失敗したり、チャンスを見逃したりしている自分の隣に、「やったー! ラッキー! ツイてるなぁ」などと喜んでいる他人がいたら、「あーあ、どうせ自分は運が悪いから」と言いたくなりますよね。
でもあえて、「自分は運がいい」と考え直しましょう。決して損はありませんよ。
今回は、「自分は運が悪い」と考えると失敗続きになり、「自分は運がいい」と考えると本当に「運」が向いてくるお話を、偉人や有識者の言葉、研究結果などを交えて紹介します。
【其の一】「運が悪い」と答えた人は不採用?
「経営の神様」と呼ばれるパナソニック創業者・松下幸之助氏のエピソードの中には、「運」にまつわる話もあります。
同氏は面接を行う際、いつも「あなたは運がいいか?」と尋ねたそう。そこで、「運が悪い」と答えた人は、どんなに学歴や面接結果がよくても採用されなかったのだとか。
松下幸之助氏は、著書『人事万華鏡』の中で――
――といったことを述べています。
「自分は運がいい」と考える人は、想定外の失敗やトラブルに巻き込まれても、物事の見方を好転させて考えられたり、判断したりできるので、いい結果がともなうだろうと考えたわけですね。
【其の二】悪運思考が「運の悪い証拠」を探す?
メンタリストのDaiGo氏は著書『運は操れる』の中で、
「自分は運が悪い」と考えている人は「自分は運が悪いという証拠」を、
過去・現在・未来から探す傾向がある、
と述べています。
「自分は運がいい・悪い」といった考えは、思い込みの部分が強いのでしょう。長年にわたり「運」について研究をしている心理学者のリチャード・ワイズマン博士が、「自分は運がいい」と考えている人と「自分は運が悪い」と考えている人を数百人ほど集め、宝くじの当選番号を予想してもらったところ、両者に差はなかったそうです。
心理学の研究では、「自分は運が悪い」と考える人たちの共通点が、人よりも不安を感じやすい点だと示されているのだとか。それが次のような負のサイクルを招いている場合もあるそう。
- 不安が注意散漫を起こし
- 注意散漫が失敗を呼び
- 失敗の多さがネガティブな記憶を強化し
- 「自分は運が悪い」と認識する
「運が悪い」と感じるのは、「不安」が引き起こす負のサイクルであり、自分が躍起になって「運が悪い証拠」を探してしまう結果なのですね。
【其の三】「運が悪い」は心の余裕の差だった
ミドル世代専門転職コンサルタントの黒田真行氏は、次の研究を『NIKKEI STYLE』で紹介しています。
前項にも登場したリチャード・ワイズマン博士は、18歳~84歳までの男女400人を10年間にわたって観察し、テスト等を行なったそうです。結果、「運が悪い人」は「運がいい人」に比べて、
- 緊張しやすい
- 心配性
- 細部に注目しすぎる
といった部分が強く、せっかくのチャンスを見逃してしまう傾向があったのだとか。たとえばワイズマン博士はこんなテストを行なったそう。
- カフェの入り口に落ちている5ポンド札に気づくかどうか
- カフェの中にいる有名な実業家に気づくかどうか
すると、「自分は運がいい」と考える人は5ポンド札を見つけ、実業家に気づいて会話を弾ませ、のちに喜々としてその出来事を語ったのに対し――「自分は運が悪い」と考える人は、5ポンド札にも実業家にも気づかず、“何もなかった” とつまらなそうに言っていたそうです。
これこそ、まさに「運」の差……!?
いえいえ違います。事実、同じチャンスは両者の目の前にあったのですから。結果が大きく違ってしまったのは、「気持ちの余裕」があるかないかの差にほかなりません。
「不安は妄想」だと理解しよう
「自分は運が悪い」と思い込んでいる人が、いきなり「自分は運がいい」と考え始めるのは難しいかもしれません。
また、「自分は運がいい」と考えられる人にならい、「緊張しすぎない、心配しすぎない、大きな視野を持つ 」と心がけることは、不安を感じやすい人にとって、そうたやすいことではありません。
しかし、DaiGo氏も、「運」を操るため、負のサイクルから抜け出すため、不安に強くなることが必要だと述べています。
そこでおススメしたいのが、
ことです。
米国ミシガン大学の研究チームの実地調査では、「心配事の80%は起こらない」と明らかになったそうですよ。精神科医の樺沢紫苑氏が紹介しています。
「緊張」だって、注射の “チクッ” を一瞬だけ我慢したり、“ヨーイ、ドン” で走り出す “ヨーイ” の部分のような、一過性のものなのです。
中卒→大検→東大→永田町シンクタンク勤務→インドで得度といった異例の経歴を持ち、独立出家僧として講演会や研修などを行う草薙龍瞬氏は、
- この先いったいどうなるんだ?
- 評価が低くなるのではないか?
- 失敗するのではないか?
といった不安を抱えた際、
とはっきり理解するよう説いています。
半世紀以上生きている筆者にも、「きっと無理だ」と不安になって何ヵ月も悩んでいたことを、思いきってトライしてみたところ、緊張感はほんの一瞬で、難なく物事がいい方向へ進んだ経験が、何度も何度もありました。
そのとき、悩んでいた数ヵ月間を悔やむ気持ちより、「良かった! ツイてた!」という気持ちが勝ったのも事実です。
***
「自分は運がいい」と思えばラッキーになるのは本当のことでした。
不安になったり、過度に緊張したり、視野が狭くなったりしたときは、負のサイクルを招いてしまう前に、 「これは妄想なのだ」 と自分の状態を理解してください。そうして「妄想=不安」から抜け出す術を身につけ、ぜひともラッキーな人になってくださいね。
(参考)
NIKKEI STYLE|「自分は運が悪い」と考える人が転職に失敗する理由
PHPオンライン 衆知|松下幸之助はなぜ、運が強い人を採用したのか
東洋経済オンライン|心が強い人は「不安は妄想」だと知っている
ダイヤモンド・オンライン|心配事・不安の96%は実際には起こらない。考えないのが一番 | 人生うまくいく人の感情リセット術 樺沢紫苑
メンタリストDaiGo著(2018),『運は操れる』,マキノ出版.
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。