勉強中の “独り言” で脳機能アップ!? 一流たちの「ユニークすぎる勉強法」

一流たちのユニークな勉強法1

キャリアアップのため、スキルを磨くため、資格を取るため……。人それぞれ理由は違えど、勉強の必要性を感じ、さまざまな勉強法を調べて実践している人は多くいることでしょう。

しかし、いろいろな勉強法を試してみても、「自分には合わない」「なかなか効果があがらない」というケースもありますよね。

そこで今回は、一流と呼ばれている人が実践しているユニークな勉強法を4つご紹介していきます。今までどれを試してもうまくいかなかった人は、この中にこそ、理想の勉強法があるかもしれませんよ。

【1】粂原圭太郎氏は「利き手と逆の手を使う」

粂原圭太郎氏は、京都大学に首席合格した秀才。現在は、ウェブサイト「勉強革命.com」を運営して効率的な勉強法を発信し続け、競技かるたでも名人位を奪取するなどの活躍をしています。

斬新なものが多い粂原氏の勉強法のひとつが、「覚えておきたい事柄をノートに書くとき、利き手と逆の手を使って書く」というもの。粂原氏によれば、普段よりかなり意識を集中させて動きをコントロールしなければならないので、集中力や記憶力が高まるのだそう。

じつは、利き手と逆の手を使うメリットは、科学的にも示されています。京都橘大学大学院健康科学研究科長の村田伸氏らは、大学生12名を対象に、利き手と利き手ではないほうの手で同様の図形を書かせ、その際の脳の状態を調べる実験を行ないました。すると、利き手ではない手で図形を描いているときのほうが、記憶や集中を司る前頭葉が活動的になったそうです。

人に聞いた話や本の内容を忘れてしまう人は、覚えておきたいと思うことを、利き手と逆の手で書き出してみてはいかがでしょうか。たとえば、参考書を読みながらどうしても覚えておきたい箇所に当たったら、利き手と逆の手でのノートに書き出してみる、など。このような工夫が、記憶力をアップさせる助けになりますよ。

一流たちのユニークな勉強法2

【2】中野信子氏は「漫画を読む」

子どもの頃に、みなさんも一度は「漫画ばかり読んでいないで勉強しなさい」と言われた経験があるはず。しかし、これからは「漫画を読んで勉強しなさい」の時代が来るかもしれません。

脳科学者の中野信子氏は、受験生時代に地理の教師から、『ゴルゴ13』を読んでいろいろな国の宗教観や産業などの特色を覚えることをすすめられたそうです。実際にやってみると、『ゴルゴ13』の主人公と一緒にその国を訪れた気になって覚えるほうが、ただ暗記するよりも、はるかに簡単なことに気づきました。今でも、知識を得るために積極的に漫画を使うそうです。

じつは、漫画の内容が記憶に残りやすいのには科学的根拠があります。中野氏によれば、人間の長期記憶(人間がずっと覚えておける記憶)の形成には、以下に解説する「海馬」と「エピソード記憶」が重要な役割を果たすのだそう。

  • 海馬:必要な記憶と不必要な記憶を仕分けする脳の部位。感情を伴う記憶を必要だと判断しやすい。 
  • エピソード記憶:自分が経験したことの記憶。

海馬とエピソード記憶の関係について、中野氏は著書の中で以下のように述べています。

エピソード記憶は心の動きを伴うので、より記憶されやすくまた思い出しやすいと言えるでしょう。例えば、自分自身で計画を立てて実際に旅行をした場所のことはよく覚えていますよね。

(引用元:中野信子(2012),『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』, アスコム. ※太字は筆者が施した)

海馬が大事だと判断しやすいのは、感情を伴うエピソード記憶です。そして、中野氏によれば、漫画による疑似的な体験も、脳はエピソード記憶として貯蔵できるそう。子どものころ夢中になった漫画のシーンは、大人になっても思い出せますよね。それは、漫画の体験も、自分の体験と同じように脳が認識してくれるからなのです。

最近では、著名なビジネス本の内容を漫画で解説してくれる「ビジネス漫画」が急増しています。そして、「ビジネス漫画」の共通点として、主人公が名著と言われる本の内容を実践していくことで、読者にもその過程を「疑似体験してもらう」という仕組みがあるのです。

たとえば、ベストセラーでいまだに根強い人気がある『まんがでわかる7つの習慣』は、将来バーを開業したいという夢を持つ主人公の女性が、仕事でぶつかる課題に対して『7つの習慣』の教えを使ってうまく解決していく、という形をとっています。理解や実践が難しい知識も、疑似体験させてくれることで記憶に残りやすくしてくれているのです。

一度読んだ本の内容を思い出すのに、また同じ本を読み返したりするのは大変なもの。著名な本ならば、ぜひ「ビジネス漫画」を活用してみてはいかがでしょうか。復習できるだけではなく、長く覚えておけるようになるかもしれません。

加えて、本を1冊読むより時間がかからないのも漫画の大きなメリット。読書が苦手な人はもちろんのこと、最近忙しくてなかなか本を読む時間が確保できないと感じている人も、漫画から入るのは、じつはとても有効な方法なのです。

一流たちのユニークな勉強法3

【3】ピーター・ドラッカーは「独り言をしゃべる」

「マネジメント」の発明者、ピーター・ドラッカーは、本の執筆の際、まず手書きで全体像を書いたのち、自分の考えを詳しく独り言のようにしゃべり、それを録音することから始めていたそうです。

ドラッカーは、独りでしゃべることによって、内容を整理すると同時に、書くべきことを考えていたのだとか。アインシュタインも、新しい発明に取り組んでいるとき、独り言が多かったそうです。

人前では迷惑がられてしまう独り言ですが、じつは脳に良い効果があることがわかっています。ペンシルバニア大学の心理学教授Daniel Swigley氏らは、独り言に関する次のような実験を行ないました。

【実験】
2つのグループに分けた被験者に、ある部屋から探しものを見つけ出してもらう。片方のグループは無言で、もう片方のグループは探している対象物の名前を言いながら探し、見つけ出すのにかかった時間を測定する(対象物及び対象物のある場所は同じ)。

【結果】
声に出して探したほうが、見つけ出す時間が短かった。

この実験から、独り言には脳の認知能力を強める効果があることがわかりました。精神科医の樺山紫苑氏によれば、記憶というのはネットワークとして保管されているため、言葉に出すことで、その言葉と関連する記憶が刺激され、芋づる式に引き出されるそうです。

たとえば、上記の実験で探し物が「はさみ」なのであれば、「はさみ」と口にすることで自分の記憶から「はさみと一緒に置いておくようなもの」が引き出され、探す場所のあたりがつけやすくなります。より身近な例で言えば、有名な俳優の名前をド忘れしてしまったとき、作品名を言っているうちに名前を思い出せる、なんていう経験はありませんか? これも同じメカニズムなのだそうです。

独り言は、何の道具もいらない簡単な勉強法としておすすめ。たとえば、本を読んだりセミナーを受けたりしたあと、大事だと感じたことを、家で独り言を言いながら思い出してみてはいかがでしょうか。独り言によって、ほかの関連する記憶と結びついて、より記憶を強固にすることができますよ。勉強法を工夫したいけれど、どれも大変そうだと感じる人は、ぜひ取り入れてみてください。

一流たちのユニークな勉強法4

【4】佐藤大和氏は「先に解答を見る」

資格試験などに合格するという目的の勉強なら、弁護士の佐藤大和氏が実践する「先に解答を見る」という方法がおすすめ。これは、問題を解いて答えを出すのではなく、答えと考え方を先に見て、それをまるまる暗記していくという勉強法です。

佐藤氏は、この「ずるい暗記術」によって、高校時代偏差値30代から司法試験に一発で合格するまでに成長しました。一般的な「理解しながら覚える」という方法は、問題を間違えたり、解き方がわからなかったりといったプロセスがつきものです。しかし、その困難が勉強のモチベーションを削いでしまうと、佐藤氏は考えています。

解答を先に見てしまえば、「わからない」と悩むことはなくなるので、勉強のハードルが下がって継続ができ、時間も節約できます。また、はじめは理解できなくても、継続していけばおのずと理解もついてくるようになるものです。ゴールはあくまで「合格」すること。そのため、正解をあれこれ考えるよりも、正解に到達する考え方を暗記していくほうがより効果的とのこと。

司法試験や大学受験の勉強法に関して多くの著書がある弁護士の柴田孝之氏も、2つの理由から答えを先に見ることをすすめています。

1つめは、わからない問題を無理やり解いても、どのみち答えと問題を照らし合わせて理解する作業になるので、先に答えを見てしまって解法を覚えてしまうほうが時間短縮ができるから。2つめは、たまたま正解して満足するのを防げるから。解法をしっかり暗記できていない限り問題は解けないので、まずは答えを写し取って解法を暗記し研究するのが、真に問題を解く力になるとのことです。

私たちは、学校教育の過程で「答えを先に見るのはよくないこと」という意識が刷り込まれてしまっています。しかし、合格を目標にするのであれば、答えを先に見る「ずるさ」も大切なのですね。

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一見ユニークな勉強法でも、その効果は実証済み。ぜひここで運命の勉強法との出会いを果たし、目標達成という未来にゴールインしてくださいね。

(参考)
粂原圭太郎(2014),『学校では絶対教えてもらえない受験勉強法~こうして僕は、京大にトップ合格した~』, エール出版社.
村山菜都弥, 村田伸(2012), 「利き手と非利き手作業時における脳循環動態の比較」, 理学療法科学, Vol. 27, No. 2, pp.195-198.
中野信子(2012),『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』, アスコム.
中野明(2010),『ドラッカー流 最強の勉強法』, 祥伝社.
LIVE SCIENCE|Talk to Yourself? Why You're Not Crazy
NEWSポストセブン|独り言で脳が活発化も 作業中の内容や予定は口にすべき
佐藤大和(2015),『ずるい暗記術―――偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』, ダイヤモンド社.
柴田孝之(2010),『試験勉強の技術』, ダイヤモンド社.

【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。

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