効率よく勉強できる人は「メタ認知能力」が高い。学習効果を上げる「4つのルーティン」を取り入れてみた

効率的に学習をしている様子

「仕事と勉強の両立が難しい。やり方が非効率的なのかな……」
「勉強が計画どおりに進まず、モチベーションが下がってきている……」

資格試験などのため日々勉強を継続しないといけないのに、あまりうまくいっていない。そんな人には「メタ認知」を高める方法が効果的です。

今回は、脳科学の観点から考案されたメタ認知を高めるルーティンのやり方とその効果を、筆者の実践例も交えてご紹介します。

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

(参考)

星友啓 (2021), 脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」, 光文社.
カオナビ人事用語集|メタ認知とは?【意味をわかりやすく】メタとは?
東洋経済オンライン|今さら聞けない「メタ認知」、学びに向かう力を育む授業4つのコツとは?
STUDY HACKER|「勉強したのに覚えられない」と悩む人向けのノート術。なぐり書きでOK「捨てノート」の効果

勉強に「メタ認知能力」が必要な理由

新学習指導要領にも明記されている「メタ認知」ですが、そもそも「認知」とは次のような違いがあります。

認知:物事を見たり聞いたり知っていたりすること。
メタ認知:「自分が認知していること」を、客観的に認知すること。

(参考:星友啓 (2021), 脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」, 光文社.、カオナビ人事用語集|メタ認知とは?【意味をわかりやすく】メタとは?

つまり、単に物事を “知っている” だけでなく、物事を “知っている” こと自体を自分自身でわかっている状態を指します。

また、大阪大学名誉教授、鳴門教育大学名誉教授の三宮真智子氏によれば、メタ認知は「メタ認知的活動」と「メタ認知的知識」に分けられるそう。さらにメタ認知的活動には「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」があり、それらが循環的に働いていると言います。

  • 「メタ認知的モニタリング」
    「認知についての気づき・予想・点検・評価など」
  • 「メタ認知的コントロール」
    「認知についての目標・計画を立てたり、それらを修正したりすること」

(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|今さら聞けない「メタ認知」、学びに向かう力を育む授業4つのコツとは?

つまりメタ認知とは、物事を “知っている” こと自体を自分自身でわかったうえで、行動したり修正したりできる状態。ですから、この能力は勉強においても重要なのです。

スタンフォードオンラインハイスクール校長で、スタンフォード大学哲学博士の星友啓氏は、勉強において「メタ認知」の能力を高めるべき理由を次のように述べています。

メタ認知は、近年「学びの科学」において最重要トピックの一つです。というのも、私たちの学習効果には色々な要因が関与しているわけですが、学習者の知性や才能が関与する割合が10%なのに対し、メタ認知能力は17%も関与しているといわれています。

(引用元:星友啓 (2021), 脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」, 光文社. )

したがって、「自分には才能がない」と嘆いている人もメタ認知能力を高めれば、勉強の成果を上げられる可能性があるのです。

自分の得手不得手を認知している女性

勉強の成果を上げる4つの「メタ認知ルーティン」

星氏はメタ認知能力を高めるため、以下4つの「メタ認知ルーティン」をすすめています。

  1. 「勉強前アセスメント」
    勉強する題材について知っていること、知らないことをそれぞれ2~3分でノートに書き留める。
  2. 「ブレインダンプ+メタ認知」
    ブレインダンプとは、学習した内容を紙に書いたり声に出したりしてアウトプットすること。その際、自信度に応じて印をつけ記録する。
    (例:〇/理解している、△/うろ覚え程度、×/知らなかった など)
  3. 「リトリーバル復習+メタ認知」
    リトリーバルとは、ノートやテキストを見ずに自分の頭だけを使って学んだ内容を思い出すこと。練習問題などを用いて復習する際に実践し、ステップ2と同様、自信度を記録する。
  4. 「学習ジャーナル」
    1日の最後にその日の勉強を振り返り、下記から2~3点にフォーカスして日記をつける。5~10分で簡単に書く。
    • 「学習前後で自分の認識やスキルはどう変わったか」
    • 「学習目標は達成できたか」、変更が必要な場合はどうするか
    • 「今日試した勉強法」に効果を感じたか
    • 「得意不得意」、「強み弱みに関し」て「感じたことはあるか」
    • 「改善点」が「あるか」、ある場合は次回どうするか

(カギカッコ内引用および参考:同上)

これらのメタ認知ルーティンは一度にすべて実践する必要はなく、カスタマイズしてもいいのです。星氏いわく、継続が大切とのこと。無理せず、できる範囲から習慣化しましょう。

「メタ認知ルーティン」を活用して勉強している男性

「メタ認知ルーティン」を取り入れて勉強してみた

筆者も、FP(ファイナンシャル・プランニング)技能検定3級の勉強をする際に「メタ認知ルーティン」を実践してみました。時短のため、一部をカスタマイズしています。

大まかな流れは、次のとおりです。

勉強前アセスメント → リトリーバル復習+メタ認知 → 学習ジャーナル

実際にはブレインダンプも実践しましたが、自信度を示す印は記録しませんでした。後述しますが、時短のために印をすべてテキストへ書いたためです。

1. 勉強前アセスメント

筆者が使用したテキストには各トピックの冒頭に要点が箇条書きで記載されていたので、時短のためにノートを使わずテキストへ自信度を示す印をつけることに。

具体的には、次のとおりです。

例)老齢厚生年金の受給資格の要点3つ
  • 特別支給の老齢厚生年金は60~64歳に支給→「〇/理解している」
  • 男性の1961年4月2日生まれから特別支給はない→「△/うろ覚え程度」
  • 加給年金は配偶者の振替加算へ切り替わる→「×/知らなかった」

2. リトリーバル復習+メタ認知

次にテキストに頼らず問題集を解き、誤答した問題や直感だけで正解した問題は解説を読んで、解説の内容を思い出しながら「捨てノート」にアウトプットしました。

捨てノートのやり方や効果については、『「勉強したのに覚えられない」と悩む人向けのノート術。なぐり書きでOK「捨てノート」の効果』をご覧ください。

捨てノートを書き終えた時点で、自信度を記録。そして、解説を読んでも覚えられなかった箇所はテキストに「×」印をつけ、重点的に復習しました。

3. 学習ジャーナル

今回、最も力を入れたのがこの「学習ジャーナル」です。

B5サイズ(罫線7mm、30行)の大学ノートを使い、個人的な判断で日付ごとに区切り線を引いています。

実際の紙面がこちら。

「メタ認知ルーティン」を実践したノートの紙面

ノートの内容を一部書き起こすと、次のような感じです。

得意不得意、強み弱みに関して感じたことはあるか?

  • 確定申告に関わるタックスプランニングは得意なようだ。

今日試した勉強法に効果を感じたか?

  • 昨日問題集で予習していたので、スムーズに進んだ。テキスト内の問題は、9割正解できた。
  • 翌日テキスト分を寝る前に予習するのを定番にしよう。

マーキングしたノートの紙面

また、過去の試験問題を解いた際のスコアなど、後日チェックするであろう箇所へは自分の判断でマーキングしました。

「メタ認知ルーティン」で、勉強法やスケジュールを柔軟に変える力が身についた!

メタ認知ルーティンを実践して感じた効果や提案したいことを以下へまとめます。

1. 学習の効率化&モチベーションの維持に役立った

今回は試験勉強中に仕事が立て込むなど、計画どおりに学習を進められない場面が多々ありました。それでもモチベーションを最後まで落とさず勉強できたのは、「メタ認知ルーティン」のおかげだったと感じています。

たとえば、「問題集は一律で3回ずつ解く」と最初に決めていましたが、得意不得意を認知したことで「得意なところは1回でも正解すればOK」というように柔軟にルールを変更。遅れたぶんのスケジュールを取り戻し、学習の効率化やモチベーション維持につなげられました。

2. 学習ジャーナルで、新しい勉強法の実践と評価を繰り返そう

学習ジャーナルを読み返す癖をつけ、新しい勉強法について実践と評価を繰り返すと、学習のいっそうの効率化につながるのでおすすめです。

筆者の場合、最初は「テキスト→問題集」の順で勉強していたのですが、ある日ちょっとした思いつきで「夜に問題集で予習→朝にテキストで復習」というスタイルで勉強してみました。

その新しい勉強法について学習ジャーナルに記録。それを数日後に読み返して再度評価したところ、「間違えた箇所だけテキストをしっかり読む方法が、自分には合っている」とあらためて認識でき、学習の効率化につながったのです。もし学習ジャーナルを書いていなければ、一時の気まぐれで勉強法を変えただけで、また元に戻してしまっていたかもしれません。

あわせて、過去の資格試験では手ごたえがあったものの、今回の勉強では自分には合わないと感じた勉強法についても記録しました。次のような感じです。

「人体の構造」と「薬が効く仕組み」といったように、章と章に関連性がある資格の勉強は、初回にテキストの通読をすることに意味を感じられた。しかし、FPのように章につながりを感じない、テキストの通読は意味がなさそうだ。

こうして学習ジャーナルに記録・保管しておけば、今後のほかの勉強にも役立つと感じました。

***
学習効果を高めるメタ認知ルーティン、ひとつひとつはそれほど難しいものではありません。ぜひできることから試してみてくださいね。

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