあとに復元するとよいでしょう。そうすることで、自分の文法や構文の知識を活用しながら書くことができます。
うまく復元できなかった単語や文法があれば、単語帳や文法書で不足している知識を補いましょう。
使う英文の素材は、英文が短めのものが多く、日本語訳や文法解説がある文法問題集がおすすめです。元の英文を忠実に再現して書くことで、普段あまり使っていない単語や文法をアウトプットする機会をつくることができます。
2. クイックライティング
クイックライティングは、あるテーマに沿ってアイデアをまとめたあと、時間いっぱいひたすら英文を書き続けるトレーニング。ライティングの流暢性を鍛えます。
テーマは、興味のあるニュースや最近読んだ本といった、身近なものや、英語の資格試験で問われるようなライティングの問題などのなかから、書きやすいものを選びましょう。スペルや文法などの間違いを恐れずに、ひたすら英文を書き続けるのがポイントです。
このような英語ライティングの勉強法を実践して、ぜひエンジニアの実務に活かしてください。
エンジニアが英語を学習するうえで意識すべき点
エンジニアが日常の業務の合間に効率よく英語力を身につけるために、意識すべき点は主に3点です。
- 大量のインプットと少量のアウトプットのバランスを意識
- モチベーションに依存しすぎない
- スキマ時間を見つけて学習する
順番にご説明しましょう。
1. 大量のインプットと少量のアウトプットのバランスを意識
取引先とのやり取りなどで英語が必要なエンジニアの場合、正確に流暢に話せるようになるためには、まず英会話が必要だと考えるでしょう。じつは、いきなり英会話の練習から始めるのは、言語習得のうえで必ずしも効率的とは言えません。
なぜなら、「第二言語習得研究」(母語以外の言語を身につけるプロセスやメカニズムを扱う学問)の知見において、純粋な意味での言語習得が起きる、つまり自分が話せる言葉が増えるのは、理解できるインプットを得たときと言われているからです。
また当然のことながら、理解できる言語知識の一部が、話したり書いたりする際に使える言語知識になります。そのため、英語を読んだり聞いたりする際の理解度がまだ低いという人であれば、その状態でただ英会話だけに取り組んでも、話せる英語の知識は増えていきにくいのです。
エンジニアが英語学習を進めるうえで、一番意識すべきは、大量のインプットと少量のアウトプットのバランス。いきなり英会話の練習に取り組むのではなく、語彙、文法の学習、リーディングやリスニングの勉強などのインプット学習を優先しましょう。
もちろん、ただインプット学習だけすればよいというものでもありません。時折アウトプット学習を入れることで、「ここがうまく言えない」「こういう英語がうまく書けない」と気づくと、未習の英語表現により注意を向けることができます。
アウトプット学習には「気づき」によってインプットの効率を高め、記憶の定着を促す効果があるのです。
よって、英語を勉強する際は、インプット学習の時間を多めに確保し、時にアウトプット学習をすることを意識しておきましょう。
2.モチベーションに依存しすぎない
「仕事で英語がうまくなりたいから、今日から早起きして英語のビジネス雑誌を1冊読もう」
最初のうちはそう意気込んで、英語学習に励むかもしれません。しかし、仕事で疲れて英語学習をする気が起きなかったり、いくら続けても英語がうまくならないと感じたりすると、勉強へのモチベーションが出ず、挫折してしまうもの。そうした苦い経験をしてきた方もきっといるはず。
英語の勉強という新たな行動へのとっかかりには、たしかにモチベーションは重要な要素のひとつです。しかし、常に波が生じる変動の大きいモチベーションに頼りすぎると、英語の勉強を続けることが困難になります。
英語の勉強を継続していくためのコツは、モチベーションに頼らなくても行動できる仕組みをつくること。たとえば、以下のようにするのがおすすめです。
- スマートフォンのホーム画面のトップに、英語学習アプリを設定する
- テレビやゲームなど、勉強の妨げになるものから離れる
- 通勤中のカバンに単語帳を入れる
- 机の上には英語学習に関係する教材だけにする
など
このように、身のまわりに英語の勉強ツールを置いて、生活のリズムのなかで常に英語に触れる仕組みをつくることで、モチベーションや意志の力に頼らなくても、英語学習を続けやすくなります。
3. スキマ時間を見つけて学習する
エンジニアの日々の業務に追われていると、忙しくて、英語の勉強をするためのまとまった時間がとれないのはよくあること。そんな方は、英語学習のためのスキマ時間を見つけるのがおすすめです。
朝起きてから夜寝るまでの、一日のあなたの生活リズムを整理してみましょう。通勤中や車の運転中、昼休み、テレビを見ている時間、就寝前など、特に何もしていない時間はありませんか? そんな時間を少しでも英語学習に充ててみましょう。
1〜2時間まとめて確保するのが難しくても、学習内容を15分に分けて、15分の学習を4回繰り返せば、1時間の学習が達成できますね。
さらに、スキマ時間に何をするのかを、事前に具体的に決めるのがポイント。「朝起きてからの15分、単語学習をする」というように「いつ」「何を」学習するかを明確に決めておくことで、迷わずに、スキマ時間の英語学習ができます。
英語を使って活躍するエンジニアを目指すなら、以上の事柄を意識してみてください。
英語力を活かせるエンジニア職の例
エンジニアが英語力を身につけると、以下のような職種で活躍することができます。英語力があれば、エンジニアとしてのキャリアの可能性が大きく広がるのです。
外資系企業で働くエンジニア
外資系企業では、社内公用語が英語であることが多く、日常的に英語が使われます。プロジェクトの報告、メールのやり取り、会議でのディスカッションなど、業務全般にわたって英語が必要とされるのです。また、英語を使って世界中のクライアントやチームメンバーとコミュニケーションを取る機会も豊富にあります。
オフショア開発プロジェクト担当
オフショア開発では、異なる国にいるクライアントや開発チームとの連携が必要。プロジェクトの進捗管理、技術的な仕様の説明、問題解決のための議論など、英語でのコミュニケーション能力が不可欠です。
国際的なテクニカルサポート
製品やサービスをグローバルに展開している企業では、世界中の顧客からの問い合わせに英語で対応しています。そうしたテクニカルサポートの業務では、顧客の技術的な問題を理解し、適切な解決策を英語で提供する必要があります。
また、製品マニュアルやFAQの作成、オンラインフォーラムやSNSでのサポートにおいても、英語でのコミュニケーションスキルが必要です。
以上のような職種で活躍するうえでは、英語力が大きな武器となります。
英語力の高いエンジニアとしてキャリアアップを目指す方は、こうした職種への転職も検討してみてはいかがでしょうか?
エンジニアがもっと効率よく英語力を伸ばすために
エンジニアとして英語を使って活躍の場を広げるためには、これまで紹介したような勉強法で学習を進めると効率的。しかし重要なのは、勉強法を知ることだけではありません。あなた自身の英語力における立ち位置や課題を知ることが、効率よく英語力を上げるための近道なのです。
とはいえ、自分の課題はひとりで勉強しているとなかなか気づきにくいもの。仕事が多忙ななかでは、効率よく飛躍的に英語力を伸ばすのは難しそうと思うかもしれません。
そんなときに役立つのが、「英語学習のプロ」による課題発見と、課題に応じた適切なトレーニング。英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」では、ひとりひとり異なる英語の課題に合わせて、第二言語習得研究の専門知識が豊富なプロトレーナーが、あなたのいま解決すべき課題と、取り組むべき最適なトレーニングをご提案いたします。
さらに、トレーニング終了後にも応用できる、正しい英語学習の継続の仕方も習得可能です。IT系企業で働く方や、エンジニアとして働く方をはじめ、およそ28,000名の英語力アップをサポートしてきました。
コースの詳細は以下からチェックできます。毎回のトレーニングメニューに沿って学習を進めていくことで、エンジニアに必要な英語力が効率よく身につくはずです。
***
エンジニアが英語力を上げることで、活躍の場が広がり、さらなるキャリアアップが期待できます。
英語の仕様書や会議資料をスラスラ読めるようになりたい、もしくは海外のクライアントと円滑なコミュニケーションがとりたいと考えるエンジニアのみなさんは、今回ご紹介した勉強法をぜひ試してみてください。
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