勉強を習慣化しようと何度もチャレンジしたけど、結局挫折している……。
いまひとつ達成感が得られないので、ますます勉強したくなくなる……。
そんな人は、とにかく小さく続けることを目標にするのが吉。今回は「小さな習慣」の有効性を、筆者の実践例とともにご紹介します。
勉強の習慣化がうまくいかない理由
勉強を習慣化できない原因は、どこにあるのでしょうか? 識者らは、次のように分析しています。
1. 設定したハードルが高すぎる
ひとつめは、設定したハードルが高すぎること。習慣化コンサルタントの古川武士氏によれば、「どうせやるなら、ちゃんとやろう」と最初からハードルを上げるのは悪手だそう。
無意識にその高めたハードルが今度はノルマになり、なかなか行動できなかったり、続かなかったりするのです。
(引用元:東洋経済オンライン|「勉強や運動」が続かない人が陥りがちな勘違い)
そこで古川氏は、「『面倒』『怖い』『不安」などの感情が出てこなくなるまで徹底的に行動のハードルを下げる」必要があると述べています(引用元:同上)。
たとえば、「問題集を1日に50ページ進める」ことを毎日しっかり実行するのは、難しいかもしれません。ですが「1日に1ページ進める」「1日に1問進める」に変えれば、「面倒くさいな」「全部できるか不安だな」といった感情が消え、無理せず取り組めるはず。
古川氏いわく、大切なのは「行動をゼロにしない」こと。勉強習慣をつけたいなら、1ページでも1問でもいいので、勉強を止めないことが肝心なのです。
2. 達成感を得られていない
ふたつめは、達成感を十分に得られていないこと。
高校時代に最高偏差値95を出し、京都大学に首席で合格した経験をもつ実業家の粂原圭太郎氏は、自身の経験や、周囲の京大生・東大生の友人の様子をふまえ、「とにかく没頭する、のめり込む」ことこそが「勉強で成果を出すポイント」だと言います。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|【勉強貯金】日々の勉強は裏切らない。勉強にのめり込むシンプルな方法)
たしかに、没頭できないことを毎日続けるのはつらいもの。とはいえ、勉強の継続が苦手な人からすると、勉強に没頭すること自体がとても大変そうに思えます。どうすれば勉強に没頭できるのでしょうか? 粂原氏はこう述べています。
勉強したことに対するフィードバックが早ければ早いほど、達成感を得られ、没頭しやすい状態をつくることができます。
そのために、最も効果的なのが「できたことを毎日記録する」方法です。
(引用元:同上)
実際粂原氏自身、高校時代に「できたこと」の記録として、「勉強貯金」というノートに「勉強内容と時間を書いていき、時間を貯金の残高に見立てて記録」していたのだそう。
「これだけやれた!」と感じられるかどうかが、勉強の習慣化を左右するのですね。
勉強の習慣化には「小さな習慣」が最適
多すぎるノルマを設定したり、達成感が得られなかったりすると、勉強を習慣化することは難しいことがわかりましたね。
そこでおすすめしたいのが「小さな習慣」というもの。
ベストセラー『小さな習慣』著者のスティーヴン・ガイズ氏によれば、小さな習慣とは「毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動」のこと(『小さな習慣』より引用)。
同書の内容をふまえると、何かを達成するためには、モチベーションよりも戦略が大事。習慣化達成のポイントとして、ガイズ氏は以下の3つを挙げています。
- 小さく考える
どんなに意志力が弱っていても「これくらいならできる」と思えるくらいの小さな習慣を設定する。 - 期待しすぎない
習慣が定着してきたと感じてもハードルをすぐに上げず、目標を小さく保つ。 - 習慣になる兆しを見逃さない
「無意識にそれができるようになる」「その行動をしないよりも、するほうが簡単になる」などの兆しが見えてきたら、新しい習慣を追加したり、ハードルを少し上げたりする。
(スティーヴン・ガイズ著, 田口未和訳 (2017), 『小さな習慣』, ダイヤモンド社. よりまとめた)
「小さな習慣」であれば、ハードルが小さく確実に実行できるので、達成感も得やすいでしょう。勉強の習慣化に挑むたび三日坊主になってがっかりする……といったことは、きっとなくなるはずです。
「小さな習慣」で戦略的に勉強を習慣化してみた
筆者も実際に「小さな習慣」を活用して勉強してみました。
ガイズ氏は、前述のポイントを活かして習慣化するための具体的な手順を、次のように示しています。
- 「小さな習慣」を選ぶ
身につけたいと考えている小さな習慣を、最大4つまでリストアップする。 - 「なぜそれを望んでいるのか」を掘り下げる
リストアップした習慣が努力するに値するのかを確かめるため、ひとつひとつに対して「なぜそれを望んでいるのか」を深掘りする。 - 「行動開始の合図」を決める
行動を開始する合図を、「時間ベース」もしくは「行動ベース」で決める。規則的な生活をしているなら時間ベース、仕事のスケジュールが柔軟な人は行動ベースだと取り組みやすい。 - 「報酬」を決める
小さな習慣を定着させるため、日々達成できたあとのご褒美を決める。 - 「目標の達成度」を記録する
目標の達成具合を、ノートに手書きで書き留める。
(同上書籍よりまとめた)
上記にのっとり、今回は簿記の勉強に取り組むことに。学生時代から簿記への苦手意識を払しょくできないまま、片手で足りないくらいの回数は習慣化に挫折している筆者。テキストも3回買い直したほどの挫折っぷりです。
そこで「小さな習慣」を、次のように設定しました。
- 身につけたい「小さな習慣」
→簿記の問題集を1問だけ進めること - なぜその習慣を望んでいるのか
→学生時代からの苦手意識を払しょくするため
→企業内外でのお金の流れを把握し、仕事に役立てるため - 行動開始の合図
→21時から(時間ベース)
→夕食後、あと片づけをしたら(行動ベース) - 報酬
→お風呂で好きな入浴剤を使ってよい - 目標の達成度
→「できたことの記録」として、勉強したページの余白に「%」で記載。
このように決めて勉強を続けたノートがこちらです。
「小さな習慣」なら、新しい習慣も簡単に身につく!
今回の実践で得られたこと・提案したいことを、以下にまとめます。
1. 負担を感じることなく勉強できた!
「小さな習慣」を活用してみたら、以前より驚くほどスムーズに勉強に取りかかることができました。
これまでは「そろそろ始めないと。でも気が重いな……」と勉強前の時点でモチベーションが下がり、結局勉強しないことも多々ありました。ですが、あらかじめ小さな行動と行動開始の合図を具体的に決めておいたおかげで、ただそのルールに従うだけで机に向かえたのです。心理的な負担はほとんどありませんでした。
また、あとで報酬も得られると考えると、勉強により精を出すこともできました。すると「やる予定だったのにできなかった……」から「予定していた以上にできた!」とマインドが変わったので、習慣化しやすくなったのです。
2. 勉強を毎日継続できた!
以前のように三日坊主で終わってしまわないかと最初は不安でしたが、実際のところ、勉強を1か月以上継続することができました。
小さな行動が当たり前の生活になると、開始の合図がなくとも、「ちょっとテキストを見るだけ……」と行動がポジティブに変化していくのを実感できました。
3. 勉強以外の習慣化にもおすすめ
「小さな習慣」は、勉強以外の習慣化にも活用できます。
筆者の場合、勉強とあわせて、湯船に浸かる習慣も身につけることができました。それまではシャワーで済ませることが多かったのですが、日々の疲れをとることも勉強と同様に大切だと考えたので、それをあえて報酬として設定。「お風呂で好きな入浴剤を使ってよい」と決め、勉強と入浴をワンセットにしたのです。
すると「勉強もやったし、湯船にも浸かれた!」とダブルで達成感を得られました。じつは当初は、「たった1問やるぐらいじゃ、勉強がまだまだ足りないのでは」と思っていた筆者。ですが達成感のおかげでそんなネガティブな思考からスッと離れられて、勉強も入浴も習慣化できました。
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「小さな習慣」なら、新しいことを習慣化するのが苦手な人でも、きっと実行しやすいはず。ぜひ試してみてください。
(参考)
東洋経済オンライン|「勉強や運動」が続かない人が陥りがちな勘違い
ダイヤモンド・オンライン|【勉強貯金】日々の勉強は裏切らない。勉強にのめり込むシンプルな方法
粂原圭太郎著 (2020), 『偏差値95の勉強法 頭のいい人が知っている「学びを自動化する技術」』, ダイヤモンド社.
スティーヴン・ガイズ著, 田口未和訳 (2017), 『小さな習慣』, ダイヤモンド社.
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。