「週末のルーティンとして、仕事に役立ちそうな本を読んで勉強している。だけど、読んだ内容を忘れてしまうことが多い……」
「資格試験の日程が近いので休日に長時間勉強したけど、いまいちはかどらなかった……」
平日は時間がないから、休日にまとめて勉強したいのに、実際やってみるとうまくいかない――そうあなたが悩んでしまうのは、“あること” を知らないせいかもしれません。それはいったいなんなのか。多忙な社会人におすすめの勉強法とあわせてお伝えします。
この記事を読めば、休日の勉強効率を上げるコツをおわかりいただけるはずです。
1. “休日だけ” の勉強では記憶は定着しない
先週末にテキストの第2章を読んだのに、内容をほとんど忘れてしまった。今週もまた第2章から読まないと……といった経験はありませんか。
そうなってしまうのには理由があります。じつは、 “休日だけの勉強” では、脳に記憶が定着しづらいのです。
脳内科医の加藤俊徳氏いわく、「脳は怠け者なので、3日も経てば日常に忙殺されて勉強の記憶が薄れていくのが自然の摂理」。そしてこう指摘します。
こうなると、次の週末には先週末に学んだことの記憶を掘り起こすところから始めなくてはならないですし、平日に知識を蓄えたり新しいひらめきを得たりする機会もないままで、なかなか勉強の効率が上がりません。
(引用元:東洋経済オンライン|週末に勉強しても身につかない人に伝えたいコツ、以下カギカッコで示した加藤氏の説明は同資料より引用)
つまり、土日にいくら長時間勉強しても、月曜、火曜、水曜……とまったく勉強しなければ、土日に勉強した意味が薄くなってしまうのです。
となると大事になってくるのが、平日いかにして勉強するか。
加藤氏は、脳には「『すでに知っているもの』を好む」という性質があるとしたうえで、その鍵となる「脳と情報の親密な関係」をつくる方法とその効果について、こう説明しています。
1日10分でいいから毎日コツコツ型の勉強法に変えていくこと。同じ時間でも、2時間(120分間)まとめて勉強するよりも、10分間の勉強を12日間続けたほうが、脳科学的にはかなり効率のいい勉強法なのです。
(中略)
毎日、情報を送り続けるわけですから、脳はこの情報は重要だと判断しますし、そうなれば、学んだことが記憶に残りやすくなります。
(引用元:同上。太字は編集部にて施した)
とはいえ、そもそも平日は時間がないから土日にまとめているのに……と思った人は、こんな方法で、スキマ時間を使って毎日少しずつ勉強にチャレンジしましょう。
- 勉強内容をまとめた「復習ノート」をつくる:
「復習ノートをパラパラと見返すだけでも(中略)その勉強に関する“糸”が途中で切れることなく、ずっとつながっている状態をキープでき」る。(加藤氏が推奨) - テキストを「持ち運びやすいぐらいの薄さに」分解する:
テキストが分厚くても、10~20ページ程度の薄さに「バラす」ことで、持ち運びしやすくなって「隙間時間ができたときに、間髪入れずに勉強できる」。(トレスペクト教育研究所代表・宇都出雅巳氏が推奨)
(加藤氏のカギカッコ内説明は、前出の東洋経済オンラインより引用。宇都出氏のカギカッコ内説明は「All About|隙間時間を活用した勉強の4つのコツ!1日5分でもOKの暗記術とは」より引用)
たとえば……
- レストランでランチが出てくるのを待つあいだ
- 通勤電車
- タクシーのなか
- 人との待ち合わせ中
いったスキマ時間に勉強できるよう、復習ノートや薄くしたテキスト常にカバンに入れておくとよさそうですね。
平日が忙しいからといって週末にまとめて勉強するのは、とても非効率。ちゃんと覚えたいなら、毎日少しずつでもいいので勉強内容に触れることが肝心です。たった10分なら、忙しくても確保できそうな気がしませんか? ぜひ試してみてくださいね。
2. 暗記作業は “休日に長時間” より “毎晩” やるほうがいい
記憶のコツをもうひとつご紹介しましょう。「資格試験までに覚えるべき大量の用語。休日にまとめて覚えよう!」というやり方は非効率。毎日コツコツ、それも “夜、寝る前” に暗記するのが効果的ですよ。
脳医学者の瀧靖之氏が、その理由をこう説明しています。
「海馬はその日入力された情報を睡眠中に整理し、保存する。暗記した後にすぐ眠ると、より記憶として定着しやすくなります」
※海馬……記憶をつかさどる脳の部位。
(引用元:NIKKEI STYLE|脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法)
したがって、前項でご説明したように毎日コツコツと勉強することに加え、「どうしても暗記したい!」というものに関しては、休日にまとめてではなく、寝る前の時間を活用して覚えましょう。
でも寝る前はダラダラしてしまう……というなら、あらかじめ枕元やベッドサイドに単語帳などを置いておくといいかもしれません。心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏いわく、「『すぐやれない』行動も、スタンバイ状態に持っていっておけば、案外すぐにやれる」(引用元:佐々木正悟(2011),『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』, 中経出版.)。「スタンバイ状態」とは、必要な道具などが一式そろっている状態のことです。
筆者も、夜寝る前の暗記に数日間取り組んでみました。すると、週末にだけ暗記作業をした場合と比べて、勉強した内容をよく覚えていることを実感できました。
特に、前夜に勉強したことを翌朝目覚めた段階でほぼ完全に記憶していたのです! ですので、時間があれば朝に復習をすれば、記憶をより確かなものにできるのではないでしょうか。
ただし、暗記がうまくいった日ばかりではなく……。暗記後にスマートフォンをいじっていろいろな情報を見てしまった日は、覚えがよくありませんでした。
じつは、瀧氏が暗記した後に “すぐ” 眠ることをすすめているのは、「記憶が入り混じる『撹乱』」を防ぐためなのです(引用元:前出のNIKKEI STYLE記事)。暗記後すぐ寝ることの有効性を、身をもって実感しました。
毎晩寝る直前にコツコツと暗記すれば、休日にまとめて暗記するよりもずっと高い成果を上げられるでしょう。こちらもぜひ、試してみてください。
3. “90分以上” 続けて勉強しても集中力は保てない
毎日少しずつ勉強していても、やっぱりまとまった時間が欲しいときもありますよね。そんな思いの反面、いざ長時間机に向かってみると、なぜかはかどらない……。
こうした悩みがある人は、机に向かう時間の長さを調整してみましょう。集中力が途切れる前に休憩するのです。
脳科学に詳しい精神科医の樺沢紫苑氏は、「集中できる時間」は長くて「90分」だとしたうえで、休憩の重要性についてこう述べています。
とある研究では、休憩なしで仕事をした時の疲労は非常に回復しづらく、疲れを次の日までもちこすという結果がでています。逆に、休憩を挟むと、一晩で回復できる。毎日の集中力を保つためには脳をリセットするこまめな休憩が重要です
(引用元:タウンワークマガジン|集中力の限界は90分? 集中できないときに試したい効果的な休憩方法と勉強法)
たしかに、休日に勉強したせいで疲労がたまり、平日の仕事に支障が出る……というのは避けたいものですよね。
そこで、資格試験前の追い込みなどで休日に勉強時間を長くとりたいなら、樺沢氏がすすめる以下のポイントを押さえ、休憩をとりながら勉強しましょう。
- 「『疲れたな』と感じたら休憩を取る」
- あるいは、「1時間に1回など時間を決めて定期的に取る」
- 休憩の長さは「大体5分~10分程度」
- 「目を使わない」
- 「立ったほうがいい」
(カギカッコ内引用元:同上)
脳を休めたり、血流をよくして脳のパフォーマンスを高めたりするには、上のポイントにあるように休憩中の過ごし方も大切なのですね。樺沢氏の見解をふまえると、休憩の際はたとえばこんなことをするといいのではないでしょうか。
- 好きな曲を1曲聞いてリラックス
- アイマスクなどで目を癒やす
- 立ち上がってストレッチ
- トイレに行く
- 飲み物を注ぎに(買いに)行く
休日にまとまった時間を割いても、勉強の成果が出なければ意味がありません。せっかく勉強するのなら、適切な休憩をとりながら集中力を保って勉強しましょう。
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休日に勉強すること自体は悪いことではありませんが、勉強の仕方によっては効率が下がる恐れがあることをお伝えしました。今回ご紹介した内容が、多忙な社会人の皆さんの勉強がうまくいくことにつながれば幸いです。
(参考)
東洋経済オンライン|週末に勉強しても身につかない人に伝えたいコツ
All About|隙間時間を活用した勉強の4つのコツ!1日5分でもOKの暗記術とは
NIKKEI STYLE|脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法
佐々木正悟(2011),『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』, 中経出版.
タウンワークマガジン|集中力の限界は90分? 集中できないときに試したい効果的な休憩方法と勉強法
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。