もしも、自分に絶対合うはずだと確信していた勉強法が、やってみるとしっくりこなかったりいまひとつはかどらなかったりするのであれば、勉強法の選択の仕方に問題があるのかもしれません。
まずは客観的な視点で自分を把握し、それからあらためて勉強法を選択してみてはいかがでしょう。あれこれ悩んでいるよりも、ずっとスムーズにいくはずです。ある心理学の視点と、タイプ別の勉強法を紹介します。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
働き方改革研究所|経験バイアス(1)...経験は万能か?
Life and Mind+|仕事や恋愛、そして人生に活用できるNLPのVAKとは
勉強法を選ぶとき、経験だけを頼りにしてはいけない
たとえば、「経験で言うと、この勉強法は絶対自分に合うはず」「どう考えても、〇〇だった私にこのやり方は無理」といった具合に、過去の経験は私たちの判断を大いに助けてくれます。
しかし、それだけに頼るのは少々危険かもしれません。経験に基づく先入観が認知バイアス(認識や思考の偏り)を引き起こし、非合理な判断をしてしまう可能性があるからです。
行動経済学の第一人者で、元明治大学教授の友野典男氏によると、
経験はきわめて評価が高いものなのだが,経験はもちろん万能ではない。それどころか逆に経験がアダとなってしまい,適切な意思決定を妨げることもある。
(引用元:働き方改革研究所|経験バイアス(1)...経験は万能か?)
とのこと。「これだ!」と思っていた勉強法で成果が上がらないときは、こうした状況を疑ってみてもいいかもしれません。
そうしてある勉強法が自分には合っていなかったと判断した場合、別の勉強法を選び直すことになるわけですが――ここで大切なのは、まずは客観的な視点で自らを認識することです。
別の勉強法を求めているからといって、人に聞いてもまたそれが自分に合うとはわかりませんし、直感で選べばまた先入観が入り込んでしまう可能性があります。自分に適した勉強法を選ぶには、自分を客観的に見ることが不可欠であるはずです。
自分に適した勉強法を知る手がかりになる「優位感覚」とは
そこでさっそく、客観的な視点にはどんなものがあるか探してみました。
すると、気質、性格、脳の働き方や感覚など、いろいろな要素が見つかります。そのなかで筆者が注目したのは、心理学のNLP(神経言語プログラミング)で紹介されていた優位感覚です。
全米NLP協会公認・NLPトレーナーの足達大和氏によると、人間は五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)情報すべてを活用するが、人により無意識によく使う感覚、いわゆる得意な感覚があるとのこと。それが優位感覚です。
足達氏はこの優位感覚について、「人には右利き、左利きといった、頻繁に使う動かしやすい手があるように、その情報処理を行う際に、優位に機能する感覚がある」と表現しています。
とすれば、自分の優位感覚を知ることは、自分の利き手を把握するようなもの……?
つまり、自分が得意な感覚を知らずに、自分が不得意な感覚で勉強することは、左利きの人が、左手を使うとスムーズに作業できると気づかないまま、右手を使って苦労しながら作業するようなものなのです。
足達氏の説明を参考に、それぞれの特徴を以下にまとめてみたので、ぜひ確認してみてください。
- 【視覚タイプ】は見た情報を無意識に使う
⇒視線が上に行きやすくて早口。「観察」「焦点」「イメージ」「描く」などの視覚的な言葉を使う。デザインや外見に心を動かされやすく、絵で記憶する。結果が見えないと意欲低下。 - 【聴覚タイプ】は聞いた情報を無意識に使う
⇒視線は左右に動く傾向。論理的かつ理論的で声の調子や言葉に反応しやすい。音楽とおしゃべりが好き。「聞く」「共鳴」「響く」「調和」などの聴覚的な言葉や、「ガヤガヤ」といった擬音語を使う。 - 【身体感覚タイプ】は体感した情報を無意識に使う
⇒視線は下に動く傾向。話し方や動作はゆっくりで、居心地のよさを大事にする。「感じる」「温もり」「心が熱くなる」「胸に刺さる」「腑に落ちる」といった身体感覚的な言葉を使う。
(参考およびカギカッコ内引用元:Life and Mind+|仕事や恋愛、そして人生に活用できるNLPのVAKとは)
いかがでしたでしょう? ご自身に当てはまるタイプを、把握できましたでしょうか。
3つのタイプ別・自分に合った学習法
ちなみに筆者は【視覚タイプ】も【身体感覚タイプ】も当てはまっている気がします。つまり、【聴覚タイプ】“以外” ということ。それを知らずに以前は耳で聞く学習も行なっていました。しかし、一向に成果が上がらず……。それは自分の不得意な感覚を使って学習していたからなのですね。
なお、足達氏は各タイプに最適な勉強法のアドバイスも行なっているので、その内容も紹介しておきましょう。
- 視覚タイプ:アンダーラインを引いたり、丸で囲んだり、色でマーキングしたり、もしくは絵やアイコンを使った勉強が合う。どの場所に書かれていたかなど、記憶を映像で想起しやすいので、映像でインプットするのも効果的。
- 聴覚タイプ:音声、講演会やセミナー、会話など、耳からの学習が脳の学習効率を高める。自問しながら、論理的に整理することでも脳のパフォーマンスを伸ばせる。
- 身体感覚タイプ:書いて覚える、書いて整理する、ひたすら書き写すといった身体感覚的なアプローチが合う。講演会やセミナーでの臨場感や、講師の熱量を感じられる学び方も効果的。
(参考元:前出の「Life and Mind+」記事)
こうして見ると、【視覚タイプ】や【身体感覚タイプ】に当てはまる筆者の場合、以下のように考えることができそうです。
- 自分に合っているのは……
- 図解をしながらノートにまとめる学び方
- 吹き出しやアンダーラインなど、書き込みをしながらテキストを読む学び方
- 熱血講師によるセミナーなど、臨場感や講師の熱量を感じられる学び方
- 自分に合わないのは……
- オーディオブックを使った学び方
- セミナーの録音だけを聞く学び方
上記にあるとおり、セミナーひとつとっても、そのセミナーから何をどのように感じ取るかにによって、学び取れる度合いが変わってくるのだと気づきました。これは大きな発見です。
みなさまに合った勉強法は見つかりそうでしょうか? よろしければ、参考にしてみてください。
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いま取り組んでいる勉強法がしっくりこない方は、自分のタイプを理解したうえで勉強法を選び直してみてください。いままで苦労していたことがまるで嘘のように、グッと楽になるかもしれません……!