最小限の努力で高い評価を得て、プライベートも充実させたい。誰しも、「ラクして速く」仕事を終えたいのが本音でしょう。そのためには無駄を「切り捨てる力」が必要です。無駄な仕事をいかにして洗い出すべきか。
お話を聞いたのは、著書『ラクして速いが一番すごい』(ダイヤモンド社)がヒットしている松本利明(まつもと・としあき)さん。大手外資系コンサルティング会社を渡り歩いてきた松本さんに、日本の企業の「無駄の典型」とも言われる会議についても持論を語っていただきました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子
タスク管理は「向き不向き」「成果が出るか出ないか」を基準に
みなさんはどのようにタスク管理をしていますか? 片っ端からTo Doリストに書き出して、上から順にこなしていくという力業タイプの人もいるでしょう。でも、それでは得意でもなくあまり成果も出ない仕事を無理やりやっているだけということもあるはずです。自分のパフォーマンスを最大限に発揮でき、成果につながる仕事に集中できなければ、周囲の評価はなかなか上がるものではありません。
また、「緊急度」と「重要度」を基準に頭のなかでマトリクスをつくって、タスクの優先順を決めているという人もいるかもしれませんね。でも、経営者でもなければ、会社組織のなかでは自分で優先順を決められないというのが実情です。上司の命令や営業先の要望で、せっかく決めた優先順もあっさり変えられてしまうものですよね。
であるなら、思い切ってマトリクスの基準を変えてしまいましょう。緊急度と重要度ではなく、「向き不向き」と「成果が出るか出ないか」を基準にするのです。
「向き不向き」と「成果が出るか出ないか」を基準に考えれば、周囲の緊急度や重要度に優先順が左右されることはなくなります。「向いていて成果が出る」仕事(①)は、意識せずとも「ラクに速く」できて結果も示せる「おいしい仕事」です。それを真っ先にスケジュールに入れてしまいましょう。
食事のときには好きなおいしいおかずを後に取っておいてもいいですが、仕事の場合は別。おいしい仕事を後に回してしまうと「緊急」という名目でおいしくない仕事が次々と舞い込んでしまうものですからね。成果を出しておけば、文句を言われることはありません。
このようにして、おいしい仕事を優先して素早くこなし、そうでない仕事は周囲の適任者にうまくお願いすればいいのです(『「まじめで一生懸命」は非効率! 「ラクして速く」仕事を進めるための2つの極意。』参照)。「切り捨てる」と言ってもいいかもしれませんね。
とはいえ、おいしい仕事だけをやり続けることには危険も伴います。「この人は〇〇の仕事しかできない」と周囲に思われる可能性もあるからです。そうすると、自分の評価は頭打ちになってしまう。となると、「向いているが成果が出ない」仕事(②)にも積極的に取り組む必要があります。
これらは、自分のスキルアップにつながる仕事、あるいは将来のメシのタネにつながる仕事と言えます。ライバルや後輩が力をつけてきたら、おいしい仕事も奪われてしまうかもしれません。自己投資のために、仕事時間の10%ほどを「向いているが成果が出ない」仕事に充てることをおすすめします。
無駄な会議を回避し、会議の無駄を排除する
多くの社会人にとって悩ましいのが「無駄な会議」の存在でしょう。重要な会議には3つのタイプがあります。
【出席すべき重要な会議】 1. アイデアを出す会議 2. 物事を伝達する会議 3. 意思決定する会議
単刀直入に言えば、これ以外の会議はすべて無駄です。そして、ものごとを伝達する会議でも、議事録を読めば済むようなものなら出席する必要はありません。
とはいえ、社内の立場などもあり、欠席しづらいということもあるでしょう。であるなら、もっと重要な予定を入れてしまえばいいのです。たとえば、社長との打ち合わせを入れてしまうとか、重要な取引先との打ち合わせを入れてしまえばいい。これで誰にも文句を言われることはありません。
会議の中身を見直す必要もあるでしょう。無駄な会議の多くは、ただ「おしゃべり」をしているだけのものがほとんど。それを避けるため、会議の目的やゴールを最初にホワイトボードに書き出すのです。また、会議の終了時間もついでに書き出してしまいましょう。会議というのは、開始時間は決められていても終了時間は決められていないというような、あいまいなルールでおこなわれることも多いものです。「会議の目的、ゴール、終了時間」を明確にし、ただ「おしゃべり」するだけの人を牽制するというわけです。
不満を募らせながら会議に出席するくらいなら、会議そのものを短くする努力をしてみてはどうでしょうか。
【松本利明さんのほかのインタビュー記事はこちら】 「まじめで一生懸命」は非効率! 「ラクして速く」仕事を進めるための2つの極意。 1週間の予定を月曜日に立ててはいけない理由とは?――時間に追われない「賢い仕事術」
【プロフィール】 松本利明(まつもと・としあき) 1970年12月12日生まれ、千葉県出身。人事・戦略コンサルタント。HRストラテジー代表。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサージャパン、アクセンチュアなどを経て現職。これまでに5万人以上のリストラをおこない、6000人を超える次世代リーダーや幹部の選抜・育成に関わる。そのなかで「人の持ち味に合わせた育成施策をおこなえば、ひとの成長に2倍以上の差がつく」ことを発見。体系化したそのノウハウを数多くの企業に提供し、600社以上の人事改革と生産性向上を実現する。著書に『「稼げる男」と「稼げない男」の習慣』(明日香出版社)もベストセラー。新刊は『5秒で伝えるための頭の整理術』(宝島社)』など。
【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。