あなたには、憧れている人がいますか? 有名なスポーツ選手に感銘を受けた、自分が働く業界の著名人を尊敬している、職場のできる上司がかっこいい……。誰しもそのような憧れを抱き、そして憧れの人のようになりたいと願うものでしょう。
実は、ある方法を実践すると、その願いを叶えることができます。つまり、なりたい自分になることができるのです。その方法とは「モデリング」というもの。詳しくその方法を紹介しましょう。
モデリングとは
モデリングとは、なりたい人物(モデル)の行動や思考をまねることで、その人のスキルや考え方を身につけること。ビジネス心理学とも呼ばれるNLPで用いられるテクニックです。モデルという手本がいるので、比較的短期間で結果を出すことができます。
例えば、人付き合いが苦手なことを克服したいときは、人当たりのいい友人をモデルとしてモデリングします。プレゼンがうまくいくようにしたいなら、プレゼンがうまい上司をモデルとし、あるスポーツ選手の前向きな姿勢を見習いたいと思ったら、その選手をモデリングすればよいのです。
「学ぶ」という言葉の語源は「まねぶ」、つまり「まねる」こと。何かを学びたいとき、すでに習得している誰かを手本としてまねることは有効な手段です。モデリングでは忠実にまねることが肝心なので、行動だけでなく思考までまねる段階になると難しいかもしれません。ですが「師匠から見て盗め」という言葉もあるように、ビジネススキルやコミュニケーションスキルだけでなく考え方も、モデルの行動・思考をまねることで学び身につけることができるのです。
モデリングの実践方法
モデリングは単なるモノマネではありません。モデルの行動だけでなく思考や価値観もまねていきます。ですので、モデリングを実践する前に、モデルとする人の考えや信念を事前に聞いておくとよりモデリングしやすくなります。日頃からモデルの行動をよく観察することも大切です。
では、実際にモデリングをする手順を説明していきましょう。手順は次の8つです。
1. 目標を設定する 2. モデルを設定する 3. モデルをイメージする 4. モデルと一体化する 5. 項目をチェックする 6. 自分に戻る 7. 自分自身をイメージする 8. イメージした自分通りに動く
1. 目標を設定する
モデリングによって得たいスキルや結果は何なのかを明確にします。 (例)目標:プレゼンを上達させること
2. モデルを設定する
設定した目標を達成するための手本となるモデルを決めます。 (例)モデル:プレゼンが得意な上司
3. モデルをイメージする
目の前にスクリーンを思い描き、そこにモデルを映し出します。まねたいことをしている場面を想像し、表情、動作、声などを観察するように、具体的に思い浮かべてください。 (例)上司がプレゼンをしているところをスクリーン上に思い浮かべる。どのような表情でどう話し、どのような身振り手振りをつけているかを細かくイメージする。
4. モデルと一体化する
スクリーン上のモデルの中に自分が入ることをイメージし、モデルと一体化して実際に動いたり話したりしてみます。スクリーン上で観察したモデルの様子を細かく思い浮かべながら、自分で再現してください。その際は、頑張って頭で考えてまねしようとせずに、自然になりきることが重要です。 (例)プレゼンをしている上司になりきり、プレゼンをしているつもりになって動いたり話したりしてみる。
5. 項目をチェックする
モデルと一体化した状態で、以下のことをチェックします。実際に動き、話しながら、ひとつひとつの項目に対してモデルに忠実に答えていきましょう。頭で考えるのではなく、自然に思い浮かぶ答えを大事にしてください。
・あなたは誰とどこにいますか? 周りの風景や自分の感覚はどうですか? (回答例)大きな会議室の前方で、スクリーンを背に立っている。大勢の社員が座って自分を見ている。
・あなたは何をしていますか? (回答例)新しいプロジェクトについてプレゼンをしている。
・あなたは今していることに対して、どのような能力を持っていますか? (回答例)聴衆を引きつける口ぶりで話すことができる。説得力のある説明ができる。
・あなたは何を信じ、何を大切にしていますか? (回答例)わかりやすい言葉で説明すること。大事な点を逃さず伝えること。
・あなたの使命は何ですか? (回答例)聴衆を納得させ、プロジェクトを実行に移すこと。
6. 自分に戻る
モデルの中から抜け出して、自分自身の感覚に戻ります。
7. 自分自身をイメージする
3で思い描いたスクリーンの、モデルを映し出した場所に、今度は自分自身の姿を映し出してイメージします。モデルに代わり自分が行動している様子に違和感がないかどうか確かめます。 (例)自分が上司に代わってプレゼンをしているところを想像する。
8. イメージした自分通りに動く
スクリーンに映し出した自分の姿の通りに動き、練習してみます。イメージするだけでなく行動することによってモデルに近づくべく練習を重ね、違和感がなくなるまで1~8の手順を繰り返します。 (例)自分の感覚で違和感なく理想のプレゼンができるようになるまで、練習を繰り返す。
モデリングのコツは「目標を具体的にすること」
モデリングを成功させるには、目標を具体的にイメージすることが大切です。目標は具体的であればあるほど、モデリングの実現可能性が高まります。
例えば、「何でもいいので、とりあえずおもしろいプレゼンができる人になりたい」という目標では、具体的にどうしたらいいかわかりませんよね。これが「クライアントへの新商品の売り込みを成功させるプレゼンができるようになりたい」なら、何を準備して何を話せばよいかわかります。目標を具体的にイメージすることは、それを実現するためにどうすればよいかを知るうえで大事なことなのです。
モデリングでは、実際にあなたの知っている人物を手本とします。もちろんあなたは、そのモデルのことを具体的にイメージできますね。「一番憧れている上司みたいなプレゼンができるようになりたい」と考えれば、どのような身振りや口調で話せばよいかが思い描けるはずです。
達成したときの自分の姿を具体的にイメージし、その姿に近づくよう努力するのがモデリングです。達成したときに自分がどのようになるかわからない目標を立てるより、モデリングによって具体的な人物を目指したほうが、目標にぐっと近づくことができるのです。
*** あなたが憧れているスキルは、モデリングをすればあなたも身につけることができます。「あの人のようになりたい」と思ったら、ぜひモデリングを実践してみてください。憧れのあの人が見ている景色が見えるかもしれませんよ。
(参考) 芝健太(2011),『プロが教えるはじめてのNLP超入門』,成美堂書店. 日本NLP協会|モデリング Life&Mind|仕事や人生を一気に次のステージに高めるNLPのモデリングとは ビジネス心理学|モデリングとは|NLPのテクニックであなたも憧れの人に!