「勉強しなきゃと思えば思うほど、手が進まなくなる」
「不安や焦りで集中力が続かない」
さまざまなプレッシャーが引き金となり、勉強がはかどらなくなってしまう……そんなことはありませんか?
プレッシャーというと勉強を邪魔するもののように思われがちですが、じつはそうとも限りません。いいプレッシャーを味方にできれば、勉強をはかどらせることができるのです。
本記事では “いいプレッシャー” と “悪いプレッシャー” の違いと、自分にいいプレッシャーをかけて勉強効率を上げる方法をお伝えします。ぜひプレッシャーへの向き合い方を見直してみましょう。
悪いプレッシャー1:強制
子どもの頃、「勉強しなさい!」と言われれば言われるほど、やる気がなくなった経験のある人は多いと思います。このような強制は、悪いプレッシャーのひとつです。
なぜ、強制はよくないのでしょうか? その理由は、脳の仕組みにあります。
脳科学者の西剛志氏によれば、「わたしたちの脳は1つのことに縛られ、思考が制限されるのを嫌」うとのこと。強制とは、まさに思考が縛られている状態。反発してしまうのは自然な反応なのですね。この反発には「心理的リアクタンス」という名前もついています。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|「アホになるから勉強するな」子ども3人を一流大学に合格させた母親の脳のしくみを活用した驚きの「声かけ」)
筆者にも、心理的リアクタンスを感じた経験があります。会社で資格をとらなくてはならなくなった際、上司から何度も「ちゃんと勉強しているの?」と聞かれました。当時はその話をされるたび、勉強したくない気持ちが大きくなったのを覚えています。
このように、一方的に強制される状況はモチベーションの低下につながります。もし、あなたが上司の立場にあるなら、部下に勉強などを強制しすぎないよう注意しましょう。
悪いプレッシャー2:ネガティブな感情
仕事でミスをしてしまったり、プライベートで嫌なことがあったりすると、不安や悩みに思考を奪われ、勉強に集中できなくなりますよね。このように、ネガティブな感情は勉強で使う脳の領域を奪ってしまうのです。
脳科学者の篠原菊紀氏は、「プレッシャーが脳のメモである、ワーキングメモリの容量を食ってしまい、考える能力が低下」する可能性に言及します。ワーキングメモリとは、「短期記憶の一種で、記憶や情報を一時的に保持して組み合わせて答えを出していく機能」のこと。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|脳科学者が推奨!成績をアップする「簡単工夫」)
私たちは、この脳のワーキングメモリに、会話や思考、英単語などのちょっとした情報を一時的に置き、コミュニケーションや勉強を行なっています。したがって、下記のようなネガティブな感情も、ワーキングメモリの容量を消費してしまうのです。
- 試験に落ちるかもしれないという不安
- 優秀なまわりの人と比較して、自分は勉強の成果が出ていないという焦り
ワーキングメモリが消費されると、そのぶん脳の領域が侵され、勉強にブレーキがかかります。勉強に打ち込むためには、ネガティブな感情にできるだけとらわれないようにしたいものです。
いいプレッシャー1:自己決定
先ほどお伝えしたように、人から「勉強しなさい」としつこく言われたり、上司に勉強の進捗をたびたび尋ねられたりといった “強制される状態” は、心理的リアクタンスを招く悪いプレッシャー。しかし、だからといって、勉強をしないことにしたり、上司に意見したりするのはなかなか難しいものですよね。
そんなとき、自分自身でできる解決策が「自己決定」。つまり「自分で選択肢をつくって選ぶ」ことです。前出の西氏は、「自己決定することで、ドーパミンが分泌され」、「選択した行動へのやる気を高めてくれ」ると述べます。これは「『心理的リアクタンス』対策」になるのだとか。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|「アホになるから勉強するな」子ども3人を一流大学に合格させた母親の脳のしくみを活用した驚きの「声かけ」)
自己決定について、具体的に考えてみましょう。たとえば、先の筆者の例のように、資格取得のために勉強しなければならず、上司からたびたび進捗を聞かれるという状況なら、下記のような複数の目標を設定してどちらかを自分で選ぶのです。
- 最低限の努力で合格できるよう、効率を追求して勉強する
- 次の試験で必ず合格して、資格の話をされない状況をつくる
どちらを選んでもかまいませんが、重要なのは自分で決めること。筆者の場合、会社に行くたび資格の話をされる状況を脱したかったので、後者を目標に据えました。
もちろん、どちらの目標を定めても、資格勉強をしなければならない状況は変わりません。しかし、「やらされている」という受動的な意識を「目標を達成しよう」という自主的な意識に変えることで、いいプレッシャーへと変換できるのです。実際に、筆者はこの考え方で合格をつかみとりました。
いいプレッシャー2:時間制限
いつもはダラダラとやってしまう勉強であっても、試験直前になると集中して取り組めた経験は、みなさんにも一度はあるでしょう。「いつまでにやらなければいけない」という時間制限は、脳にとっていいプレッシャーとなります。
脳科学者の川島隆太氏いわく、「制限時間を決め」ると脳は「本気を出す」のだそう。「『速く処理する』というスイッチを入れる」と、「脳内の血流は一気に増え、活性化状態になることが分かってい」ると言います。(カギカッコ内引用元:Active Brain CLUB|脳を本気にさせる「時間管理法」)
たとえば、下記のように具体的な時間と勉強量を自分で決めてみましょう。
- 電車から降りるまでの10分間で、参考書を2ページ読む
- 出勤前の5分間で、問題を1問だけ解く
- 寝る前の15分間で、3つだけ暗記する
最初はあまり高すぎない目標で、適度なプレッシャーをつくり出すのがおすすめです。脳に本気を出させていくうち、勉強がはかどるようになるでしょう。
「この習慣を始めた頃は2ページしか読めなかったけれど、最近は3ページ読めるようになった」といったように、自身の成長を感じることもできるかもしれませんよ。
ネガティブな感情に頭が支配されてしまうときは
ネガティブな感情は悪いプレッシャーになると前述しましたが、どうしてもそんな思考に支配されてしまうときもありますよね。そういった場合には、ネガティブな感情をはき出すのが効果的です。
アメリカのシカゴ大学において、不安と記憶に関する実験が行なわれました。これは下記のような条件のもと、「大学生20人に数学のテストを2回を受けてもらい」、その成績の変化を調べたものです。
- 「1回目には『ベストを尽くすように』と指示し、2回目は『成績優秀者には賞金』『成績が悪ければ連帯責任』とプレッシャーをかけ」る
- 「2回目のテストの前に、半分の学生に『試験に関する不安』を書いてもら」う
その結果、2で不安を書いた学生は「成績が5%よくなった」のだとか。一方、不安を書かなかった学生は「1回目に比べ、2回目は成績が12%も下がっ」たそうです。
これについて、「カウンセラーなどに話をすることで不安が軽減されるカウンセリング効果と同じような効果が働いたのではないか」と考察するのは、前出の篠原氏。
(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|脳科学者が推奨!成績をアップする「簡単工夫」、上記参考元:University of Chicago News|Writing about worries eases anxiety and improves test performance)
ネガティブな感情を外に出すと、そのぶんの脳の容量が空くイメージです。
もし、「こんなに頑張ったのに落ちたらどうしよう」「悩みが頭から離れず集中できない」といった不安や焦りが勉強に悪影響を及ぼしているなら、その気持ちを書き出してみてください。頭のなかの整理にもなり、一石二鳥ですよ。
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この記事では、自分にいいプレッシャーをかけて勉強効率を上げる方法をお伝えしました。プレッシャーをうまく利用して、ぜひ勉強をはかどらせてください。
プレジデントオンライン|「アホになるから勉強するな」子ども3人を一流大学に合格させた母親の脳のしくみを活用した驚きの「声かけ」
東洋経済オンライン|脳科学者が推奨!成績をアップする「簡単工夫」
Active Brain CLUB|脳を本気にさせる「時間管理法」
University of Chicago News|Writing about worries eases anxiety and improves test performance
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。