最強の復習法「夜の5分で書き出して→朝の5分で確認する」。記憶定着・理解促進に効果あり!

夜5分と朝5分で行なう効率的勉強法01

勉強に時間を費やしているのに、思うように成果が上がらない。記憶になかなか定着しないし、勉強したはずのことが思い出せないし……。

そうお悩みの方にぜひおすすめしたいのが、「寝る前の5分」と「起きたあとの5分」を活用すること。各5分でやることは「勉強した内容を思い出す」と非常にシンプル。いつもの勉強にこのちょっとした取り組みをプラスするだけで、あなたの勉強の効率は段違いに上がるかもしれませんよ。詳しく説明しましょう。

勉強内容を記憶に定着させるには「朝と夜」が大事

上記の勉強法を提唱するのは『ずるい暗記術 偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』の著者である弁護士の佐藤大和氏です。佐藤氏はこれを「記憶出し入れ術」と呼んでいます。その具体的なやり方を紹介する前に、睡眠を挟んだ「夜」と「朝」の勉強が大切である理由を解説しましょう。

記憶力日本一に6連続で輝いた経験をもつ “記憶のスペシャリスト” 池田義博氏によると、睡眠には、1日を通じて脳に蓄えた知識を整理整頓する働きがあるそう。この話は聞いたことがある人も多いかもしれませんね。

では具体的に、脳のなかでは何が起きているのか。池田氏いわく、脳の司令塔である海馬が、断片的な情報どうしを組み合わせてその整合性をチェックし、整合性が確認された情報を長期の記憶として残しているそうです。

池田氏は、ジグソーパズルになぞらえてこう説明しています。睡眠中の脳は、バラバラに散らばったピースを組み合わせて正しい絵をつくる作業をしている。そして完成した絵(=整合性のとれた情報)が記憶として定着する、と。

日中に脳に入ってきた情報は、時間経過とともに脳の各所にバラバラに散らばります。パズルのピースが部屋中に散らばったような状態です。一方、寝る直前に脳に入った情報は、散らばることなく一か所にあり、箱に入れられたパズルピースのようにまとまった状態。どちらのパズルが完成させやすいかと言えば、もちろん後者ですよね。これが、寝る直前に脳に入れた情報が記憶として定着しやすい理由なのです。

睡眠を経て朝を迎えると、脳は記憶が整理された状態になっています。脳科学者の茂木健一郎氏いわく、朝、特に起床後の3時間は「脳のゴールデンタイム」。朝は脳が最もさえた状態であり、集中して勉強などに取り組むのにうってつけなのだとか。

つまり「夜と朝」とは、「最も記憶の定着しやすい時間帯」と「最も脳のコンディションがいい時間帯」の最強の組み合わせ。何かを勉強して覚えるには、夜と朝を逃してはならないというわけです。

夜5分と朝5分で行なう効率的勉強法02

記憶定着のためには「思い出す」プロセスが大事だ

では次に、勉強において「思い出す」ことがいかに重要であるかについても説明しましょう。

心理学者のJeffrey D. Karpicke氏とJanell R. Blunt氏が行なった興味深い実験があります。学生を以下の4つのグループに分けて勉強させ、どの程度覚えることができたかを比較してみるというもの。

  1. 1回だけテキストを読む
  2. 何度もテキストを読み返す
  3. テキストを見ずに学習内容を思い出す
  4. テキストについてコンセプトマップ(概念図)を作成する

その結果、「3. テキストを見ずに学習内容を思い出す」という勉強法をとったグループが、他グループの約50%も多く内容を記憶できていたという結果になりました。

このように、意図的に情報を思い出すことで記憶を定着させる手法検索練習といいます。上記の実験などにより、読む・書くなどの学習よりも記憶定着効果が高いことが証明されており、メンタリストDaiGo氏も著書『最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率勉強法』のなかで、効果的な学習法として推奨しています。

みなさんも、教科書や本で読むだけよりも、問題を解いたり人に説明したりするほうが、より内容が定着していく実感はありませんか? これも「勉強内容を意識して思い出す」という検索練習の効果なのです。

夜5分と朝5分で行なう効率的勉強法03

朝夜それぞれたった5分「記憶出し入れ術」とは?

それでは、具体的に「記憶出し入れ術」のやり方を解説していきましょう。まずは、佐藤氏の紹介する方法を以下にまとめます。

夜の5分でやること

  • 日付と曜日を書く
  • その日に勉強した項目や箇所を思い出しながら、時系列順に箇条書きにする

【※ポイント】

  • 復習のヒントとして、問題集や参考書のページも書いておく
  • 大きな概要から小さな項目へ、掘り下げながら思い出す
  • 全部思い出せなくてもよい。もちろん、使った問題集などを見てOK

朝の5分でやること

  • 寝る前と同様に、大きな概要から小さな項目へ掘り下げるように思い出す

【※ポイント】

  • 前夜のメモはなるべく見ない。もちろん、忘れていたら見て思い出してOK

ところでなぜ「5分」なのかというと、佐藤氏いわくズバリ「ラクをしたいから」だとのこと。もし30分もかけるとなると負担になってしまいますよね。毎日忙しくて、夜も朝も勉強する気力がない、という人も「5分」なら続けられそうな気がしませんか? 

「夜の5分で書き出し、朝の5分で確認」してみた効果

筆者も実際に「記憶出し入れ術」を実践してみました。筆者が普段行なっている、1冊の本を読み込んで覚えるという勉強のなかに、このテクニックを取り入れてみることに。使用した本は、人間の表情や動作について社会史・思想史的観点から説いた『身体の零度』(三浦雅士著)です。

なお、今回筆者は、上記の佐藤氏の手順に以下のような工夫を加えました。

  1. 「夜の5分」の復習段階で、自力で思い出せなかったものを青で記入
  2. 青で書いたものを「朝の5分」で思い出せなかったら、赤で×をつける
  3. 2日目以降のメモは「復習」の項目と「新規」の項目で分ける

なお、用紙のサイズについて佐藤氏からは特に指定がないため、枕元でも見やすいB5サイズのノートを使用しました。

それでは、3日間のメモをご覧いただきましょう!

1日目。

夜5分と朝5分で行なう効率的勉強法04

2日目。

夜5分と朝5分で行なう効率的勉強法05

3日目。

夜5分と朝5分で行なう効率的勉強法06

実践を通して実感したことは、「復習の効率と質が段違いに上がった」ということ!

まず、復習の時間を大幅に短縮できました。普段、1日90分くらいかけて復習していたところを、この方法を実践したうえで復習に取り組むと、30分でこなすことができたのです。筆者はその理由を、朝の段階で要復習ポイントを細かく明確化できたからだと分析しています。特に、色分けと記号により思い出せなかったことを可視化したのが有効でした。みなさんもぜひ実践の際は取り入れてみてください!

そして、現在の自分の理解度を把握できたのも、よい効果でした。きちんと理解した内容は労せず思い出せたのに対して、「なんとなく理解した」という程度の内容はぼんやりとしか思い出せなかったからです。記憶定着に付随して、理解の促進という効果もありました。

どんな勉強にも活かせそうですが、今回筆者が実践したような、ひとつのテーマや1冊の本にじっくり向き合うような勉強とは、とても相性がよさそうです。資格試験にむけて勉強している人や、スキルアップのために特定の分野の勉強をしている人に、ぜひやってみていただきたいです!

***
佐藤氏は応用編として、「夜5分」と「朝5分」の間隔を広げていくことをすすめています。たとえば「夜11時→翌朝7時」だったものを、「夜11時→2日後の朝7時」という具合で、1週間までスパンをのばします。それと並行して、別の新たな内容について、また「夜11時→翌朝7時」のスパンから記憶出し入れ術を実行するのです。常に複数の思い出し作業を同時に行なうことで、より記憶が強化されるそう。慣れてきたら、ぜひこちらも試してみてくださいね!

(参考)
佐藤大和(2015),『ずるい暗記術 偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』, ダイヤモンド社.
ダイヤモンド・オンライン|夜5分と朝5分で行う鉄板の「記憶出し入れ術」
東洋経済オンライン|「寝る直前の勉強」が記憶に効くこれだけの理由
プレジデントオンライン|「朝を制するものが人生を制する」は本当か
THE21オンライン|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方
Karpicke, Jeffrey D. and Janell R. Blunt (2011), “Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mapping,” Science, Vol. 331, Issue 6018, pp.772-775.
メンタリストDaiGo(2019),『最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率勉強法』, 学研プラス.
三浦雅士(1994),『身体の零度』, 講談社.

【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。

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