勉強前の “たったひと手間” で、脳は格段に学びやすくなる。「最高の予習」2つの方法

最高の予習01

「講義を聴いても頭に入りにくい……」
「教科書を開いても理解に時間がかかる……」
「勉強する内容に興味をもてない……」

もしこのように悩んでいるのなら、あなたは勉強する前の準備が充分ではないのかもしれません。なかには、復習は欠かさずにしているが、予習を重要視したことはなかった、という人もいるはず。科学的な根拠のある予習ポイントを押さえれば、勉強の質は向上させられますよ。

今回の記事では、「最高の予習」をするために守るべき、2つのルールをお伝えいたします。

勉強における「予習」の役割とは

そもそも、予習の役割とはなんなのでしょうか。まず、予習をするかしないかで違いが表れるのが、勉強の「理解度の差」です。認知心理学の研究で、予習は理解度を高めるために有効だと示されています。これは特に、数式や単語などを丸暗記する勉強よりも、用語の意味や概念をとらえながら理解を深めていく勉強に当てはまること。

アメリカの心理学者であるディヴィッド・オーズベル氏の研究論文によると、事前に学習内容の概略を知ることが理解の促進につながるとのこと。同氏が実験で、仏教について学ぶアメリカ人学生に対し、学生にとってより身近なキリスト教との類似点や相違点をあらかじめ提示したところ、彼らの学習効果が高まったのだそう。

さらに脳科学的な観点からは、「脳に記憶が定着しやすくなる」という点も、予習の効果として挙げられます。このメリットを説明するのは、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏。瀧氏によると、脳には「知っているものを好む」という性質があるのだとか。

脳には「ファミリアリティ」という性質があります。これは簡単にいえば「知っているもの=好きなもの」 と認識する性質です。予習をしておくと、脳は「それを知っている」と判断し、「好き嫌い」を感じる脳の部位「扁桃体」に「好き」という感情が湧き起こります。

(引用元:東洋経済 ONLINE|私たちは「大人の脳」の使い方を知らなすぎる

扁桃体は記憶をつかさどる海馬の近くにあり、両者は相互に関連し合っています。扁桃体で好感情が湧くと、それが海馬にも影響を与えるため、より覚えやすくなるのだそうです。

反対に、「嫌い」だと感じることは記憶にとって逆効果。瀧氏によると、「嫌だ」と感じることによってストレスホルモンが分泌されると、ともに記憶に関係する海馬や前頭前野の細胞が萎縮してしまうのだそう。

たとえば、事前知識のないまま講義に臨むと、わからない単語が飛び交い、退屈に感じることもありますよね。ですが、あらかじめさらっと教科書に目を通しておけば、講義中に聴く話は「読んだことがある」「知っている」ものになります。親しみが感じられ、関心の度合も変わってくるはず。知識の下地があれば、勉強に前のめりになれるのです。

このように、予習は「理解度」と「定着度」を確実に高めます。普段の勉強に予習というひと手間を取り入れるか入れないかで、大きな違いが生まれることは間違いないでしょう。

最高の予習02

【最高の予習法1】全体像をつかむ

先ほど、事前に学習内容の概略を知ることが理解の促進につながるという研究結果をご紹介したように、予習で大切なのは全体像を把握することです。

脳科学者の中野信子氏によると、全体をつかんでから細かな知識を肉づけしていくことにより、知識が有機的に結びついていくのだそう。というのも、脳はストーリー化された記憶を定着させやすいという性質があるから。そのような記憶を「エピソード記憶」と呼びます。

あらかじめ全体を見渡しておくと、頭のなかで学習内容のおおまかなストーリーがつくられます。すると、本格的な勉強に入ったあとで「いま勉強しているこの項目は、あの項目とつながっているんだ」「この要素はこの先も出てくるからきっと重要だ」などと気づくことができるのです。

全体像を把握するためのポイントとして中野氏が挙げるのは、まず先にテキストの「目次」を読むこと。目次には、その項目において学ぶこと、つまり「やるべきこと」が示されており、学習内容の骨格を把握するのに手っとり早いためです。ほかには、薄めの入門書を最初に読んでしまうのも効果的だとのこと。

質のよい予習法は、これから勉強することの全容をストーリーとしてインプットすること。ぜひ頭に入れておいてください。

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【最高の予習法2】事前テストをする

予習はインプットするだけに限りません。思いきって問題を解いてみるのも、じつは有効。ワシントン大学教授のヘンリー・ローディガー氏らの研究で、事前テストが学習や長期的な記憶保持に効果があると示されているのです。

事前知識がない状態で問題の答えを推測することにより、「覚えたい」という意識が強くなり、本格的に勉強するときに知識が深く脳に刻まれるのだとか。この現象をプレテスト効果と呼びます。

また、この方法は個人の特性に左右されないことも研究で示唆されています。広島大学の研究論文によると、プレテスト効果は、個人のワーキングメモリの容量との関連性が見られなかったとのこと。このことから、理解力や物覚えのよさなどの個人差に関係せず、効果が期待できると考えられるのです。

問題を解く必要のある教科や資格試験の勉強など、教科書で内容を学ぶよりも先に、問題集を軽く解いてみましょう。正解できなくてもいいので、答えを自分の頭で推測するのです。

そして問題を解いたあとは、すぐに答えを確認することも忘れずに。たとえ事前テストで間違えたとしても、「間違えたから正しく覚えよう」という意識を強くもつことに意味があります。「わからない」という困難さがあればあるほど、新しい知識の吸収力が強くなりますよ。 

***
あなたも、今回ご紹介した予習のテクニックを試してみてください。これまでの勉強よりも ”学びやすさ” を感じられるはずです。 

(参考)
サイコタム|有意味受容学習
コトバンク|有意味受容学習
APA PsycNet|The use of advance organizers in the learning and retention of meaningful verbal material.
東洋経済 ONLINE|私たちは「大人の脳」の使い方を知らなすぎる
NIKKEI STYLE|脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法
中野信子, 山口真由(2020), 『「超」勉強力』, プレジデント社.
DIAMOND online|勉強法の新常識!まったく知らないことをテストする「事前テスト」の威力
広島大学 学術情報リポジトリ|事前テストにおける誤答と記憶定着

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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