認知科学者がすすめる「本当に効率のよい」勉強方法。重要なのは◯◯という作業だった!

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私たちは、学校のテストや受験勉強、資格の取得など、あらゆる場面で勉強の成果を試されてきましたよね。しかし、みなさんは本当に効率的な方法で勉強できているでしょうか?

今回は、『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』(NTT出版)を参考に、3名の認知科学者たち(ヘンリー・ローディガー氏、マーク・マクダニエル氏、ピーター・ブラウン氏)がすすめる効率的かつ効果的な勉強方法を3つピックアップしてご紹介しましょう。

1. 自分に出題する

教科書を最初から最後まで流し読みしていませんか。認知科学者のすすめる科学的に効果のある学習方法は「自分に出題する」こと。教科書を読んでいる途中で、自分に問いかけるクセをつけるのです。

これは、教科書に限らず、本やオーディオブックなど、ほかの学習資料にも適応できます。たとえば、仕事に役立ちそうな本を読んでいるとしましょう。15分ごとにいったん読書を止めて、自分に次のような質問を投げかけます。

  • いま読んだ箇所のポイントは?
  • 私にとって新しい発見はなんだった?
  • 今後の人生(もしくは仕事や勉強)でどのように活用できそう?

質問は、勉強している内容に沿って適宜変更してかまいません。ここで重要なのは、問いかけることで「思い出す作業」をするということ

人の脳は、常に覚えたことを忘れていきます。私たちは、学んだあとに思い出す作業をしなければ、習ったことを急激なスピードで忘れるのです。認知科学者のアート・コーン氏によると、人は新しく覚えたことを1時間で約50%忘れ、1日で約70%忘れ、1週間経つと90%程度は忘れてしまうのだとか。

しかし、「自分に出題する」ことで、すでに忘れかけている情報を思い出す作業ができます。自分の記憶を探り、覚えた内容を呼び起こすことで、知識が頭に残りやすくなり、忘却のスピードを遅らせることができるのです。

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2. 間隔を空ける

期末テストの前日に一夜漬けで勉強するタイプと、数週間前から「1日30分テスト勉強しよう」などと決めてコツコツとやるタイプ。みなさんはどちらですか。前者のように、一度にたくさん詰め込むタイプの勉強は、たしかに短期的には記憶に残るでしょう。しかし、長期記憶に残したいのであれば、後者のように間隔を空けて学習するスタイルがおすすめです

これは、エビングハウスの忘却曲線と密接に関係しています。人の脳はたった24時間で約70%も忘れてしまいますが、少し時間を空けてから思い出す作業(復習)をすることで記憶が定着しやすくなり、忘却曲線がなだらかになるのです。

どれくらい時間の間隔を空けて何回復習するかは、勉強内容のボリュームや与えられた時間によって調整しましょう。たとえば「テストまで2日しかない」という場合は、前日の夜に2時間勉強するよりも、「2日前に1時間」「前日に1時間」と分けたほうがよいでしょう。さらに、もし時間があれば、30分勉強したあとに、少し休憩を挟んでからもう30分勉強したほうがより効果的です。

一方で「資格試験まで半年ある」といった場合は、項目ごとに、学んだ1日後に復習し、次は1週間後、次は1ヶ月後……と、復習するタイミングを徐々に広げていくのがいいでしょう。思い出す作業を積み重ねるたびに、忘却曲線がなだらかになり、覚えたことを忘れにくくなるので、復習の間隔を伸ばしていくことが可能になります。

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3. インターリーブ学習法

最後にご紹介するのは、同時に複数のことを勉強する、もしくは同時に複数の勉強方法を実践する「インターリーブ学習法」です。

これは、語学、数学、歴史などのあらゆる勉強に加え、スポーツや音楽、車の運転など、座学以外のあらゆる学びに効果的なメソッドです。インターリーブ学習法により、習ったことが記憶に定着しやすくなり、新しいスキルの習得スピードが上がるということが複数の研究によって証明されています。

学術誌「Journal of Educational Psychology」に掲載された研究では、126人の学生が被験者となり、3ヶ月間数学の勉強をしてもらいました。1つめのグループは「Aの勉強をしたらAに関する問題集を解く」「Bの勉強をしたらBに関する問題集を解く」というように【ひとつの教科書を最初から最後まで順番通りに学んでいく方法】で、2つめのグループは「AとBとCの勉強をし、それらの知識を必要とする問題集を解く」というように【複数の項目を並行して学ぶ方法(インターリーブ学習法)】を学習に取り組みました。その結果、後者のほうが成績がよかったそうです。

この理由は、多面的な知識を形成できるから。つまり、複数の事柄を並行してインプットすることで、「どの情報を引き出せばこの問題を解けるだろう」「どの方程式を組み合わせればよいだろう」と考えることが可能になるのです。インターリーブ学習法は、学習したことへの理解や問題を解くノウハウを深めるメソッドと言えるでしょう。

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3つの効果的な勉強方法をご紹介しました。効率的に勉強したい人や、学んだことを仕事に活かしたい人は、ぜひ試してみてくださいね。

(参考)
ピーター・ブラウン著,ヘンリー・ローディガー著,マーク・マクダニエル著,依田卓巳訳(2016),『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』,NTT出版.
Science Direct|Inexpensive techniques to improve education: Applying cognitive psychology to enhance educational practice
Sage Journals|Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology
Harvard Health Publishing|4 science-backed ways toward better learning (Hint: drop the highlighter)
Learn Upon|5 Ways to Challenge the Forgetting Curve
Medium|6 Ways to Overcome the Forgetting Curve
Sage Journals|Recent Research on Human Learning Challenges Conventional Instructional Strategies
Science Direct|Learning one task by interleaving practice with another task
APA|Contextual interference effects on the acquisition, retention, and transfer of a motor skill

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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