授業やセミナーのノートを読み返しても、内容がごちゃごちゃで復習に役立たない……。
そもそも、ノートに書いた内容を覚えるのが苦手だ……。
そんなお悩みは、ノートを「分割」するという工夫で解決できるかもしれません。今回は、勉強効率を上げる “分割ノート術” をまとめました。シンプルなものばかりなので、ほかのノート術に挫折経験がある人もぜひご一読ください。
【1】2分割して「板書・メモ」を書く
せっかくセミナーに出ているのだから、ひとつでも多くのものをもち帰りたい。そう意気込んで、講師や参加者の発言を片っ端から書いた結果、なにが重要な情報なのかわからなくなってしまった……。そんな経験はありませんか?
ノートがごちゃごちゃになるほど熱心に書きすぎる人におすすめなのが、「メモスペースノート」。
これは、東大医学部生で『東大生のノートから学ぶ 天才の思考回路をコピーする方法』著者の片山湧斗氏が、同書のなかで紹介しているノート術です。「授業を受けながら情報が整理されたノートをとることができ」るメリットがあるとのこと。(カギカッコ内引用元:片山湧斗(2021),『東大生のノートから学ぶ 天才の思考回路をコピーする方法』, 日本能率協会マネジメントセンター. また以下枠内は同書よりまとめた)
ノートを縦に2分割(右3分の1あたりで線を引く)し、授業中に、それぞれのスペースに以下のとおりに書き込みます。
- 左側:板書、授業で説明される大まかな流れ
- 右側:メモ(こぼれ話、気になったこと、先生の雑談、関連事項など)
そして、授業後は、板書とメモを矢印で結ぶのです。
たとえば、アイデア発想法の講義を受けたとしたら――左側にはフレームワークや発想の手順を、右側には講師自身の実務での使用例を書く。そして、左右のスペースで対応するものどうしに矢印をつける――といった具合です。
筆者もちょうど、ウェブデザインの入門者向けセミナーを受ける機会があったので、実践してみました。
まず、“授業を受けながら、整理されたノートをとれる” という効果は確かだと感じました。筆者はこれまで、メインの説明のほか、人名、ツール名、エピソードなどを一緒に書いてしまい、ノートが非常に見づらくなる……という問題を抱えていたのですが、それが解消されたのです。
また、このメモスペースノートは復習で真価が発揮されると感じました。というのも、授業後に板書とメモを矢印で結ぶ際、情報どうしの関連づけが行なえるからです。
脳科学に基づく受験指導を行なう医師の吉田たかよし氏いわく、「他の知識と関連づけて覚えると、覚えやすく思い出しやすいが、知識単体で丸暗記すると、たとえ記憶できたとしても使えない知識になってしまう」。(引用元:大学受験パスナビ|《吉田たかよし先生が解説!》記憶と思考の脳科学的メカニズム)
板書とメモを矢印で結ぶ過程は、まさしくこの関連づけを行なっているにほかなりませんよね。
また、片山氏が「復習時に気がついたこと、疑問に感じたことはメモ欄に追加で記入しておくと、より情報が充実したノートになります」と述べていました。それをふまえ筆者も、セミナーの内容を思い出しながら、自分がすでにもっている知識や、気になって調べた情報をノートに追加。すると、学んだ内容をより記憶に残すことができたのです。(カギカッコ内引用元:『東大生のノートから学ぶ 天才の思考回路をコピーする方法』)
つまり、メモスペースノートで勉強すれば、
- ノート上を自然と整理できるので、大事なポイントを把握しやすい
- メインの情報と補足情報の関連づけがしやすいので、記憶に残る
わけです。シンプルに2分割するだけなのにメリットが大きいノート法だと言えるのではないでしょうか。
【2】3分割して「板書・気づき・深掘り結果」を書く
勉強しても記憶することに精いっぱいで、アイデアや気づきを得られない……。
勉強した内容をとにかく覚えておけない……。
こんなお悩みに効果を発揮するのが「3ステップノート術」。記憶力日本一に6度輝いた経験をもつ池田義博氏が提唱するもので、「情報を書き写しつつ、浮かんだ思考も同時に書き込める」というメリットがあるそうです。(カギカッコ内引用元:池田義博(2022),『 世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法 』, 日本能率協会マネジメントセンター. また以下枠内は同書よりまとめた)
ノートの見開きを縦に3分割(左のスペースを広めに確保)し、各欄は以下のルールで使います。
- 授業中に書く
左側:板書、スライドの内容
真ん中:アイデア、疑問、気づき - 授業後に書く
右側:真ん中に書いた疑問について調べた結果や、アイデアを深掘りした結果
この3ステップノート術は、脳の「ワーキングメモリ」という機能に則したノート術です。
池田氏いわく、ワーキングメモリとは「思考するときに参考情報をメモ帳のように留めておく脳の機能」のこと。授業中には、「浮かんだ疑問やアイデアを頭の中に留めておきつつ、授業や講義の内容を理解するために過去の記憶との照合作業なども行っている」そうです。(カギカッコ内引用元:同上)
ただ、このワーキングメモリは容量が少なく記憶できる時間が短いために、以下のような問題もあるとのこと。
授業や講義中に何か考えが浮かんだとしても、そこに新しい情報が提供されれば、ワーキングメモリの情報が上書きされてしまうのです。もしかしたら、その思考の中に素晴らしいアイデアの原石があったのに、流れていってしまったかもしれません。
(引用元:同上)
そこで必要になるのが、浮かんだ疑問やアイデアを忘れてしまわないための対策です。その対策として、3ステップノート術では、板書などの情報と、アイデア・疑問を、別々の欄に同時に書き込めるようにしてあるわけです。
さらに一番右に、調べたり深掘ったりした結果を書き込むスペースが設けられているのには、こんな理由が。
こうすることによって、情報を受け身の状態で取り入れるのではなく、情報にアクティブに関わることになります。単なる授業や講義の記録ではなく、(中略)「エピソード記憶」を体現した情報ノートに変わり、より強く記憶に定着できるようになるというわけです。
(引用元:同上)
※エピソード記憶:自分が経験したことの記憶。長く残りやすい。
実際に上記の効果を得られるか確かめるべく、筆者も3ステップノート術を実践しました。『トラウマ類語辞典』(フィルムアート社)という本の読書記録として活用したものが以下になります。
実践してみると、本を読みながらも、じつはたくさんのことが頭に浮かんでいるということに気づきました。いままでの読書では、気づきやアイデアを数多く取りこぼしていたのかもしれない……と感じ、書きとめることの大切さを痛感しました。
筆者がポイントだと思ったのは、ノートのきれいさをあまり気にしないことです。それよりも重視したほうがいいのは、頭に浮かんだことを、浮かんだ瞬間に書き落とすこと。頭がスッキリし、アイデアや気づきがさらに生まれるというよい循環を生み出せると感じましたので、ぜひ意識してみてください!
【3】12分割して「勉強の振り返り」を書く
頑張って勉強しているが、日々こなしていくだけで手いっぱい……。
復習の大切さはわかっているけれど、もっと効率よくやりたい……。
こう悩む方には「リフレクションノート」をおすすめしましょう。グローバルリーダー育成を手がけるジーエルアカデミア株式会社の代表取締役、塚本亮氏が提案するノート術です。
“リフレクション” とは “振り返り” のこと。塚本氏は「1日5分の振り返りがモチベーションを上げる仕組み作りには最適」と述べ、「改善を重ねていくには最適なツール」だという理由から “PDCA” をアレンジした以下のノートを推奨しています。(カギカッコ内引用元:塚本亮(2018),『「すぐやる人」のノート術』, 明日香出版社. また以下枠内は同書よりまとめた)
ノートをマス目状に12分割し、各枠に以下のことを書き込みます。
- D:起きた出来事
- C:気づき
- A:改善案
- P:いますぐできること
「どこがうまくいかなかったかな?」と勉強したことを振り返れば→「ここを復習しよう!」と洗い出せて→復習を行ないやすい。そんなサイクルが、勉強のモチベーションアップにもつながるということ。
上記をふまえて、こちらも筆者のほうで実践してみました。
実践してみると、翌日の復習が段違いにはかどりました。それまでの筆者は、「今日は何を勉強しよう」と考えることから始まり、「あ、あの本を読もう!」「昨日の復習もしなくちゃ!」などとやりたいことや時間配分も散らかって、結局勉強がはかどらない……といことが多々。ところが、リフレクションノートを導入してみると、やることに悩む時間がなくなり、勉強しながら「あとこれくらいやろう」と思えて、勉強に集中できたのです。
また、次々に新しい勉強に手を出す癖があったのですが、リフレクションノートのおかげで復習のほうに意識が強く向き、時間も復習に多く割くようになりました。結果的に、学習内容が記憶に定着しやすくなったと思います。
本を読んで勉強するときはもちろん、たとえば新しい仕事を理解するのに手いっぱいなときなどにも効果的ではないでしょうか。
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シンプルでありながら効果が絶大な3つの分割ノート術を紹介しました。無理なく続けられそうなものを、ひとつでも取り入れてみてくださいね!
(参考)
片山湧斗(2021),『東大生のノートから学ぶ 天才の思考回路をコピーする方法』, 日本能率協会マネジメントセンター.
大学受験パスナビ|《吉田たかよし先生が解説!》記憶と思考の脳科学的メカニズム
池田義博(2022),『 世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法 』, 日本能率協会マネジメントセンター.
アンジェラ・アッカーマン著, ベッカ・パグリッシ著, 新田享子訳(2018),『トラウマ類語辞典』, フィルムアート社.
塚本亮(2018),『「すぐやる人」のノート術』, 明日香出版社.
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。