「勉強しなければ、まわりの有能な人に差をつけられてしまいそう……」
「AIが台頭する時代、勉強して思考力を鍛えないと、私の仕事はAIに奪われてしまう」
まじめな読者のみなさんなら、勉強する必要性は十分にわかっているはず。ですが、 「勉強しなければ」というプレッシャーによって疲れてはいないでしょうか。
本記事では、プレッシャーに妨害されることなく勉強に取り組むための、3つの小さなコツを紹介します。勉強し続けるためのヒントとして、みなさんのお役に立てれば幸いです。
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。
My Wellness|“幸せホルモン”セロトニンで心も身体もスッキリ目覚める!
VOGUE JAPAN|不安症、思い悩みがちの人ほどトライして欲しい “脳内トーク”【ヴォーグなお悩み外来】
日経BOOKPLUS|「それでも努力は楽しくない」あなたへ
いつもの勉強場所から離れてみる
「勉強しなければ」と思っても、ストレスのある状態では、勉強ははかどりませんよね。「勉強したいけど、やる気になれない……」そんな状態をリセットするために、いつもの勉強場所から離れてみましょう。
具体的には、外に出て歩くことがおすすめ。なぜなら、意欲と関係のある脳内物質のセロトニンが分泌されやすくなるからです。
セロトニン研究の第一人者、東邦大学名誉教授の有田秀穂氏によれば、セロトニンには「心の領域に働きかけて意欲を促す」働きがあるとのこと。(カギカッコ内引用元:My Wellness|“幸せホルモン”セロトニンで心も身体もスッキリ目覚める!)
勉強で考えてみると、セロトニンが正常に分泌されていれば、問題集や参考書に向かえる気分になるはずですね。逆に言えば、勉強道具を前にしても集中できないときは、セロトニンが不足していて、やる気がない状態なのです。
では、なぜセロトニンの分泌は減ってしまうのでしょうか。有田氏によれば、「ストレスを感じると、どんな人でもセロトニンの分泌は悪くな」るそう。つまり、ストレスはセロトニンの大敵なのです。(カギカッコ内引用元:同上)
「勉強したくない……」という気持ちを抱えたまま、無理やり机に向かうことは、まさしくストレスフルな状態。そんな状況ではセロトニンは分泌されないので、意欲は出てきません。ならば、セロトニンの分泌を自ら促し、意欲を創出してみましょう。
有田氏は、セロトニンを促す方法のひとつとして「リズム運動」をすすめています。
これはダンスなどの特殊なリズム運動ではなく、「歩行」「呼吸」「そしゃく」といった日常生活レベルの運動です。具体的にはウォーキングやジョギング、自転車こぎなど、無理なく継続できる軽めのエクササイズがいいですね。
(カギカッコ内および枠内引用元:同上)
軽く身体を動かすだけで、セロトニンが分泌されやすくなるのですね。ハードな運動をする必要がないので、ストレス解消にもちょうどよいでしょう。
在宅仕事をしながら勉強する筆者も、集中力が途切れたら、外に出て散歩するようにしています。外には透き通った空、風の柔らかさ、並木道に植えられた樹の香りなど、五感を刺激するものが多く、心が整えられる感覚がしますよ。自然とストレスも消えていきます。
意欲が急激に高まるとまではいきませんが、散歩する前後では勉強に向かう気分に差が生まれるのは明白。追い込まれたときは、勉強場所とは違う景色を見て歩いてみましょう。
主語を “第三者” にしてみる
勉強のプレッシャーにさらされると、不安や焦燥感に駆られるもの。そんなときに冷静になるには、主語を “私” から “第三者” に言い換えることが効果的です。
たとえば、以下のような具合です。
⇒「あなた(or 自分の名前)は焦っていると感じている」と言い換える
主語を変えるだけで冷静になれるとは、にわかには信じがたい話かもしれません。しかし、脳科学者の西剛志氏によれば、自分のことを第三者の視点で見ると、「不安やストレスが緩和」されるのだそう。
不安は脳の扁桃体と呼ばれる部分から生まれますが、自分に向けて『あなた』と言った方が、扁桃体の活動がより抑えられることも分かっています
(カギカッコ内および上記引用元:VOGUE JAPAN|不安症、思い悩みがちの人ほどトライして欲しい “脳内トーク”【ヴォーグなお悩み外来】 ※太字は編集部が施した)
他人が自分を見ているという設定をすることで、客観的になれるのですね。
じつは筆者は、以前ソフトウェア関連の会社で働いていたとき、第三者の言葉で冷静さを取り戻すということを自然にやっていました。たとえば、マニュアルの内容を勘違いして、とある作業を別のフォルダで処理してしまったとき、「マニュアルが理解できない自分は頭が悪い」「これでまわりの人からの信頼はなくなった」と思いそうになるところを、次のように言い換えていたのです。
- 「マニュアルが理解できない自分は頭が悪い、とあなたは感じている」
- 「まわりの人からの信頼はなくなった、とあなたは思っている」
当然、ミスは許されるものではありません。ですが、客観的な視点で考えることで、「自分の思い込みから心の混乱が収まらないのだ」と気づいてハッとしたことを、いまでも覚えています。
みなさんも、 「勉強しなければ」というプレッシャーから焦りや不安を感じている場合は、言葉で感情を飼い慣らす方法を試してみてはいかがでしょう。
自分に “フィードバック” してみる
勉強しても前に進んでいる感覚が得られないと、努力が本当に報われるのか疑問に思うこともありますよね。「このまま努力し続ける気になんてなれない……」そんなときは、自分にフィードバックするのがおすすめです。
人間の行動と心理を研究する経済学者の山根承子氏は、「楽しさや達成感のような内発的動機付けを持つことが努力を続ける秘訣」だと語ります。(引用元:日経BOOKPLUS|「それでも努力は楽しくない」あなたへ)
勉強が楽しい、勉強すると達成感を得られる。だから勉強がしたい――そう思えることが、勉強の努力を諦めないための秘訣だということですね。
さらに山根氏によれば、「努力の手応えを感じるため」には「フィードバックが重要」とのこと。そのフィードバックを簡単に行なう方法として、同氏は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの心理学者らが作成した「努力を習慣化するためのチェックシート」を紹介しています。「毎日その行動ができたかどうかを記録していくだけ」というものです。(カギカッコ内引用元:同上)
テンプレートは以下のとおり、きわめてシンプルです。
曜日と週に加えて、「5日以上行ったか」と「自動的」の評価欄を用意。「自動的」の欄には、「どのくらい自動的に行ったか」を1〜10のレベルで評価して書き入れます。(カギカッコ内引用元:同上)
今回筆者は、丸型シールを使い、勉強できたかどうかを記録しました。勉強時間の長さごとに色を分けたシールに、勉強時間(分)を記入。勉強するたび、このシールを貼りました。勉強時間の推移がわかれば具体的なフィードバックになると考えたのです。
一週間が経過し、シートを振り返ると……。
「全然勉強していない……」と感じていた筆者ですが、可視化したことで一日おきに45分~60分は勉強していたことがわかりました。
「努力が楽しくなった……!」という境地にはまだ遠いですが、このチェックシートをシールで埋めたい心理が生まれました。「シールを増やしたい」という気持ちが、新たなモチベーションにつながるようです。
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仕事と勉強を両立することは至難の業。みなさんが疲れ果ててしまう前に、この記事でご紹介した3つのことを試すことで、「勉強しなければ」というプレッシャーを賢く乗りきれるよう願っています。