「仕事で資格をとる必要があるけど、内容が難しくてなかなか覚えられない……」
「勉強してもすぐに忘れてしまう。知識が定着している実感がもてない……」
このような人に向けて、今回は「大量記憶表」を使った勉強法をご紹介します。簡単かつ効率よく記憶できる、試験対策におすすめの勉強法ですよ。
「大量記憶表」とは?
「大量記憶表」とは、行政書士や宅地建物取引士(宅建士)など9つもの資格試験に、働きながら3年間で独学合格した棚田健大郎氏考案の、勉強に使うシートのこと。「勉強したことを試験日まで『絶対に忘れないようにするしくみ』」のなかで使用するものです。(ダイヤモンド・オンライン|「いきなり過去問を解く」が最強の勉強法である より)
この表の特徴は、復習の間隔に重点を置いているという点です。
棚田氏が「ダイヤモンド・オンライン」の記事で語ったところによると、じつは棚田氏には、1年かけて毎日3時間勉強したにもかかわらず、宅建士の試験に落ちたという苦い経験があったそう。「ずっと記憶し続けておくためにできる方法はないか」と考えた末、棚田氏がヒントにしたのが、落語家の暗記法。
- 「小分けにした落語を少しずつ覚えていく」
- 「前日覚えた部分を翌日に復習して思い出す。記憶が定着してきたら、思い出す間隔を徐々に長くしていく」
という暗記法を、勉強にも応用したそうです。そのメリットを、棚田氏はこう述べています。
シンプルだけど効果抜群で、本当に忘れにくい上に、継続しやすい。毎日何をやればどの程度記憶に定着するか可視化できるので、仕事との両立もできました
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「いきなり過去問を解く」が最強の勉強法である)
そして、一度勉強したことを、間隔を少しずつ空けながら繰り返し復習し、復習するたび大量記憶表に日付を書き込んでいく――という、大量記憶表を使った勉強スタイルが完成したのだそうです。
(※上記のエピソードは「ダイヤモンド・オンライン」よりまとめた。カギカッコ内は同資料より引用)
復習が記憶定着に役立つ理由
復習を “繰り返す” 仕組みになっているという点でも、この大量記憶表を使った勉強法は理にかなっています。
「繰り返せば、脳は知識を記憶にとどめてくれ」る――こう述べるのは、東京大学薬学部教授の池谷裕二氏。
池谷氏によると、脳には「生きていくために不可欠」な情報を記憶に残す性質があるそうです。資格試験に必要な情報は、生きるうえで不可欠とまでは言えませんが、
生き死ににかかわらない情報でも、何度も繰り返し脳に送り続けると、海馬は「これは生きるのに必要な情報に違いない」と勘違いしてくれます。
(引用元:WAOサイエンスパーク|こうすれば記憶力は高まる!~脳の仕組みから考える学習法 ※太字による強調は編集部にて施した)
とのこと。
毎日何時間勉強しようと、1年2年と長期間かけて勉強しても、何度も繰り返すことなしには、資格試験に必要な知識をしっかり覚えておくことはできないのですね。
「大量記憶表」の作成手順
筆者もなかなか記憶が定着せず悩んでいたため、大量記憶表を作成し、そのとおりに1週間ほど勉強をしてみました。勉強内容は、以前から挑戦したいと思っていた「カラーコーディネーター検定試験」。表の作成手順は、次のとおりです。(手順参考「ダイヤモンド・オンライン」)
1. 横軸に「復習の間隔」を書く
勉強を始める前に「表」をつくります。作成のしやすさと確認のしやすさから、筆者はA4サイズの方眼紙を使うことに。
下の画像のようなマス目をつくり、横軸に復習の間隔を書きます。今回は棚田氏が提唱しているとおり、初めて勉強した日を「0」として、1回めの復習は半日後にするので「0.5」、2~4回めの復習は1日後なので「1」、5〜6回めは2日後なので「2」……というように間隔を空けながら、数字を書き込みました。
ちなみに、ドイツの心理学者エビングハウスが行なった実験によると、「記憶してから1日の間に急激な忘却が起こる」とのこと(引用元:リクルートマネジメントソリューションズ|エビングハウスの忘却曲線とは)。最初の復習を半日後に行なうのは、そういう点で合理的なのですね。
2. 縦軸に「勉強内容」を書く
そして表の縦軸には、勉強内容を、ページや項目別に小分けしてリストアップします。棚田氏が推奨しているように、筆者も問題集のページを細かく分け、上から順に書きました。
1項目あたりの勉強量の目安は、「4択問題なら4問程度、一問一答なら16問程度」だとのこと。筆者は一問一答形式の問題集を使用していたので、13~16問ごとに小分けして書きました。この程度なら、負担が大きくならずにすみそうです。
3. 上から順に勉強し「復習した日付」を書き込む
表が完成したら、上から順に勉強を進め、該当の箇所に勉強した日付を書き込んでいきます。たとえば筆者は、11月17日に「カラーコーディネーターの実務」を初めて勉強したので、横軸で「0」と書いた列のマスに「11/17」と日付を書いています。
そして、あらかじめ設定しておいたように、半日後には1回めの復習。復習が終わったあとは、「0.5」と書いた列のマスに「11/17」と日付を書き込み、さらに進行度がひとめでわかるよう色も塗りました。
「大量記憶表」のおかげで勉強内容を効率よく暗記できた!
大量記憶表で勉強してみて感じた効果を、以下にまとめます。
初めて学んだ内容でも、確実に覚えられた!
カラーコーディネーター検定試験の内容は、どれも知らない単語ばかり。ですが、大量記憶法で勉強を続けたところ、知識を確実に記憶へ定着させることができました。「小分けにして覚える」「繰り返し復習する」というふたつのポイントが、定着に効果的だったと感じています。
これまで筆者は、ひととおり勉強したあと、復習を最後にまとめて1回だけしていました。しかしこのやり方だと、復習時には、最初のほうで勉強した内容をすでに忘れている……ということも。
今回この大量記憶表を使い、復習を繰り返してみると、知識を取りこぼさずにすべて覚えることができました。問題を解くスピードも復習の回数を重ねるごとに早くなり、記憶がたしかに定着していると実感できたのです。
なお、もし前回までの勉強内容を十分に覚えられていなければ、新しい内容に進むことはせず、復習だけに留めてもよいかもしれないと思いました。表に日付を書いておけば、どこまで取り組んだかわからなくなることもありません。
まとまった学習時間をつくれない、忙しい人にもおすすめ
大量記憶表を使った勉強は、1日分の勉強内容を少なめに設定できるので、スキマ時間での勉強にも向いていると思います。
筆者の場合、勉強に当てたのは1日30分ほど。1日あたりの学習量は、一問一答形式の問題集のうち、新たに覚えるものが15問、それから復習で思い出すものが30〜45問といった感じです。
1日の勉強時間は短くても、復習のタイミングをきちんと設定していたおかげか、無理なく記憶できました。勉強内容も小分けになっているので、朝や晩のスキマ時間、あるいは昼休みの空き時間などを活用しやすい勉強法だと言えます。
仕事や家事で忙しくまとまった時間がとれない人に、とてもおすすめです。
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大量記憶表を使えば、勉強内容をきっと効率よく記憶できます。知識を着実に積み重ねたい人は、ぜひ試してみてくださいね。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|「いきなり過去問を解く」が最強の勉強法である
WAOサイエンスパーク|こうすれば記憶力は高まる!~脳の仕組みから考える学習法
リクルートマネジメントソリューションズ|エビングハウスの忘却曲線とは
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。