新年を迎え、「今年こそ勉強を頑張るぞ!」と意気込んでいる方は多いのではないでしょうか。でも、意気込むだけではうまくいかないもの。お正月に気合を入れたはいいが、結局挫折した……。そんな経験のある方もいるはずです。「今年こそ勉強しよう」という決意を無駄にしないために、1月のうちにしておくべき3つのことをお伝えします。
【その1】勉強の目標を立てる
1月中にしておくべきこと、まずは目標決めです。これは、単にやるべきことをはっきりさせるためだけに行なうのではありません。目標は、勉強のモチベーションにダイレクトに影響するのです。
心療内科・精神科の平成かぐらクリニック院長伊藤直氏によると、人の脳内では目標を達成するとドーパミンが分泌され、意欲が向上します。そのため、達成可能なレベルの小さな目標をこまめに立てて次々達成していくと、どんどんモチベーションが上がるのです。
では、目標を立てるときのポイントはなんでしょうか。経営コンサルタントで株式会社カルチャリア代表取締役の奥山由実子氏は、目標設定には「SMART」というフレームワークが重要だと言います。
- S:Specific(具体的に)
例)×「成績を上げる」
→○「テストで80点以上とる」 - M:Measurable(測定可能な)
例)×「苦手分野が得意になる」
→○「長文読解で7割以上正答できるようになる」 - A:Achievable(達成可能な)
例)×「現状の40点から、80点を目指す」
→○「現状の40点から、まずは50点を目指す」 - R:Related(関連した)
例)×「手当たり次第問題集をやる」
→○「本番に近い形式の問題集を3回ずつやる」 - T:Time-bound(時間制約がある)
例)×「いつか80点をとる」
→○「3月末のテストで80点をとる」
曖昧さをなくし、達成可能なレベルで、達成できたかどうかがわかりやすい目標にするのがポイントです。そうでないと、「達成したことにしよう」「やっぱり達成できるわけがない」などと考え、モチベーションが下がってしまいます。次々に目標を達成してドーパミンを分泌させ、「達成できた! 次も頑張ろう」という好循環を生み出せるよう、まずは1月のうちに「SMART」を意識した最初の目標設定をしてください。
【その2】勉強環境を整える
目標を立てたら、次は勉強する環境を整えましょう。受験生専門の心療内科である本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし氏によると、近年の研究で、脳は環境の影響を受けることがわかってきたそう。つまり、勉強に適した環境を用意すれば、脳は無理のないかたちで自然と勉強モードに入れるということです。
吉田氏いわく、「やるぞ!」と気合を入れるだけでは、そのうち決意がしぼんできて勉強し続けることができなくなるもの。一方、勉強する環境を整えれば整えるほど、意欲やパフォーマンスの向上につながりやすいのだとか。それゆえ、勉強を始めようとする人にとっては、いかに早く勉強環境を整えるかが肝心なのだそうです。
では、勉強に適した環境とはどのようなものでしょう。吉田氏はまず、部屋がごちゃごちゃなのはNGだと言います。
勉強に集中できる部屋づくりの鉄則は、「すっきりシンプルに!」。脳は目に入ったものをすべて情報処理してしまうため、部屋がごちゃごちゃしていると無駄なエネルギーを消費してしまうのだ。特に机周りには、余計なものをできるだけ置かないようにしよう。
(引用元:大学受験パスナビ|意欲・集中力&能率が大幅アップ! 受験に成功する“環境”のつくり方 ※太字は筆者が施した)
勉強を始める前に部屋を片づけ、余計なものは断捨離するなり、収納するなりしましょう。加えて、吉田氏による学習環境づくりのポイントをいくつか紹介します。
- 机は窓際に置く
→時々遠くを見て、脳をリフレッシュさせるため。 - 室温はやや低めで、しっかり換気する
→大量の熱を生産する脳に、新鮮な空気を供給するため。 - 照明はブルーライトを含む昼光色
→集中するため。暖色の照明だとリラックスに適した環境になってしまう。 - 本棚は科目ごとに整理
→知識を思い出しやすくするため。脳には、現実の本棚と連動した仮想の “脳内本棚” があるそう。 - 座り心地の悪い椅子を使う
→座り心地がいいと脳が “休みモード” になってしまうため。勉強中もこまめに立ち上がって動くと、脳がよく働く。 - テレビや漫画は隠す
→勉強の邪魔になるものは、目に入らないよう布で隠す。
これらのポイントを参考にして、1月のうちに、勉強に適した部屋をつくっておきましょう。
【その3】1月中に勉強を始める
最後に一番大事なことを挙げましょう。それは、1月中に勉強をし始めることです。目標を立てて、部屋を片付けて満足するだけでは、意味がありませんよね。「今年こそ勉強する!」という意気込みは、「まだ今年は12ヶ月もあるし……」という甘い考えに変換されかねません。本当に今年こそ勉強をしたいなら、いま始めるしかないのです。
これは、脳科学的に考えても確かなこと。東京大学教授で脳研究者の池谷裕二氏は、「『やる気』という言葉は、『やる気』のない人間によって創作された虚構」だと言います。
人間は、行動を起こすから「やる気」が出てくる生き物なんです。
仕事、勉強、家事などのやらないといけないことは、最初は面倒でも、やりはじめると気分がノッてきて作業がはかどる。そうした行動の結果を「やる気」が出たから…と考えているだけなんですよ。
(引用元:新R25|「簡単にやる気を出す方法を教えてください!」→脳研究者「やる気なんて存在しない」)
「やる気が出たから勉強を始める」のではなく、「勉強を始めるとやる気が出てくる」のです。逆に言えば、やる気が出るのを待っていてはいつまでも勉強を始められません。
池谷氏は、「やる気を出すにはどうすればいいのか」と考える前に、さっさと始めてしまうといいと言います。「1月は準備をして、来月から本格的に勉強を始めよう」ではなく、「勉強をしよう」と思っているいま、すぐに勉強を始めましょう。
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1月中に、目標を立て、環境を整え、実際に勉強に取りかかる。これらを実践して、ぜひ充実した1年にしてください。
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。
(参考)
医療法人社団 平成医会|ドーパミンを増やすことで得られるメリット
GLOBIS 知見録|目標設定の5つのポイント「SMART」とは?
大学受験パスナビ|意欲・集中力&能率が大幅アップ! 受験に成功する“環境”のつくり方
新R25|「簡単にやる気を出す方法を教えてください!」→脳研究者「やる気なんて存在しない」