キャリアアップを実現するため、勉強に意欲を燃やすビジネスパーソンは少なくないはず。しかし、仕事の成果につながらない、あるいは効率が悪い勉強のために、忙しい日々の時間を割くのはもったいないことです。「ちゃんと稼ぎたい大人が、やってはいけない勉強法」を7つ紹介しましょう。
1. 学ぶ視点について
作家・教育コンサルタントの小林正弥氏は、仕事の成果を出して収入を増やしたいなら、自分の知識量を増やすだけの勉強では、あまり意味がないと述べます。
なぜならば、金銭をもたらすのは自分ではなく、顧客や取引先、あるいは上司であるから。自分ではなく顧客らを起点に据え、彼らの視点で学ぶことが重要とのことです。つまり、稼ぎたい社会人の勉強は、顧客らのメリットにつながる必要があるわけです。
たとえば顧客の目が海外に向いているなら、海外市場や経済・語学の勉強を学ぶ。あるいはデジタル化に向いているなら、ITスキルを学ぶといった具合です。小林氏いわく、顧客らの利益を生まないかぎり、本を読んでもセミナーに参加しても、収入は増えず勉強代だけがかさんでしまうとのこと……!
2. セミナー参加において
また小林氏は、講師の話を “ただ聞くことだけ” が目的でセミナーに出向くのは、効率が悪いと述べます。セミナーで講師に質問し、フィードバックを受けてこそ、効率的な勉強になるのだとか。学生と違い、社会人には勉強の質問に答えてくれる先生が近くにいません。講師と関われるせっかくのチャンスを、活かさない手はないのです。
一方的に提供される知識や情報を得たいだけなら、書籍やオンライン講座ですむので、わざわざ移動時間をかけてセミナーに出向くこともないと小林氏。
セミナーに参加するのであれば、ある程度まで勉強が進んだ段階で参加し、講師に(自分では解決できない課題などの)質問を投げかけるといいそうです。質問するからには、それなりに勉強していくことも必要なので、ダブルの効果があるのではないでしょうか。
3. 学習スケジュールについて
忙しいビジネスパーソンが、毎日一定のまとまった勉強時間を確保するのは難しい。それなのに「今日から毎日〇時間は勉強する」などと1日のノルマを自分に課すと、できなかったときに失敗体験だけが残ってしまう――。
そう語るトライオン株式会社代表取締役の三木雄信氏(ソフトバンク 元社長室長)は、1週間単位で勉強のスケジュールを回し、帳尻を合わせていくのがベストだと述べます。7日間をひとまとまりとし、たとえば「水曜日は勉強できないから、代わりに金曜日の学習時間を増やそう」といった具合で調整するのです。
ちなみに、学習スケジュールの単位は長すぎてもよくないそう。アメリカの心理学者ジョージ・ミラー氏は、人間の短期記憶の限界が7つ前後であることを発見しましたし(「マジカルナンバー7±2」と呼ばれる)、経営学においても、上司ひとりが管理できる部下の数は、7人くらいまでと言われるそうです(スパン・オブ・コントロールの原則)。何かと人間には「7」がちょうどいいのですね。
4. 学習時間の確保について
また三木氏は、スキマ時間も学習スケジュールにきっちり組み込むようすすめています。何かの待ち時間や、アポイントの合間など、ちょっとした空き時間はたくさんあるはず。1回のスキマ時間が15分程度だとしても、それが積み重なれば、1時間くらいの学習時間はすぐ確保できると同氏は言います。
また、たとえ細切れでもスケジュールに組み込めば、「自分は必要な学習時間をこなせる」といった自信につながるとのこと。
逆に、「1〜2時間くらい集中して勉強しなきゃ(意味がない)」と決めつけてしまうと、結局は「仕事が忙しくて勉強する時間がない」などと、くじけることになるそう。スキマ時間をあなどると、大きな損失が生じてしまうのです。
5. 学ぶ目的について
作業療法士の菅原洋平氏によると、ある研究で、文字を入れ替えて別の意味の言葉にする “アナグラム” を練習したあと、同じくアナグラムのテストをする実験が行なわれたそうです。
その際、ひとつのグループは「テストと同じ文字列のアナグラムを繰り返し練習」し、もうひとつのグループは「テストと “違う” 文字列でアナグラムを練習」しました――すると、1回目のテストでは同じ文字列で練習したグループのほうが高い成績でしたが、2回目、3回目になると、違う文字列で練習したグループのほうが高い成績になったそう。
この結果の違いは、「テスト勉強をして、直近のテストの点数を稼ぐこと」と、「あらゆる条件で学び、活動能力そのものを高め、いい影響を持続させること」の違い、とも言えるのではないでしょうか。学生時代は前者でいいかもしれませんが、社会人には後者が必要です。
そもそも仕事では、テスト問題よりもずっと複雑な事例を、たくさん扱わなければならないと菅原氏は言います。社会人の勉強は、ひとつに集中するのではなく、さまざまな分野を学び、仕事力を底上げしていけるかどうかがポイントというわけです。
6. 資格の活かし方について
グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長の村尾佳子氏は、ビジネスにおける社会人の市場価値とは、「能力」と「実績」の掛け合わせであると説きます。資格は能力の有無を証明するけれど、市場価値を高めるには、その能力を使って結果を出す必要があるとのこと。つまり、資格をとっても実績につながらなければ、ムダになってしまうのです。
だからこそ村尾氏は、スキルアップを目指して資格を取得しようとする前に、自分がどうありたいのか、何をしたいのか、そのために必要なことは何か、よく調べたうえで行動を選択していくのがいいと述べます。
資格さえあればなんとかなる――の発想を手放し、その資格を武器に社会で活躍する自分を、細部まで想像してから勉強に取りかかりましょう。
7. 勉強する分野について
村尾氏は、「この専門性だけで生きていく」といった考えも、非効率な学びのパターンだとしています。ひとつの専門に偏ると、ある特定の分野では能力を発揮できても、ほかの場面では力を弱めてしまうからです。
つまり、限られた専門性がむしろ弱点を生むということ。昨今の状況で言えば、これまでは専門性をアピールできていた分野がAIにとって代わられることだって、十分にありえます。これまでの内容にも通じることですが、社会人は何事も多角的に学んでおくことが大切ですね。
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大人がやってはいけない勉強法7選を紹介しました。よろしければ参考にしてみてください!
(参考)
新R25|「1つの勉強をじっくり」VS「違う勉強を同時進行」…脳をうまく使った効率的な勉強法は?
Precious.jp|お金と時間をドブに捨てる!仕事のできる人は絶対やらない「NG勉強法」6選
グロービスキャリアノート|結果的に非効率な学びに!良くない自己啓発パターン3つ
東洋経済オンライン|社会人でも「勉強を続けられる人」がしていること
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STUDY HACKER 編集部
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