コツコツ頑張って勉強しているのに、覚えられない。頭に入ってこない。そんなことはありませんか? あなたの勉強、じつは「頑張り損」かもしれません。「勉強はひたすら頑張るもの」という先入観をとっ払って、楽しく、ストレスなく、どんどん覚えられる記憶術を3つご紹介します。
1. だんだん覚えていく
「1回の勉強で完璧に覚えてしまわなければいけない」と思っていませんか? その先入観をもって勉強を進めるのは、じつは非効率。効率的なのは、「だんだん覚えていく」勉強法です。
このように述べるのは、『ずるい暗記術 偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』の著者である、弁護士の佐藤大和氏です。佐藤氏いわく、1回で完璧に覚えようとする勉強の仕方と、だんだん覚えていく勉強の仕方の違いは、円と渦巻きの図をイメージすることによって説明できるとのこと。
(図は『ダイヤモンド・オンライン|「なると」の発想が、記憶力を高めていく』を参考に、筆者にて作成)
1回で完璧に覚えようとするのは、円を一気に埋めようとしているようなもの。円を完璧に描こうとするために負荷がかかるうえ、完璧な円を書けない(=完璧に覚えられない)ことで自己嫌悪にも陥りやすいのだそうです。
一方、だんだん覚えていく勉強法では、渦巻きが中心から始まり徐々に外側に広がっていくように、自分が覚えられる最小の分量からスタートし、記憶の範囲をだんだんと広げていきます。遠心力でどんどん記憶を広げていきやすいのです。
このように、1回でと決め込まず、何回も繰り返すなかでだんだん覚えていくことが、効率よく覚えるためには重要。これには、2013年の世界記憶力選手権で日本人初の「記憶力のグランドマスター」となり、記憶術に関する著書を多数出版している池田義博氏も同意見です。
池田氏によると、記憶はペンキを塗るようなもので、1回では薄くムラがあり、何回も繰り返すことで厚く均一な記憶として定着するとのこと。1回に時間をかけるより、素早く何回も繰り返し覚えたほうが確実なのです。
また池田氏は、覚える範囲が広い場合はある程度の分量に区切って、1区切りごとに復習することをすすめています。たとえば参考書が4章構成なら、1〜4章を全部終わらせてから繰り返すのではなく、1章ごとに戻って繰り返してみましょう。そのほうがより確実に記憶を定着させることができますし、1区切りごとに達成感も得られるためモチベーションも維持できるはずです。
2. 好きなものとかけ合わせる
「勉強はとことんまじめに、趣味や遊びと切り離して頑張らなければいけない」と思っていませんか? そんな決まりはどこにもありません。前出の佐藤氏は、記憶しやすくするには「好きなものとかけ合わせる」勉強法も効果的だとしています。
佐藤氏はなんと、好物の辛いラーメンを食べながら勉強していたそうです。佐藤氏いわく、勉強した内容を五感や感情と結びつけると、それらがトリガーとなって、覚えたり思い出したりしやすくなるのだとか。たとえば、歌が好きな人なら、覚えるものにメロディーをつけて歌ってみる。絵が好きな人は、覚える内容をイラストにしてみる。走るのが好きな人は、ランニングしながら聞いたり暗唱したりして覚えるなどの方法が思いつきますね。
また精神科医で受験技術研究家の和田秀樹氏も、興味・感情に訴える勉強法は有効だと言っています。和田氏は、人の記憶のメカニズムとして、「注意が向くことは覚えやすい」「感情をともなう記憶は忘れにくい」と言います。ですから、「つまらない、面倒だ」と思いながら、内容を頭に叩き込む勉強は非効率。「面白い! 楽しい!」と思える方法で勉強することが、記憶力アップの近道なのです。
じつは筆者自身も、大学受験の日本史の勉強で、この方法を実践していました。筆者は、単語単位での暗記が苦手な一方、自分で文章を書いたりものづくりをしたりすることが好きだったため、オリジナルの日本史年表を編集したのです。すると、それまで苦しかった日本史の勉強が一気に楽しくなり、どんどん頭に入るようになりました。ほかには、日本史をドラマチックに扱ったテレビ番組を視聴し、興味と愛着を深めたことも効果的だったと実感しています。自信がつき、第一志望に合格することができましたよ。ぜひみなさんも実践してみてください。
3. ほかの人に話す
「勉強は、ひとりでひたすら机に向かって頑張るべきものだ」と思っていませんか? もちろんひとりで取り組む勉強も大事。ですが、ひとりでやっていても覚えられないときには、自分ひとりだけの環境を飛び出して「ほかの人に話す」勉強法がおすすめですよ。
記憶力がいい人は、よくほかの人に話をしている――こう言うのは、教育デザインラボ代表理事で教育評論家の石田勝紀氏です。石田氏は勉強指導の際、最後に必ず生徒に自分で説明させるそうです。石田氏いわく、人に説明するときは、自然と「何回も繰り返して」思い出すことになるのに加え、「感情をともなって」会話をするので記憶の定着率が一気に上がるのだそう。
なお、人に説明する際には、参考書などを見ながらではなく、頭で思い出して自分の言葉で説明するのが効果的。アメリカの心理学者のアダム・グラント氏が、こんな実験結果を紹介しています。被験者らは授業を受けた後、授業ノートを見ながら人に教えるグループと、ノートを見ずに人に教えるグループに分かれます。そして1週間後にテストを受けたところ、ノートを見ずに教えたグループのほうが成績がよかったのだそう。自分で人に説明することで、記憶が自分自身のものとして定着したことがわかります。
ひとりでただ参考書とにらめっこする勉強は非効率です。勉強したことを、家族や友人に説明してみてください。直接会えないときは、オンライン上で行なうのでもいいでしょう。ひとりで勉強するよりも格段に記憶の効率がアップしますよ。
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最初から完璧を目指さなくていい、「好き」を勉強に取り入れていい、ひとりで勉強するより誰かと話すほうがいい。「孤独にひたすら机に向かい、コツコツ頑張るべきだ」といういままでの非効率な固定観念を捨て、楽しくて効率的な勉強に挑戦してみましょう。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|「なると」の発想が、記憶力を高めていく
ダイヤモンド・オンライン|脳にとって、全範囲終わってからの復習は非効率
ダイヤモンド・オンライン|記憶競技で生み出した速習法
ダイヤモンド・オンライン|自分の「長所」と「好きなもの」を利用して、自分だけのオリジナルの勉強法を生む
大学受験パスナビ|[暗記下手を完全克服!]和田式 受験暗記術
東洋経済オンライン|記憶力がいい子は「3つの技術」を使っている
The New York Times|How to Improve Your Memory (Even if You Can’t Find Your Car Keys)
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
早稲田大学文化構想学部在籍。福岡県筑紫女学園高校出身。高校時代から文芸部に所属し、小説を書いている。現在大学では、文芸・ジャーナリズム論系に進むためテクスト論を中心に日々勉強中。