「たくさん勉強したのにテストの結果が悪い」
「学習したことが、なかなか身につかない」
「試験勉強が苦手で、どう克服したらいいかわからない」
このような悩みを抱えている人が鍛えるべきもの、それはメタ認知能力です。
メタ認知とは「認知していることを認知する」こと。自分自身を外から客観的に眺めている様子をイメージすればわかりやすいでしょう。メタ認知能力が高まると、「自分にはこんな傾向がある」「こんなところが弱点だ」と、長所を活かしたり短所を克服したりする方法について冷静に自己分析できるようになりますよ。
今回は、メタ認知を意識した勉強法についてご紹介しましょう。
「メタ認知」が重要な理由
自分では「勉強した」と思っていたはずなのに、いざ試験本番になったら回答できなかった……よくあるケースですよね。しかし、「知っているかどうか」と「本当に深く理解できているかどうか」は、まったく別の次元にあります。
みなさんは「ダニング・クルーガー効果」をご存じでしょうか。これは、コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが提唱した、能力の低い人物が、自らの容姿や発言・行動などについて実際よりも高い評価を行なってしまうという認知の歪みを指します。まさに、メタ認知能力が足りていないことによって生じる問題ですね。
もちろん、勉強において多少の自信は必要でしょう。しかし、「自分は勉強したから大丈夫なはずだ」「覚えているはずだ」と安易に考えるのは危険。自分が覚えたと思っていることが実際はどの程度身についているのか、もう少し冷静になって把握しなければならないのです。
では、どうすればメタ認知を意識した勉強ができるのでしょうか。
【1】「問題演習」でギャップを把握する
ワシントン州立大学とサイモンフレーザー大学の教授らは、過去の膨大な研究結果を分析し、最も効果の高い勉強方法は練習問題や模擬テストを繰り返し行なうことだという結論を導き出しています。模擬テストを定期的に行なう生徒は、そのほかの勉強方法(教科書やノートを何度も読む、など)を行なっている学生たちよりも、高い結果を出していることが判明したそう。
利点のひとつが、問題の答えを思い出す作業によって長期記憶として定着するということ。もうひとつは、問題が解けなかったときに、自分が理解できていなかったことに気づけるということです。
解けなかった問題を確認することで、勉強したと思っていたけれど頭に定着していないところがわかり、思い込みと現実のギャップを知ることができます。メタ的に自分の実力を把握し、学習し直すことで、効率的かつ効果的な勉強ができるでしょう。
【2】テスト後に「分析作業」をする
教育心理学を専門とするマイケル・アシャコウソ博士によると、テスト後に「分析作業」をすることでメタ認知能力が上がり、次回の試験のパフォーマンスを向上させる効果があるそうです。理由は、「なぜこの点数だったのか」「どの部分を理解できていなかったのか」などを分析することで、いまの勉強量や方法に対する考察ができたり、改善点を探っていけたりするから。
以下で分析の方法をご紹介しましょう。
ステップ1:事前の分析
テストを受ける前に、自分がどれくらいの点数をとれるか予想しましょう。「これくらい勉強したのだから、これくらいのスコアは出せるだろう」と、自分がどのような認識を抱いているのか確認します。
ステップ2:事後の分析
テストが終わったら、結果を見る前に、自分がこのテストに向けてどれくらい努力したのかを10点満点で評価します。その後、実際のテストの結果を確認しましょう。努力の評価は高かったのに結果が振るわなかった場合は、メタ的な認識が不足していると言えます。以下の問いかけをし、自分が想像していた実力と実際の実力の差を埋めていきましょう。
- 試験に向けてどれくらい準備した?(※もう一度自分に正直に聞いて、今後のモチベーションを上げます)
- 勉強時間はどれくらいだった?(※勉強した期間が本当に適切だったのか、また、今後はどのようにスケジュールを組み立てるのかを考えるきっかけにします)
- テストを受けている最中は、何点ぐらいとれると思っていた?
- 試験前にどれくらい努力した?(※せいいっぱい頑張ったと思えるのであれば、勉強方法が適切でなかったのかもしれません)
- 理解できていると思っていたのに解けなかったところはあった?(※実力を過信していなかったか確認しましょう)
- 勉強の情報源(授業、教科書、ノート、本、など)は何が主だった?(※どの問題を解けなかったのか、それはどの情報源から出題されていたのかをすり合わせます。それによって、どの情報源から学ぶことをもっと注力しなければならないのか把握しましょう)
- 難しかったのはどの部分?(できていないところを明確にし、次回の試験に向けてどのような対策をするのかを決めます)
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勉強しても結果が出ないときは、ちょっと立ち止まって客観的に分析してみましょう。メタ認知が得意になれば、より効率的かつ確実に結果を出せるようになりますよ。
(参考)
カオナビ|【メタって何?】メタ認知とは? 意味、2つの鍛え方、ビジネスの具体例など
Edutopia|How Metacognition Boosts Learning
Edutopia|Metacognition: The Gift That Keeps Giving
Pubmed|Unskilled and unaware of it: how difficulties in recognizing one's own incompetence lead to inflated self-assessments
Wikipedia|Dunning–Kruger effect
American Psychological Association|Covert retrieval practice benefits retention as much as overt retrieval practice
Research Gate|Rethinking the Use of Tests: A Meta-Analysis of Practice Testing
Catherine M. Wehlburg(2017),NEW DIRECTIONS FOR TEACHING AND LEARNING, United States, Wiley Periodicals, Inc.
The George Washington University|Post-Test Analysis: A Tool for Developing Students’ Metacognitive Awareness and Self-Regulation
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。