脳科学的根拠あり。ベストセラー著者がすすめる集中法「報酬感覚プランニング」をやってみた。

「報酬感覚プランニング」をやってみた01

「資格試験に向けて勉強しているが、集中できなくて思うように進まない」
「業務中に気が散って、いつも納期ギリギリになってしまう」

目の前のタスクに集中できずに悩んでいる人におすすめなのが、報酬感覚プランニングというワーク。ベストセラー『ヤバイ集中力』著者・鈴木祐氏が、脳科学と心理学に基づき考案したものです。今回は手軽に始められる即効簡易版のやり方と、筆者が実践して得られた効果をご紹介します。

目の前のタスクに集中するコツは、辺縁系をコントロールすること

私たちが目の前のタスクに集中できない原因は、脳の “辺縁系” をコントロールできずに欲望を抑えられていないからだと、鈴木氏は言います。辺縁系は情動や本能などに関係する領域で、理性をつかさどる前頭前皮質よりも強いパワーをもつ部位。そのため、勉強中に「ゲームがしたい」のような欲望が生まれると、理性は負けて勉強に集中できなくなるのです。

集中力を高めるには、目の前に報酬があったらすぐに飛びつくという、辺縁系がもつ別の性質に着目するとよいと鈴木氏。脳科学では、報酬に対して「あと少し頑張れば、報酬が手に入りそうだ」と感じることを 報酬の予感 というそう。鈴木氏いわく、辺縁系に報酬をうまく予感させれば、報酬の確保に対する集中力が高まるのだとか。

仕事や勉強で「あと少し頑張れば……!」という報酬の予感を脳に認識させるには、タスクの難易度を実力よりもやや高めに設定するとよいそうです。

辺縁系を含めて、脳は生きるためにエネルギーの浪費を防ぐ傾向にあります。そのため、タスクが難しすぎる場合は「頑張っても報酬を得られないから放っておこう」、簡単すぎる場合は「いつでも報酬が得られそうだから放っておこう」と、脳は判断するとのこと。難しすぎず、かつ簡単すぎでもないタスクにこそ、脳は集中しやすいというわけです。

「報酬感覚プランニング」をやってみた02

 

報酬の予感を最適化した「報酬感覚プランニング」

こうした辺縁系の特性をふまえつつ、心理学的なテクニックも用いて考案されたのが、報酬感覚プランニングです。

報酬感覚プランニングとは、作業を自分に合った難易度へ最適化できるタスク管理法。通常版では、数週間~数年かけて達成したい目標に焦点を当てます。ですがここでは、デイリータスクを達成するのに効果的な、報酬感覚プランニング即効簡易版を紹介しましょう。

鈴木氏によれば、即効簡易版の5つの作業手順を順に踏むと、脳が報酬を自然と予感しやすくなるそう。「書類作成」を例に考えてみます。

  1. 理想イメージング
    目の前のタスクを達成すると得られるポジティブなことを想像し、思いつくままにリストアップする。
    例)
    上司にほめられる、作業スピードに自信がつく

  2. ポジティブ選択
    1でリストアップしたポジティブなことについて、メリットを頭のなかで詳しくイメージし、最もポジティブな気分になったものをピックアップする。
    例)
    最も大きいメリット:作業スピードに自信がつく
    具体的なイメージ:今後、急な書類の作成を依頼されても対応できて、評価も上がるだろう

  3. 障害コントラスト
    タスクを達成する際に起こりそうなトラブルを想像して書く。
    例)
    電話応対に追われる、別の上司から雑用を頼まれる

  4. ネガティブ選択
    最もデメリットが大きいトラブルを3から選んで書く。それぞれのトラブルを想像して、実際に起こりそうなことを選ぶとよい。
    例)
    最も大きいデメリット:電話対応に追われる
    具体的なイメージ:夕方には取引先からの電話がたくさんかかってくる

  5. 質問型アクション
    自分がやるべきタスクを、質問形式で具体的に書く。「○○(=自分の名前)は、[時間]に[場所]で[デイリータスク]をするか?」という形式が基本。自分に向けて書かれた質問文だとわかれば、名前はニックネームでもOK。
    例)
    ○○は、17時にオフィスで書類の作成をするか?

ポジティブなこと(1~2項め)とネガティブなこと(3~4項め)を対比させるのは、「心理対比」という心理学のテクニックによるもの。鈴木氏によると、ポジティブなことばかり考えていると、すでに目標を達成したと辺縁系が錯覚してしまうそう。そこで、ネガティブなことも意図的に思い浮かべて「まだゴールに到達していない」と辺縁系に認識させ、報酬の予感に集中させます

また5項めでタスクを質問形式にしたのは、「問いかけ行動効果」と呼ばれる心理現象に基づいています。鈴木氏によると、「〜〜〜する」といった宣言文の場合、辺縁系は文章の意味を理解しても自分事としていまいちとらえきれないそう。そこで質問形式にすると、アクションを促す要素が含まれるので、辺縁系は反射的に答え(=報酬)を求め、モチベーションが高まると言います。

さらに質問形式のタスクで時間と場所も設定しているのは、「実行意図」という心理学の技法によるものです。先述のとおり、脳は省エネの傾向があるので、時間と場所を決めておかないと、辺縁系は実行のタイミングをできるだけあとに引きのばそうとしてしまうと鈴木氏。時間と場所を指定すれば、辺縁系は行動を起こすべきタイミングを理解できるので、実行力が高まるそうですよ。

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「報酬感覚プランニング」で、デイリータスクを管理してみた

さっそく筆者も、報酬感覚プランニング即効簡易版を10日間実践してみました。ノートは、手元に置いてタスクを確認できるように、小さめのB罫サイズ(縦210mm、横148mm、28行)を使用。以下がその書面です。

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ある1日の記録を取り出してみましょう。この日は、「登録販売者試験の傾向分析」という勉強タスクに集中したいと考えて、5項目を記録してみました。

7月10日(日)

  1. 理想イメージング
    復習ができる、知識をブラッシュアップできる、情報収集ができる
  2. ポジティブ選択
    情報収集ができる:資格系記事の作成に必要な情報が得られ、仕事の幅が広がる。
  3. 障害コントラスト
    急な電話、SNSの誘惑、休憩からの切り替え
  4. ネガティブ選択
    SNSの誘惑:気になる動画を見始めたら、止まらなくなって勉強が滞る。
    →タブレットの電源を切る。
  5. 質問型アクション
    ○○は、11時にホテルで登録販売者の過去試験問題を3年分解いて傾向分析をするか?

なお、赤い丸は、完了したタスクを示しています。脳神経外科医の菅原道仁氏によると、達成度の可視化には、報酬系の機能に大きく関係するドーパミンの分泌を出し続ける働きがあるのだそう。そこで、タスクを完了するたび、5項目めを丸で囲み、達成感をより得られるようにしました。

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「報酬感覚プランニング即効簡易版」をやってみたら、意欲と集中力が高まった!

最後に、「報酬感覚プランニング即効簡易版」を実践して感じた効果や提案したいことを以下にまとめます。

質問形式のタスクで意欲が高まる

タスクを質問形式にすると、「できるか?」と勝負を挑まれているような感覚を覚え、「やってやろう」という気持ちになりました。そのためか、いつもよりも意欲が高くなり、結果として高い集中力を維持できたと感じています。

タスクの内容は具体的に書くほど効果的

また、タスクの内容を具体的に書くほど達成の難易度が明確になるため、報酬の予感を認識しやすくなると感じました。

たとえば本を読みたい場合。単に「本を読む」ではなく「通読する」や「熟読して要点をまとめる」のように、具体的に書きました。その結果、「新幹線が東京に着くまでの2時間半で、3章まで読んで要点をまとめる……1章当たりかけられる時間は50分か。頑張ればできそうだ!」と実践しているイメージが鮮明に浮かんで、行動に移しやすくなったのです。

「無理かも」と思ったら、タスク難易度の調整を

ただしタスクのなかには、ノートへ書いたはいいものの、実行前から難易度が高すぎると感じてしまうものもありました。

鈴木氏いわく、最適な難易度を探すには、試行錯誤が必要とのこと。高すぎる難易度は無理せず下げると、辺縁系が報酬を予感し続けられるそうです。

筆者も、「無理かも」と思ったタスクは難易度を下げました。「1日で16個のデザイン案を考える」としたところを、まだ難しいと感じたため、10個考えたらOKと難易度を下げたのです。結果、しっかりタスクを完了できました。

慣れない仕事ほど、難易度の見極めは難しいものです。みなさんも状況に応じて、タスクを細分化したり、難易度を調整したりして、実行力が高まる最適なラインを探ってみてください。

***
脳のなかでも強いパワーをもつ辺縁系を味方につけ目の前のタスクに集中する、報酬感覚プランニング。即効簡易版なら手軽に始められるので、ぜひ試してみてくださいね。

(参考)
鈴木祐 (2019), 『ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45』, SBクリエイティブ.
茨城県教育委員会|脳とメディア
リクルートマネジメントソリューションズ|自律的行動とその意味とは~どうしたら人は自律的に動けるのか~
菅原道仁 (2018), 『なぜ、脳はそれを嫌がるのか? 』, サンマーク出版.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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