ロジカルに納得させ、人生を賭けた「想い」で人を動かす——Yahoo!アカデミア学長 伊藤羊一さんインタビュー【第2回】

伝えたいストーリーの骨組みをつくってゴールを明確にすることは、大事なことだけをシンプルに伝えるプレゼンの大原則。でも、プレゼンの本来の目的は「相手を動かす」ことです。

そこで、著書『1分で話せ』が大ヒット中の伊藤羊一さんに、プレゼンで「相手を動かす」ための方法実際にプレゼンに臨むうえで心がけたいことを聞いてきました。

■第1回『人を動かすプレゼンの極意』 ■第2回『ロジカルに納得させ、人生を賭けた「想い」で人を動かす』 ■第3回『自分を導ける者だけが、優れたリーダーになる

構成/岩川悟 取材・文/辻本圭介 写真/玉井美世子

「AIDMA(アイドマ)」で整理すれば、相手の気持ちを動かせる

わたしのプレゼンの方法は、じつはマーケティングのフレームワークの「AIDMA(アイドマ)」で整理することができます。「AIDMA」は、広告や宣伝によって消費者がモノを知ってから、購入に至るまでの心理のプロセスを表しています。

A Attention(注意) I Interest (関心) D Desire (欲求) M Memory (記憶) A Action (行動)

少し長くなりますが、このフレームワークにしたがって、相手を動かすプレゼンの極意を具体的に紹介しましょう。

A スッキリ・カンタン

まず、プレゼンでは相手の注意を引くことが必要です。最初の5分だけ注目させても意味はなく、大切なのはプレゼン中ずっと注意を向け続けてもらうこと。そこで、聞き手を迷子にさせないために、言葉づかいや資料のスライド、ストーリー展開などすべての要素で「スッキリ・カンタン」を心がけましょう

たとえば、言葉はとにかく文字数を減らして、短く言い切る。「基本的に~」「~の観点で」といった余計な表現はどんどん削ってください。中学生が理解できる言葉を使うのが目安です。スライドには、ただ図表を載せるのではなく、必要な情報だけを強調した見やすいグラフに加工します。部屋の最後列から見ても、「読まずに内容が頭に入ってくる」ことを目指しましょう。

I 結論+根拠+たとえば

聞き手に関心を持ち続けてもらうには、「ウン、ウン」とうなずきを繰り返してもらえるようなロジカルな骨組みが必要です。そこで、第1回『人を動かすプレゼンの極意』で紹介した「結論+根拠+たとえば」でストーリーを伝えてください

注意したいのは、「結論」は知識や情報ではなく、知識や情報をもとにして導き出した考えだということ。ここがブレると、ピラミッド型の骨組みはつくれません。「根拠」は3つを目安に。根拠と結論の意味がつながればロジカルになるので、最後に「~だから(根拠)、~である(結論)」に当てはめて確認してください。

D イメージを描いてもらう

たとえシンプルにロジカルに伝えても、理解するだけでは動かないのが人というもの。さらに踏み込んで、聞き手が思わず目をつぶって「いいねぇ」と自分をあてはめてイメージしてもらう必要があります

そのために使えるのがビジュアル。写真、イラスト、動画などをどんどん使って、聞き手の右脳に訴えましょう。「想像してみてください」「もしこうだったら素敵だと思いませんか?」といった言葉で促したあとで、写真をスッと挟むなど、聞き手に「イメージに入ってきてもらう」アプローチもあります。

M 超一言

相手の左脳と右脳を刺激してバッチリ! と思いきや、まだ足りません。人は「いいねぇ」と心が動いても、多くの場合すぐ忘れてしまいます。

そこで、自分が伝えたいことのすべてを一言で表した「超一言」をつくってほしい。参考になるのは、商品名を覚えてもらう必要があるCM作品です。たとえば、森永のチョコボールは「クエッ、クエッ、クエッ、チョコボ〜ル♪」と、とにかく食べてと言っているだけですが、ものすごく記憶に残りますよね? 最近なら、「バイト探しはindeed」もよく残る超一言です。

A 想い

相手を動かすための技術的な要素の後に必要なのは、話し手の情熱や「想い」です。これについては後に紹介します。

このように、気づいてもらい、関心を持ってもらい「いいね」と思ってもらい、覚えてもらい、熱い想いを胸に帰ってもらう。わたしのプレゼンの極意は、この5つの要素で成り立っているのです。

プレゼンを成功させるにはひたすら練習するしかない

プレゼンには、もうひとつ大きなハードルがあります。それは、本番でうまく伝えなければならないこと。これはもう、実際に声に出して徹底的に練習するしかありません。AIDMAで準備したものはあくまでも道具に過ぎないからです。そこで、自分の声を録音して聞き、練習と改善を繰り返しましょう。

わたしはかつて孫正義さんに5分のプレゼンをするために、300回も練習をしました。これは極端な例ですが、300回もやると単語レベルで言葉が研ぎ澄まされていきます。たとえば、「『そこで』はリズムが悪いかな?」とか、「『効率的』が伝わりにくいから『スパッと』に変えようかな?」と、一つひとつの言葉が完全に自分のものになっていくのです。

そして本番前は、まるでリングに向かうボクサーのように自分で演じて集中します。わたしの知人のプレゼンの名手も、本番前はカラオケボックスにこもってひたすら低音を出すなど、みんなかっこ悪い努力をしていますよ(笑)。言いたいのは、人を動かすために「どこまでやれるのか」ということ。徹底的に考えて、徹底的に準備する。つまり、「人生で本当にそれがやりたいのか」が問われているのです。

声を出して練習して、失敗して、それでもまた練習し続ける。これは気合と根性がなければできません。もちろん、目的がない根性はダメですが、「絶対に相手を動かすぞ」という気合と「何度でも練習をやり続けるんだ」という根性。これがプロ意識だと思います。

コミュニケーションとは生き様を言葉に乗せること

そしてこのプロ意識が、AIDMAの最後のA(想い)につながっています。わたしは、これを「伝えたい言葉」があるかどうかだと思っています。伝えたい言葉がなければゴールもないわけなので、相手を動かすなんて絶対に無理。会社や上司から言われた言葉ではなく、あなたの言葉で、あなたの想いを伝えることがもっとも大切なのです。大げさに言えばこういうことです。

コミュニケーション=生き様

生き様とは人生のこと。「わたしはこう思うんだ!」ということを、自分の人生を賭けて伝えることなのです。そして、その意識を人生の「全瞬間」で思えるかどうか。なぜなら「全瞬間」考えるからこそ、それが生き様になるからです。

根性論のように思われるかもしれませんが、みんなプレゼンになるとこうした想いが抜けて、技術的な面ばかりを追いかけてしまう。でも、わたしは最終的には、「自分がふだん生きながら思っていること」をそのまま言葉に乗せて伝えるしかないと思っています。いまこうして「生き様」と言うときも、わたしは10歳のころの自分も、20歳のころの自分も全部乗せて話しているつもりです。人生を背負ってコミュニケーションをすると、自ずと言葉は力強くなるものなのです。

【Yahoo!アカデミア学長 伊藤羊一さん インタビュー記事一覧】 ■第1回『人を動かすプレゼンの極意』 ■第2回『ロジカルに納得させ、人生を賭けた「想い」で人を動かす』 ■第3回『自分を導ける者だけが、優れたリーダーになる

1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術

伊藤羊一

SBクリエイティブ(2018)

【プロフィール】 伊藤羊一(いとう・よういち) ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリスト。Yahoo!アカデミア学長。株式会社ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。1990年に日本興業銀行に入行し、企業金融、事業再生支援などに従事。2003年からプラス株式会社に勤務し、事業部門であるジョインテックスカンパニーでロジスティクス再編、事業再編などを担当。2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。2015年4月よりヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行う。かつては、ソフトバンクアカデミアに所属。孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を修めた。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目を教える他、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務めている。

【ライタープロフィール】 辻本圭介(つじもと・けいすけ) 1975年生まれ、京都市出身。大学卒業後、主に文学をテーマにライター活動を開始。2003年に編集者に転じ、芸能・カルチャーを中心とした雜誌の編集に携わる。2009年以後、上場企業の広報・IR媒体の企画・専門編集に携わりながら、月刊『iPhone Magazine』編集長を経験するなど幅広く活動。現在は、ブックライターとしてもヒット作を手がけている。

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