「資格試験が近づいてきたから勉強しなきゃ。でも、じつは興味がない分野なので進まない……」
「仕事のために勉強する必要があるけれど、つまらなくてやる気が出ない。でもいつかはやらないと……」
このような焦りを抱えている人に、つまらない勉強に楽しく取り組めるようになる「誘惑バンドル」という方法をご紹介します。ポイントは、「好きなことと組み合わせる」こと。詳しくご説明しましょう。
「誘惑バンドル」とは
誘惑バンドルについて、行動科学者のケイティ・ミルクマン氏は次のように説明しています。
「誘惑バンドル」とは、「好きな音楽を聴く」「ジャンクフードを食べる」などのやりたくてたまらないことと、「勉強」や「運動」などのやらなくてはならないことを抱き合わせにする方法のこと。
つまり、「楽しみ」と「義務」をセットにするわけですね。その効果は、
有益だが気が進まない活動に誘惑をバンドルすれば、やるべきだとわかっているその活動を長期的に持続できるだけでなく、短期的にもやる気を高められる
誘惑バンドルが効果を発揮すると、困難な目標を手強いと感じなくなり、おまけにこれまで無駄にしていた時間まで減らすことができる
(ここまでの引用元:ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法)
とのこと。誘惑バンドルとは、嫌なことでも楽しく実行し続けられる方法なのです。
なおミルクマン氏がこの方法を思いついた背景には、自身のこんなエピソードがありました。学生時代、勉強をあと回しにして小説を読みふけってしまうことが多かった同氏。あるとき、このままでは落第しそうだとわかり、「好きな小説を読む楽しみを、運動するときだけにとっておいたらどうだろう?」とひらめいたのだとか。
(上記のエピソードは「ダイヤモンド・オンライン|「キツい自己研鑽が続く人」「ラクな習慣も続かない人」の決定的な違い」よりまとめた)
またミルクマン氏は、次のような実験結果も得たそうです。「運動を増やすように」とだけ言われたジム会員と、「オーディオブックの無料ダウンロードを提供され、誘惑バンドルについての説明を受け、オーディオブックの楽しみを運動のときだけに取っておく」ようすすめられたジム会員とでは、後者のほうがジムへ通う確率が高かった。1か月間の実験期間中だけでなく、実験後も少なくとも17週間は、毎週運動する確率が高かった――とのこと。
(上記の実験内容は「ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法」よりまとめた)
このように、やる気を引き出すだけでなく、持続させる効果もある誘惑バンドル。ミルクマン氏は、勉強にも有効だとしています。この方法をとれば、つまらない勉強も、集中力ややる気を維持しつつ楽しく取り組めそうですね。
つまらない勉強が本当に楽しくなるのか「誘惑バンドル」を試してみた
効果のほどを確認すべく、筆者も誘惑バンドルで勉強に取り組んでみました。今回行なったのは、資産形成を目的とした経済の勉強。仕事にも役立つとわかってはいたものの、関心が薄かったうえに苦手意識もあって、これまではなかなか勉強がはかどらなかったのです。
ミルクマン氏の著書『自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学』を参考に、以下の手順で行ないました。
- 「好きなこと」と「やるべきこと」をリスト化する
- 抱き合わせにする行動をリストから選んで実行する
1. 「好きなこと」と「やるべきこと」をリスト化する
まずは、ふたつのリストを作成します。
リスト1 好きなこと、やりたいこと、やっていてワクワクすること
リスト2 やらなければいけない、した方がいいとは分かっているけれど気が進まず、引き延ばしがちなこと
(引用元:ケイティ・ミルクマン (2022), 『自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学』, ダイヤモンド社.)
リスト2にあたる “やるべきこと” は「資産形成を目的とした経済の勉強」と決めていたので、リスト1だけを作成することにしました。筆者は、スマートフォンのメモアプリを活用しましたが、紙へ書く・Excelへ入力するなど、自由に作成してかまいません。
2. 抱き合わせにする行動をリストから選んで実行する
次に、“やるべきこと” と抱き合わせにする行動をリストから選んで実行します。
これについてミルクマン氏は、「認知的負荷のかかる作業」どうしや、「肉体的負荷のかかる作業」どうしをバンドルしないことがポイントだとしています。後者の例として同氏が挙げるのが、「ハンバーガーを食べる」と「運動」はバンドルできない――というもの。
(上記カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法 以下本項内同じ)
前者の例を勉強で考えてみると、YouTubeを見ながらテキストを読んではいけない――といったところでしょう。
また、「誘惑に浸ってよい時間を、やる気をとくに高めなくてはできない活動をするときだけに制限」することで「誘惑バンドルが最大の効果を発揮する」とのことなので、筆者は以下のように勉強のルールを定めました。
誘惑バンドルの効果がどれだけ続くかが不明だったので、勉強時間は短めに30分と設定して、1週間チャレンジすることに。タイミングは特に定めず、小腹が空いた夕方や、甘いものが欲しくなった夕食後に、お菓子と一緒に勉強道具を広げました。
お菓子を食べながらWebテキストを読み、重要なところは以下のようにノートへメモをして、勉強を進めました。
「誘惑バンドル」をやってみたら、勉強の負担が減った!
誘惑バンドルを試して実感した効果と、提案したいことを以下にまとめます。
つまらない勉強でも、無理なく集中して取り組めた!
これまでは、興味のある分野以外の勉強は「やらされている感」が強く、とても楽しいとは思えませんでした。しかし、誘惑バンドルを実践すると、苦手意識のあった勉強でも負担を感じることなく、1週間続けることができたのです。
正直に言うと、勉強が楽しくなるというよりは、お菓子を食べることで、勉強している時間が苦痛ではなくなったようなイメージでした。とはいえ、誘惑バンドルで「お菓子を食べ終わるまでは頑張ってみよう」「あと1枚だけクッキーを食べながら、テキストを読み進めてみようかな」と勉強へ前向きに取り組めたことは事実です。
さらに驚いたのは、集中力も高まったこと。お菓子を食べるタイミングで思考が「勉強モード」に切り替わり、勉強を始めてから気づけば1時間以上経っていた日も。集中力の持続効果をたしかに実感できました。
勉強の習慣化にも役立つ!
また、誘惑バンドルを活用すると、そうしない場合に比べて勉強を継続しやすいと実感。
これまで、つまらない勉強だとやる気が出ず「今日はいいや」「もうやめよう」という気持ちになりがちでした。でも、楽しいこととセットにしたことで「毎日でもやりたい」と感じられたのです。
「勉強中にだけお菓子を食べる」という決まりのおかげで、お菓子を食べたい欲求が起こるのとあわせて勉強を続けられました。「お菓子を食べたい」とさえ思えば、自然と勉強をすることになるので挫折しにくく、習慣化するうえで強みだと感じました。
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つまらない勉強でも、好きなことと組み合わせれば、その負担はグッと減ります。集中力が高まって、勉強効率も上がるはず。ぜひ誘惑バンドルを試してみてくださいね。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法
ダイヤモンド・オンライン|「キツい自己研鑽が続く人」「ラクな習慣も続かない人」の決定的な違い
ケイティ・ミルクマン (2022), 『自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学』, ダイヤモンド社.
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。