「不完全燃焼の感覚」が勉強の強い動機づけになる。「たった1分」の勉強を1週間続けてわかった効果

「1分の勉強」を1週間実践してみた01

「勉強をしたほうがいいのはわかる。でも、正直やる気になれない……」
「忙しくて、勉強する時間がなかなかとれない……」

そんな悩みがある人は、ほんの「1分」だけ、勉強に取り組んでみませんか? たった1分でも勉強すれば、やる気や記憶力がアップ。勉強の習慣化もできるそうですよ。

なぜ1分の勉強が効果的なのか、筆者の実践も交えてご紹介しましょう。

「1分」がいい理由は「不完全燃焼」の感覚にあり

「たった1分では、しっかり勉強できないじゃないか。不完全燃焼だ」と思う人もいるかもしれません。しかし、この不完全燃焼の感覚にこそ意味があるようです。

『独学大全』著者の読書猿氏は、以下のように伝えています。

1分間だけでも取りかかれば、短い時間なので「もっとやりたかった」という気持ちが残ります。念が残ると書いて「残念」といいますが、これが強力なモチベーションの源になる。

(引用元:AERA dot.|独学成功のカギは「毎日1分でも学ぶ」「学んだらすぐ記録」 『独学大全』著者が指南

読書猿氏によると、この効果は、「発見者の名をとって『オヴシアンキーナー効果』と呼ばれ」るそう(引用元:同上)。同氏の著書『独学大全』には、「未完成で中断した作業を(中略)やりたくなってしまう効果」と説明されています。

勉強をあえて1分で終わらせれば、「まだ終わってないからもっとやりたい」という気持ちをうまく引き出すことができ、勉強したい気持ちを維持できるというわけです。

また、不完全燃焼の感覚は、記憶力にもいい影響があります。それを示したのが、心理学者のブルーマ・ツァイガルニク氏らが行なった以下の実験です。

教師・学生・子ども164人を対象に、段ボールを組み立てる・言葉のパズルを解くなどの簡単な作業をいくつかさせました。その作業中にツァイガルニク氏は、定期的に被験者の手を止めさせて別の作業を指示。そのあと被験者らに、割り当てられた作業の内容を思い出して紙に書かせたところ、「ちゃんと完了させた作業に比べ、邪魔が入って完了させられなかった作業のほうを、90パーセント多く覚えていた」のだそう。

(実験内容は「ダイヤモンド・オンライン|邪魔をされると目標達成しやすくなる」よりまとめた。カギカッコ内は同資料より引用)

この効果は「ツァイガルニク効果」と呼ばれるもの。読書猿氏の『独学大全』には「未完で中断したことは完成したものよりよく覚えている現象」と説明されています。これを勉強に当てはめると、途中で終わった勉強の内容は、記憶により残りやすいと言えるわけです。

読書猿氏いわく「1分あれば、英単語が一つ覚えられます。これだって立派な『学び』です」(引用元:PHPオンライン衆知|“逃げ切れる”とは限らない...中年社員の今後を左右する「1分の学び直し」)。不完全燃焼な勉強でも、積み重ねていけば、知識は確実に増えていくはずなのです。

「1分の勉強」を1週間実践してみた02

1分だけの勉強を1週間実践してみた

筆者も、1回1分の勉強を、1週間実践してみました。やったのは「スマートフォンにダウンロードした日本文学史の参考書を、スキマ時間に1分読む」という勉強です。読む際は、トレスペクト経営教育研究所代表の宇都出雅巳氏が推奨する以下の手順で行ないました。

  1. 「タイトル」「サブタイトル」を覚える
  2. 「目次」を覚える
  3. 気になった章の「小見出し」を覚える
  4. 気になった章の「本文」を読む
(宇都出氏の著書『「1分スピード記憶」勉強法 -「記憶したがる脳」になる』よりまとめた)

タイトルや目次を覚えて「この本にはこんなことが書いてあるようだ」と大枠をとらえたあとで、小見出しや本文など細かい部分のインプットに着手する――というのがこの読み方の特徴。スムーズに記憶しやすくなるのだそうです。

仕事の休憩に入ったときや電車の待ち時間、夜寝る前など、1日15回前後スキマ時間が生まれたタイミングで、タイマーをセットして1分ずつ本を読み進めていきました。

「1分の勉強」を1週間実践してみた03

1分の勉強で得られた成果と提案

1分の勉強を1週間続けてみて感じた効果や、提案したいことを以下にまとめます。

1. やる気を維持しつつ、着実に記憶できた!

筆者は以前から勉強を「気が向いた日だけやる」タイプで、モチベーションを維持できず挫折しがちでした。しかし1分の勉強を実践してみると、不完全燃焼の感覚がたしかにやる気へつながりました「また勉強したい」と前向きな気持ちを維持できたのです。

1分読むだけではうろ覚えの状態で、「あの見出しはなんだっけ? すぐに確認したい……!」と感じやすく、その感覚が、勉強を続ける動機となってくれました。

また、たとえば「紀行文学の傾向」という小見出しを覚えようとしていたところでタイマーが鳴ったときは、不思議とその見出しのことが頭から離れませんでした。不完全燃焼による記憶保持の効果も実感できましたよ。

最終的に、参考書のタイトルと目次、1章の小見出しの暗記に1週間で成功。概要をつかめたので、文学史の流れをざっくりと理解できました。

2. すでに習慣化している行動と結びつけると、より確実

一方で課題だったのは、自由時間が多い週末。スキマ時間の感覚が薄れ、「今日は休みだからいつでも勉強できる」という気持ちから、勉強をついあと回しにして1日の勉強量が少なくなってしまったのです。

そこで、「食事後(3回)」「歯磨き後(3回)」「入浴後」のように、既存の習慣とセットで勉強をすることにしました。

メンタルコーチの大平信孝氏が、「すでに習慣化していることの直後に、『新しく習慣化したいこと』をくっつけてしまえば(中略)すでに習慣化していることの勢いを借りて行動を開始できるのでうまくいきやすい」と述べていたのをヒントにしたのです。(引用元:東洋経済オンライン|三日坊主は卒業!「簡単に」行動を習慣化する方法

「スキマ時間で」のようなざっくりした条件ではなく細かくタイミングを決めたので、勉強に取り掛かりやすく、休日でも一定の勉強量をキープできるようになったと感じています。

3. 自分に合った教材や勉強法で無理なく取り組める

1分という短い時間では、やれることが少ないと思うかもしれません。でも、教材や勉強法などの自由度は、意外と高いと感じました。

テキストで解説を読んだり、赤シートで問題をサクサク解いたり。参考書のほか、問題集や単語帳なども使えそうですね。

ほかには、日本人で初めて記憶力グランドマスターの称号を獲得した池田義博氏が提唱する「1分間ライティング」もおすすめ。1分の制限時間内に、覚えた内容をできるだけたくさん書き出すという方法です(STUDY HACKER|“記憶力日本一” の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。 より)。

アウトプットによる記憶の強化が期待できるほか、もし書き出せなかった内容があればそこが要復習ポイントだと特定できるメリットがあるそうですよ。今回の筆者の実践を改善するとしたら、勉強内容を書き出して覚え具合を確認するといったかたちで取り入れられそうです。

***
まとまった時間がなく勉強を諦めている人や、やる気がなかなか出ない人は、たった1分だけの勉強でよいのでぜひ試してみてくださいね。

(参考)
PHPオンライン衆知|“逃げ切れる”とは限らない...中年社員の今後を左右する「1分の学び直し」
AERA dot.|独学成功のカギは「毎日1分でも学ぶ」「学んだらすぐ記録」 『独学大全』著者が指南
読書猿(2020),『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』, ダイヤモンド社.
ダイヤモンド・オンライン|邪魔をされると目標達成しやすくなる
宇都出雅巳 (2016), 『「1分スピード記憶」勉強法 -「記憶したがる脳」になる』, 三笠書房.
東洋経済オンライン|三日坊主は卒業!「簡単に」行動を習慣化する方法
STUDY HACKER|“記憶力日本一” の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。

【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。

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