組織のなかで活躍するための思考法——“世界ナンバーワン・プレゼンター” 澤円さんインタビュー【第1回】

ビジネスパーソンはもちろん、フリーランスの人間であっても、なんらかの組織と関わりながら働いていることでしょう。組織のなかで力を発揮するには何が必要なのか——。

プログラマーとしてキャリアをスタートし、現在はマイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長を務め、プレゼンのスペシャリストとしても知られる澤円(さわ・まどか)さんが、組織に求められる人材、能力について、自身の経験を交えながら語ってくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

あきらめない「必死さ」が周囲の人間に響いた

僕の経歴はちょっと変わってるんです。いまでこそマイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長という立場にいますが、もともとはプログラマーとしてキャリアをスタートしました。そうすると、「もともと上昇志向が強かったのか」といったふうに聞かれることもあるのですが、全然そんなこともない。役職というものは与えられるものですから、それに依存するのは格好悪いことだと思っているくらいです。

もうだいぶむかしの話になりますが、就職活動のときにもその傾向がありました。ある企業から内定を頂いていたのに、「社名だけで選ぶのはなにかちがう」「僕自身が “何者か” になりたい」と急に感じ出して、大学4年の年末ころに内定を辞退しちゃった(苦笑)。そうして、卒業間際に内定をもらって飛び込んだのがある生命保険会社のIT子会社でした。そこでプログラマーになったわけです。

ただ、僕は文系出身でしたから最初は完全な落ちこぼれ……。プログラマーとしてはゼロどころかマイナスからのスタートでした。IT知識がある人間にとってはパッと理解できることでも、僕にはそうじゃなかった。そのうち、誰もがコンピューターを使う時代がやって来ると、僕のようにゼロベースではじめた人間のほうが強いという環境になったんです。かつての僕のようなIT知識がない多くの人には、僕の説明がわかりやすかったのでしょう。僕が苦労しながら知識を得てきたプロセスが、そのまま “商材” になったというわけです。

僕の場合、いまの立場に昇り詰めたというよりは、周囲の環境の変化といった運に恵まれたというところが大きかったのではないかと自己分析しています。まわりの人にも恵まれましたしね。ITなんてさっぱりわからないころにも、僕に根気強く教えてくれる先輩や同僚がいた。サポートしてくれる人が、その時代、時代に必ずいたんです。そして、僕はとにかくあきらめが悪い性格の持ち主。良く言えば継続力があるとか粘り強いとも言えますが、一度はじめたことをなかなかやめられない性分なんです。運が良かったのはたしかですが、あきらめが悪い僕の「必死さ」というものがまわりにも伝わったからこそ、彼らはいろいろとサポートしてくれたのかもしれません。

「人の役に立ったという成功体験」が成長につながる

加えて言うなら、仕事に対する僕の姿勢も影響したのかもしれない。僕の根本にあるのは、自分の立場のためだとか、会社のポジションを得るためではなく、「人の役に立ちたい」ということ。もしかしたら、まわりの人に「こいつは利己主義でやってるんじゃないんだな」とも思ってもらえたのかもしれません。

結局、「人の役に立ちたい」と思っている人間が組織では強いし、そういう会社が生き残るのではないでしょうか。マイクロソフトのミッションもそういうものなんです。「すべての人の役に立つようにテクノロジー、コンピューティングを普及させよう」というのが弊社の存在意義です。僕の考え方とすごく近いんですね。

ちょっと残念なのが、いまの時代、“ぼんやり” 生きている人たちが多いなと感じること。いくら所得が下がっているとはいえ、日本では今日食うに困るという人はそう多くないですから、なんとなく暮らしていける。決して自分勝手に生きようとしているわけじゃなくて、ぼんやりであっても生きていけるから、他者に対してなにかすることもなく、結果的に自分のことしかしていない、利己的に生きているかたちになっているんじゃないでしょうか。

ただ、そういう人のままでは、大きな成功体験も得づらいですよね。事実、バブル崩壊以降は社会風潮的にも成功体験が減っているように思います。しかも、時々ポンと出てくるすごい人はやっかみで足を引っ張られてしまう。そんな状況なので、世の中が守りに入っているように感じますね。思い切ってチャレンジをして成功体験を得られれば、「昨日の自分より今日の自分のほうがイケてる」と感じられて、さらなるチャレンジにつながるでしょう。それこそ、「他者をよろこばせることができた」という成功体験は強烈なものがある。組織に属している人間にとっても、大きな成長につながるはずです。

外の物差しを持ちあたりまえを疑ってかかる

組織で働く人間にとって大事なことのひとつは「外の物差しを持つ」ことかもしれません。僕は、社内ではマイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長であり、加えてサイバークライムセンターという別の部署にも属しています。異なる組織の人間と関わり、自分を評価してくれたり、頼りにしてくれる人もまったくちがう。

加えて、社外では琉球大学の客員教授や、いくつかのスタートアップ企業の顧問、NPOのメンターなど、さまざまな顔を持っています。そういうところでは会社の名刺は使わないし、使う必要もありません。自分単体のバリューで勝負するし、役に立とうとします。すると、肩書抜きで自分はどういう場面でどうすれば役に立つことができるのかという考え方、つまり外の物差しを持てるんです。自分の得意分野や貢献できるものを客観視できるようになるということです。それを組織に還元できるような人間は、その組織で大いに力を発揮できますよ。仮に、還元できないと感じたら転職のチャンス。だって、適性が合わないところで働いている証拠ですからね。

外の物差しを持つためには、とにかくアウトプットするしかありません。肩書は与えられるものです。どんな能力を持っていたとしても、アウトプットしなければ他人は絶対に気付きませんから。手段はブログでもTwitterでも街頭演説でもなんでもいい(笑)。アウトプットすれば、味方ができる。味方ができれば、外の物差しを持つことができ、より大きなことができるようにもなるじゃないですか。このアウトプットがどうも日本人は苦手なんですよね。「あれはしてはダメ、これもしてはダメ」という教育のせいもあって、子どものころから失敗を怖がる習慣がついてしまっていますから。少々不器用でもいいんですよ。わかりやすく他者に対して自分のパッションを伝えることこそが重要です。

また、あたりまえだと思われていることを「疑ってかかる」という姿勢も組織に属する人間には大事ですね。朝9時に出社しろと言われたら、多くの人がなんの疑問も持たずにそうしているでしょう。でも、よくよく考えたらおかしくないですか? だって、混んでるし出社するだけで疲れちゃいますよね(苦笑)。「でも、就業規則が……」と言うならば、就業規則を変えるように働きかければいい。自分や同僚がもっとパフォーマンスを発揮できて会社に貢献できる働き方があるのなら、ルールを変えてもらうよう訴えていいんですよ。働き方改革が推進され、保守的な日本の企業もようやく少しずつ変わってきています。まさに、いまがそういうチャンスですね。

■第2回『成功するプレゼンと失敗するプレゼンにはどんなちがいがある?』はこちら ■第3回『結果を導く働き方』はこちら

マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術

澤円

ダイヤモンド社 (2017)

【プロフィール】 澤円(さわ・まどか) 1969年5月10日生まれ、千葉県出身。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。2011年、マイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任。2018年より業務執行役員。2006年には十数万人もの世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman’s Award」を受賞した経歴も持つ。また、年間250回以上のプレゼンをこなす、プレゼンのスペシャリストでもある。著書に『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)など。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。野球好きが高じてニコニコ生放送『愛甲猛の激ヤバトーク 野良犬の穴』にも出演中。

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