「文章力」は、社会生活を送るうえで基本的かつ重要なスキルです。きれいで伝わる文章を書ける人はやはり信頼したくなりますし、逆に文章がめちゃくちゃだと「この人は大丈夫かな……?」と敬遠したくなるもの。メールやチャットがコミュニケーションの主流となった現代では、文章力がその人の印象を左右すると言っても過言ではないでしょう。
そこで今回は、「文章を書くのが苦手……」「文章だとなぜか理解してもらえない……」と悩んでいる人のために、文章力向上のコツを5つご紹介します。
【1】ゴールから逆算して必要なことを書く
かつて進研ゼミ小論文編集長を務めた文章表現インストラクターの山田ズーニー氏は、「文章の良し悪しは目指すゴールによって違う」と述べます。たとえば、依頼メールであれば「人を動かすこと」、履歴書やエントリーシートであれば「内定」、小説であれば「感動」がゴールになるでしょう。このゴールがあやふやだと、たとえ文章そのものは整っていたとしても、結局は「自分が書きたいことしか書いていない」独りよがりな内容になってしまいます。
あなたが書こうとする文章は、最終的に誰に読まれてどうなることを目指しているでしょうか。とにもかくにも、まずはゴールを明確にし、そこから逆算して必要なことを書いていきましょう。先の「依頼メール」であれば、相手にその仕事をやってもらうのが最終ゴール。逆算して考えると、依頼を気持ちよく引き受けてもらえるように配慮して書くべきだとわかりますね。
文章が上手な人:ゴールから逆算して書いている
【2】文章を削る習慣をもつ
一気に書いて大幅に削る――博報堂スピーチライターのひきたよしあき氏は、これが中身の詰まった文章を書く極意だと言います。ひきた氏の経験上、指定された文字数の倍の長さを書いてから半分削った文章はおもしろいのだとか。たとえば、800字の出張レポートならば、まず1,600字近く書いたうえで半分は削ってしまうということです。
文章を削るコツのひとつは、なくても通じる接続詞は極力排除すること(例:「A社には断られました。しかし、B社にはご契約いただきました」→「A社には断られ、B社にはご契約いただきました」)。そのほかにも、場違いなウンチクや同じ内容の言い換えを削るなど、時には文字数が不足するまでコンパクトにしていきます。そこまでやって、文章は引き締まっていくそうです。
文章が上手な人:書いたら削って文章の密度を高めている
【3】接続詞にまで気を配る
ひきた氏は、接続詞は「方向指示器」、つまり「文章がどちらの方向に進んでいるのかを示すシグナル」だと述べます。文章がわかりにくい人は、その接続詞の使い方がイマイチ。「たとえば」のあとに具体例が来なかったり、「なぜなら」のあとに理由が述べられていなかったり、「さらに」のあとに追加情報がなかったり……。
接続詞は、そのたった数文字で「次にどんな内容が来るのか」を読者に伝えて準備させる機能をもっています。正しく使えれば文章が圧倒的にわかりやすくなる反面、使い方を誤ると途端に意味不明な文章に……。読者の期待を裏切らないためにも、それぞれの接続詞の役割を理解して正しく使えるようになりましょう。
文章が上手な人:接続詞にまで気を配れている
【4】曖昧な表現は使わない
一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗氏は、「曖昧な表現はトラブルのもとになる」と指摘します。たとえば、「お返事はお手すきの際で結構です」というフレーズ。これは一見、相手の都合を配慮しているように見えるでしょう。しかし、なかなか返信が来ないと、結局は催促のメールを送ることになります。相手は「返事はいつでもいいと言われていたのに……」と心証を害してしまうかもしれません。
こういう場合は、「◯月◯日までにお返事いただけますと幸いです」と返信期限を明記したほうが、お互いにとってベター。相手もスケジュールを意識しやすくなります。「お忙しいところ恐縮ですが」という前置きをつければ、相手の都合に配慮した表現にもなりますね。
文章が上手な人:曖昧さを避けて具体的に書いている
【5】使えそうなフレーズをストックしておく
平野氏は、文章がうまい人が使うフレーズを必要に応じてまねすることをすすめます。3つ例を示しましょう。
- ○○さんだからこそ、お願いしたいです(※全面的に信頼しているとき)
- お力をお貸しください(※ストレートにお願いしたいとき)
- 申し訳ありません。会社の方針で……(※無理な依頼を断りたいとき)
このような “殺し文句” を普段からストックしておき、ここぞというときに活用するのです。メールやチャットのなかに使えそうなフレーズがあったら、どこかにメモしておくとよいでしょう。そのまままねをするのに抵抗がある場合は、自分なりに少しアレンジして使ってみてください。
文章が上手な人:他人のうまい文章をストックしている
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5つのコツをご紹介しました。この記事を参考に、きれいで伝わる文章を書けるようになりましょう!
(参考)
山田ズーニー(2001),『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』, PHP研究所.
ひきたよしあき(2018),『博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ』, かんき出版.
平野友朗(2016),『スーパー・ラーニング 誰も教えてくれなかった ビジネスメールの書き方・送り方』, あさ出版.
平野友朗(2017),『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』, 文響社.
【ライタープロフィール】
SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。