プレゼンテーションは、サービスや商品を効果的にアピールし、聞き手に理解・納得してもらうための技法です。その要素となるのは、資料の分かりやすさ、導入部分の引き込み、話の展開、時間配分、間の取り方や身振り手振り、アイコンタクトなどです。

「資料はともかく、やり方がよく分からない」というならば、お笑いネタを観察してみてはいかがでしょう。とはいっても、ただ楽しむだけではありません。実はお笑いネタには、プレゼンテーションにも通じるワザが駆使されているのです。

吉本興業が主催する漫才のコンクール M-1グランプリ 2018 で優勝した、お笑いコンビ「霜降り明星」の“ネタ”を例に挙げて説明します。

意外に近い? お笑いネタとプレゼン

プレゼンテーションにはおおむね時間制限がありますが、お笑いネタを披露する場合も同じです。ちなみに、M-1グランプリの決勝は持ち時間が4分。その短い時間のなかで、観客や審査員を大いに笑わせなければなりません

なおかつ決勝ともなれば、面白さや斬新さはもちろんのこと、起承転結のリズムとバランス、オチに持っていくまでの時間配分など、非常に緻密な計算が必要となるはずです。

ビジネスにおけるプレゼンテーションはM-1グランプリのように「笑わせること」が目的ではありませんが、イントロダクションを行ない、話を展開させ、最後にまとめるという、話の進め方は共通する部分、もしくは参考になる部分が大いにあるでしょう。

TOEIC980点獲得! 「読むのが遅い」を乗り越えるために、トレーナーが課した意外な方法。
人気記事

1.お笑いネタとプレゼン:導入のコツ

「霜降り明星」は、M-1グランプリ決勝のイントロダクションで、多くの人が聞きなじむテレビCMの物まねでインパクトを与えたのち、「小さい頃って懐かしい」という、分かりやすくて共感しやすいテーマを掲げています。

この「注意をひきつける・分かりやすさ・共感=安心感」は、ビジネスにおけるプレゼンテーションの、導入部分にも必要です。

知的生産研究家・株式会社ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長の永田豊志氏は、多くの人がプレゼンテーションの冒頭部分で、このプレゼンを真剣に聞くかどうかを決めると説明しています。そのため、イントロダクションでは「面白そう」「気になるな」と聞き手をひきつけることが大切なのだとか。興味を失った聴衆を、後から話に引き込むのは大変だといいます。

また、プレゼンテーションの始めはアウトライン(全体像と流れ)を伝え、聞き手に安心してもらい、理解を助けることも重要なのだそう。その際、「テーマ」はなるべく短く、分かりやすいものがいいと伝えています。

「霜降り明星」の“小さい頃って懐かしい”というテーマは、非常に短くて分かりやすいので、「これからどんな話になるのか?」と考える観客の理解を助けてくれます。それでいて範囲が広いので、予測できそうで、できないというワクワク感もあるわけです。

【導入のコツ】プレゼンテーションなら?

実際のプレゼンテーションであれば、名前、所属、担当や役割などの自己紹介をしたのち、タイトルだけ聞いても、プレゼンの内容がイメージできるような短くて分かりやすいテーマを発表します。たとえば、
―――――――――――――――――――――――――――――――――
本日は、不動在庫を増やさないシステムをご提案させていただきます
―――――――――――――――――――――――――――――――――

といった具合です。ついつい提案するシステムの名前を前面に出してしまいがちですが、聞き手が深く考えなくても、どんなメリットがあるか明確になっていることが重要です。そして、その後は全体的な構成と、時間の目安を伝えます。―――――――――――――――――――――――――――――――――
本日は、最初に〇〇を、次に〇〇を、最後に〇〇という三部構成になります。所要時間は約1時間です。ご質問は最後にお伺いしますので、どうぞよろしくお願いいたします
―――――――――――――――――――――――――――――――――
こうすることで、聞き手はアウトラインや質問のタイミングが分かり、安心してプレゼンに集中できるはずです。

2.お笑いネタとプレゼン:展開と核心の伝え方

若手芸人さんらがホームグラウンドとしてきた「baseよしもと」や「5upよしもと」の劇場関係者に、上方漫才協会の中田カウス会長はこう伝えたそう。

「――『M-1』の決勝もネタ時間は4分。他の賞レースもほぼそれくらいのネタ時間。そこで勝てる漫才師を育てようと思ったら、本番よりも長い時間のネタを日ごろから作って、それを凝縮して4分にする方が絶対に濃くなる」

(引用元:AERA dot. (アエラドット)|「霜降り明星」が最年少で「M-1」王者になったワケ 中田カウスが解説 (1/3)

そのため劇場では、どんなに若手でも最低5分、長ければ10分という時間が与えられ、その時間をしゃべりきる持久力が求められるのだそう。以前は短いネタを寄せ集めていただけだった「霜降り明星」も、5分トレーニングを積むことで、ネタの濃度と精度を上げてきたそう。

そのせいか、M-1グランプリ 2018 の決勝で披露された同コンビのネタは、とても密度が高く、おおむね各30秒ごとにリズムよく展開されていました。話は「赤ちゃん誕生」から始まり→「赤ちゃんの話し始め」→「小学校の風景(授業・手洗い・転校生」→「プールの授業」→そして最後の落としどころとなる「職員室」→「歴代校長の写真」へと展開します。

ただし、オチは最後のみならず、それぞれの場面ごとにつけられており、しっかりと観客を笑わせています。そうすることで、笑わせる側と、笑う側が同じように、展開の合間のドアを開けては次に入って行くことができるわけです。

この「リズミカルにオチがついて、次の場面に切り替わる」状況は、ビジネスにおけるプレゼンテーションの展開と、核心の伝え方にも通づるところがあります。

ソフトバンク、ヤフー株式会社、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師や、UQコミュニケーションズなどで会議術の研修も行っている前田鎌利氏は、ビジネスにおけるプレゼンテーションで求められる論理展開のパターンは、

「課題」→「原因」→「解決策」→「効果」

という4つの要素が、この順番どおりに並んでいることだと説明しています。そして、この4要素を接合しているのは、以下の言葉なのだそう。

1.課題――なぜ?
2.原因――だから、どうする?
3.解決策――すると、どうなる?
4.効果

この論理的な構成であれば、聞き手が最後まで、興味を失わないのは明らかです。なぜならば、展開の都度、聞き手にわきあがるであろう疑問に話し手が答えてくれるからです。だからこそ、最後の大きな疑問と期待「すると、どうなる?」から、その答えとなる「効果」で最大に盛り上がるわけです。

それはまるで、展開ごとの「笑い」を積み重ね、最後にトントントンと進んで大きくオチをつけるお笑いネタ。展開ごとの核心を都度伝えつつ、最大の核心まで興味を引くプレゼンテーションの手法と同じなのです。

【展開と核心の伝え方】プレゼンテーションなら?

実際にプレゼンテーションで行う場合、たとえば「医薬品の不動在庫を増やさないシステムの提案(※)」だとします。

1.課題

薬局は在庫管理について常に問題を抱えている。
――【なぜ?】

2.原因

医療用医薬品は原価率が高い。しかし、医薬品だけに、ある程度の幅広い在庫を抱えることが避けられない。チェーン展開している薬局ならいいが、個人経営の薬局にとって、デッドストックのリスクは大きな痛手である。
――【だから、どうする?】

3.解決策

ある薬局で過剰在庫があれば、どこかの薬局で買い取ってもらえるような仕組み作りが必要。需要と供給が効率的にマッチングした精度の高いサービスを行う。
――【すると、どうなる?】

4.効果

デッドストックの発見と処分が可能となり、ムダや経営難を減らすことができる。
――【なるほど!】

(※この「例」で示したサービスは、株式会社ファーマクラウドが実際に提供しているサービス『Med Share(メドシェア)』を参考にしています)

3.お笑いネタとプレゼン:話の終わり方

お笑いネタでも、プレゼンテーションでも、話の最後は必ず「ありがとうございました」で締められます。プレゼンテーションならば、「以上です。ありがとうございました」「ご清聴いただきありがとうございました」という言葉が一般的でしょう。

しかし、そこに到達するまで、「あと少しで終わるな」と聞き手に感じてもらうことが大切です。

もしもジェットコースターに乗っていて、ガタンガタンと登っていく高揚感がないまま、いきなり下ってしまったら面白さは半減します。謎が謎を呼ぶミステリーで、いきなり唐突に謎解きを始められたら、物語を楽しむ間もなくラストシーンを迎えるでしょう。お笑いネタでも、ビジネスのプレゼンテーションでも、そうした聞き手への配慮が必要だということです。

たとえばM-1グランプリ 2018 の決勝で「霜降り明星」は、終盤に同じ動作を繰り返してから大きく笑いをとったあと、再度同じように別の動作を繰り返し、「再びオチがつく」ことを予感させます。それが最後のオチであることを観客も察して心構えができ、笑うことへの高揚感をより高められるわけです。

プレゼンテーションならば、「本日の提案内容を、簡単にまとめさせていただきます」といった結びになるでしょう。

その際、数多くの講師経験を持つ、一般社団法人白﨑労務安全メンタル管理センター 代表理事の白﨑淳一郎氏は、「まとめ」は一度伝えたことの繰り返しで情報としては新鮮さがないので、「“くどく”ならないよう簡潔にふれることが大切」だとアドバイスしています。

【話の終わり方】プレゼンテーションなら?

プレゼンテーションの場合も、起承転結の最後の部分となる「結び」では、聞き手に準備してもらうことが大切です。白﨑淳一郎氏は、腕時計を見て「残り5分となりました」と告げてから、まとめに入るそう。そうすることで、聴衆も話し手と同じく「残りの5分間」に安心して集中できるはずです。

***
M-1グランプリ 2018 で優勝した、お笑いコンビ「霜降り明星」が決勝で披露した“ネタ”を参考にしながら、プレゼンテーションの方法について説明しました。

1.聞き手の興味をそそり、分かりやすい「導入のコツ
2.濃度が高く、リズミカルな展開の都度オチ(答え)がある「展開と核心の伝え方
3.聞き手が最後の結びを予感できる、簡潔な「話の終わり方

で、プレゼンテーションの成果を上げてくださいね。

(参考)
ITmedia エンタープライズ|はじめに全体像――イントロダクションの基本
ダイヤモンド・オンライン|社外プレゼンの資料作成術|ビジネス・プレゼンの「論理パターン」は、たった1つマスターすればOK!
U-NOTE [ユーノート]|プレゼンで最後キレイに締める言葉:かっこよくキマる“締めの言葉”の言い方とは
MD NEXT|不動在庫マッチングで調剤薬局の収益性向上目指す「ファーマクラウド」
AERA dot. (アエラドット)|「霜降り明星」が最年少で「M-1」王者になったワケ 中田カウスが解説 (1/3)
白﨑淳一郎著(2016),『効果的な安全衛生教育 -指導・講義のコツ』,労働新聞社.