ビジネスにおける人脈の重要性は痛いほど感じていたとしても、なにかと時間に追われる社会人にとって、そのための時間を割くのはそう簡単ではありません。でも、大企業を中心としたクライアントを相手に、経営コンサルタントとして活躍する平野敦士カールさんは「1時間で可能」だと言います。平野さんは、人脈づくりの場としてランチタイムを活用しているのだそうです。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

「半径3メートル」からはじめる人脈づくり

人脈を広げ、誰かと誰かをつなぎ合わせる役割——「ブリッジ」(インタビュー第2回参照)になろうと思ったら、その具体的な方法として、わたしは「アライアンスランチ」というものをおすすめしています。アライアンスとは「提携」という意味。つまり、ランチの場で人とつながっていこうというものです。

「なぜランチがいいのか」という疑問を持った人もいるでしょう。普通、人脈づくりの場としてはアルコールを伴う夕食をイメージするかもしれません。ただ、夜となると、その場の流れで二次会、三次会に行くことがどうしても多くなる。歌がうまいかどうかなんてビジネスにはなんの関係もないのに、カラオケに行くとかね(笑)。結果、長引いてしまうだけ。その点、ランチなら時間に制限がありますから、無駄な時間を費やすこともありません

では、朝食ならどうでしょうか? わたしも某大企業の社長に「毎朝8時に来てくれ」と言われてお付き合いしていたことがありますが、やっぱり朝はなかなかつらいんですよ。みなさんもやっぱり朝はなにかと忙しいですよね。となると、人脈づくりの場としてはやはりランチが最適なのです。

では、どういう人を誘うのがいいのでしょうか。まずは「半径3メートル」、ごく身近な同僚からスタートするのです。そこから、今度はその同僚の知り合いを連れてきてもらう。かつての某人気テレビ番組の企画ではないですが、芋づる式にどんどん「友達の輪」を広げるというわけです。

銀行員時代のわたしは、ちょうどバブル期だったこともあって、社内の人と「美味しいランチを食べに行こう」という会を開いていました。そこに、どんどんいろいろな人を連れてきてもらう。このときのわたしはなにも人脈を広げようなんて考えていたわけではありません。ですが、結果的に人脈の重要性に気づかされることになりました

あるとき、人を介して経理部のひとりの女性を招いたのです。この人がとにかく怖い……。もう、電話口で震え上がるほどです(笑)。でも、重要なポジションにいる人でしたから、この人を通さないといけないという案件が本当に多く、わたしもしょっちゅう怒られていました。ところが、一緒に食事をしてみると、普段の姿はすごくいい人だった。仕事では厳しいというだけのことだったのです。

このランチのおかげで、その後、その女性との仕事は本当にスムーズに進むようになりました。といっても、なにも不正をしたなんてことではありませんよ。人間は感情の動物ですから、知った仲だと相手も安心してくれる。いろいろと融通を利かせてくれるようになるのです。こうして、わたしは、その女性と社内の多くの人間をつなぐブリッジになったというわけです。

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口下手な人間こそ「主催者」になれ

人を誘うことやしゃべることが苦手という人もいるでしょう。わたしは、そういう人にこそ、人脈を広げる会の「主催者」になることをおすすめします。いわば、合コンの幹事ですね。口下手であれば、裏方に徹して、おしゃべりは他の人に任せればいいのです。

幹事がやるのは、場所などをしっかりセッティングして、参加者とまめに連絡を取り合うこと。そうすると、どういうことが起きるか? それは、幹事がさまざまな「情報」を握れるということです。いざとなったときに頼られるのは、じつはこういう人なのです。

また、口下手な人なら「1対1」での食事が苦手という人も多いはずです。その場合も、自分で話すのではなく、おしゃべりは相手に任せるのがいいかもしれません。口下手な人も少なからずいますが、多くの人は自分で話したいと思っていますし、話すことに快感を感じるものですからね。であれば、その人が求めている、関心を持っていることに関する質問を投げかけてあげましょう。そうすれば、相手はよろこんで話してくれますよ。

会話についてひとつ注意をしてもらいたいのは、「ビジネスのための人脈づくりだから」と、食事の場でビジネスの話をすることは避けたほうがいいということ。なかにはいきなり企画書を出すような人もいますが、これはNG。食事の場では、「お互いを知る」ことがもっとも重要なことだからです。企画書を出すのなら、食事の後にオフィスですればいいですよね。

これには、失礼かどうかということ以外にも明確な理由があります。人間は食事をしているときには高揚感を感じ、満腹になれば幸福感を感じるもの。逆に、おなかが減っていると人はイライラしてしまう。昼食前の会議なんて、みんなどこかイライラしていませんか? であれば、社内の人とであれ社外の人とであれ、食事をしてからミーティングなど仕事の話をすればいい。これはわたしもよく使う手法ですが、本当にスムーズに仕事が進むようになりますよ。

ここまでのわたしの話によって、「よし、人脈をつくるぞ!」と張り切っている人もいるでしょう。でも、少し待ってください。先ほど、「半径3メートル」からはじめようとお伝えしましたが、本当は「それ以前」のところからはじめるのが正解だと思います

みなさん、小学校、中学校の同級生や先輩、後輩からはじまって、これまでの人生で多くの人に会ってきたことと思います。高校、大学、社会人になって以降と考えると、数千人単位の人と関わってきたはずです。であれば、自分の興味がある分野、人脈を広げたいと思っている分野に、ひとり、ふたりの知り合いがいてもなんらおかしくありません。これまで生かせていないだけで、みなさんはとっくに大きな人脈を持っているのです。まずはこれまでの自分が築いてきた人間関係、いま自分がいるポジションを見直す。そこからはじめてみませんか?

【平野敦士カールさん ほかのインタビュー記事はこちら】
「人脈を築けない人」2つの致命的欠陥。異業種パーティーより大切にしなければいけないこと。
ヒントはYouTubeにあり。自分に強みがなくても “最強人脈” を築く方法

『世界のトップスクールだけで教えられている最強の人脈術』

平野敦士カール 著

KADOKAWA/中経出版(2018)

【プロフィール】
平野敦士カール(ひらの・あつし・かーる)
1962年4月21日生まれ、アメリカ・イリノイ州出身。経営コンサルタント。株式会社ネットストラテジー代表取締役社長。社団法人プラットフォーム戦略協会代表理事。麻布中学・高校、東京大学経済学部経済学科卒業。日本興業銀行、NTTドコモを経て、2007年、コンサルティング&研修会社・株式会社ネットストラテジーを創業。ハーバードビジネススクール招待講師、早稲田大学MBA非常勤講師、BBT大学教授、楽天オークション取締役、タワーレコード取締役、ドコモ・ドットコム取締役を歴任。著書に『プラットフォーム戦略』(東洋経済新報社)、『ビジネスモデル超入門』(ディスカヴァー21)等、監修本に『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社)、『大学4年間の経営学見るだけノート』(宝島社)など20冊以上。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。