勉強のストレスに強くなれる! 勉強に疲れた人が「全部で100個」紙に書き出すといいこと

ストレス対処法を100個書き出してみた01

忙しく働きながら勉強をしていると、心身に負担がかかるもの。疲れているのに勉強しなくてはいけないときや、なかなか点数が伸びないときなどには、特にストレスがたまりますよね。

ストレスを放置したままでは、勉強にいっそう支障をきたすもの。そうならないためには、適切にストレスに対処することが大切です。

じつは、ストレス対処法を100個書き出しておく方法で、ストレス対処がうまくなるそうですよ。その具体的な方法をご紹介しましょう。

「ストレス」と「勉強」の関係

試験本番で緊張のあまり、勉強したはずの内容が書けなかった――そんな経験はありませんか? そのとき脳は、ストレスによって働きを阻害されていたのかもしれません。

東邦大学神経科学研究室教授の増尾好則氏によると、ストレスは集中力・記憶力を低下させるそうです。なぜなら、脳の前頭前野がストレスに弱いため。

前頭前野は、記憶や集中力をつかさどる部位。その機能が、不安や心配、プレッシャーといったストレスがかかると、弱まってしまうのだそう。結果、不安を抱えながら勉強すると、なかなか覚えられなかったり、集中できなかったり……といった問題が生じるのです。

効率よく記憶したり、試験で力を十分に発揮したりするには、ストレス対策が重要だとわかりますね。

ストレス対処法を100個書き出してみた02

 

ストレス対処法を100個書き出すという方法

そこでご紹介したいのが、ストレスコーピングという方法です。

ストレスコーピングとは、さまざまなストレスに対して有効な対処法を考え、実践していくことでストレスを軽減すること。最終目的はストレスへの耐性をつけることです。

「コーピング」は英語で「対処」という意味。アメリカの心理学者、リチャード・ラザルス氏によって、ストレスコーピングは提唱されました。

ストレスコーピングの特徴は、同じ出来事でもその受け取り方は人によって違うことに着目している点です。

たとえば勉強がはかどらないとき、「明日頑張ればいいや」と楽観的な人もいれば、「自分はなんてダメなんだ……」と落ち込む人もいますよね。前者のタイプならばいいですが、後者のタイプの場合、落ち込んだ気分を放置していてはいつまでも勉強がはかどらないまま。もちろんストレスも減りません。

そんな状態は、ストレスコーピングで改善できます。「自分は、勉強がはかどらないと落ち込むタイプだ。実際にそうなったときには○○をすると、気分を切り替えやすい」というように、自分に合ったストレス対処法を知っておけば、ストレスに強くなれるのです。

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長の伊藤絵美氏は、ストレスコーピングのプロセスにおいて、対処法を「考える」だけでなく、リストとして「書き出す」ことを提案しています。

ストレスを感じたら、書き出した対処法リストからひとつ選んで試し、効かなければ別の方法を試す――この繰り返しによって、自分にマッチするものを見つけていくわけです。

伊藤氏によれば、ストレスの原因や感じ方はさまざまだからこそ、いつでも柔軟に対応できるように「100個」書き出すのが理想だそうですよ。

ストレス対処法を100個書き出してみた03

勉強のストレス解消策を100個書いてみた

筆者も、実際にストレスコーピングを実践してみました。疲れて「勉強したくないな」と思ったり、勉強内容を理解できずにイライラしたりと、ストレスを感じることがよくあるためです。そのせいで、学習習慣を継続しづらくもなっていました。

筆者が取り組んだのは、伊藤氏が紹介する「ストレスコーピングの3ステップ」です。

1. ストレスの原因を書き出す

ストレスに対処するには、まず自分がどんなことをストレスだと感じるのか、知る必要があるそう。そこで、ストレスの原因=「ストレッサー」を、思いつくかぎり紙に書き出します

ストレス対処法を100個書き出してみた04

筆者は、勉強に関するストレッサーとして「長時間机に座っていること」「苦手な勉強をすること」などを挙げました。

また、伊藤氏が推奨するとおり、「部屋が暑い」「家事をしなければならない」など、勉強とは直接関係がなさそうなストレッサーもメモしました。日常生活における些細な違和感も、積み重なると「なぜかイライラする」といったストレスにつながり、勉強に集中できなくなる可能性があるからです。

2. ストレス反応を観察する

次は、ストレッサーに対して、自分の体や心に生じたストレス反応を観察して書き出します。伊藤氏によると、ストレス反応は下記の4種類。

  • 認知:ストレッサーに対する認識
    (例:「問題を間違えた」というストレッサーに対し、「この科目は苦手だ」「勉強不足のせいだ」と認識する)

  • 気分・感情:心の内に湧いてくる感覚
    (例:腹が立つ、悔しい、無力感、不安)

  • 身体反応:身体に起きる反応
    (例:胃が痛む、頭に血が上る、汗をかく)

  • 行動:ストレスを感じたとき無意識にとる行動
    (例:無理に笑う、その場から離れる、寝る)

この4項目に沿い、自分のストレッサーに対する反応を書き出しました。

ストレス対処法を100個書き出してみた05

「自分が何に対してストレスを感じ、どう受け止めているのか」といった傾向を把握しやすくなりました。なお、自分では気づけていないものについては空欄にしています。

3. ストレス対処法を100個書く

最後に、ストレス対処法を100個リスト化したコーピングレパートリーをつくります。これをするとホッとする、気分が晴れる、頭を冷やせるといったことを、なるべくたくさん書き出すのです。

筆者は、このように書き始めました。

ストレス対処法を100個書き出してみた06

100個ものストレス対処法を書くためには、なるべく詳細に書くことがコツだと伊藤氏。「飲み物を飲む」ひとつをとっても、「アイスコーヒーを飲む」「温かいココアを飲む」と書けば、数を増やせて、対処の幅が広がります。

また、飲み物を飲む・出かけるなどの「行動的コーピング」だけでなく、頭のなかで考える「認知的コーピング」も有効だそう。たとえば、過去の成功体験を思い出す・週末の楽しみを想像する、といった感じです。

そうして筆者が考えたコーピングレパートリーは、こうなりました。

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(見やすさを考慮し、パソコンで打ち込み直したものをお見せします)

ここから先は、勉強でストレスを感じるたびに、リストのなかのどれかを実践します。

リストの上から順に試す必要はありません。ひとつ選んでやってみて、もし効果を感じられなければ、別の方法を試す――というようにストレッサーと対処法のマッチングを繰り返していくと、「こんなストレスがあるときには、こうすればいい」という法則が見えてくると伊藤氏は言います。ストレスをすばやく解消する術が身につくので、心身への負担も減らせるでしょう。

さらに、新たなストレスに対しても「どうしよう……」とうろたえず、「どう対処しようかな」と前向きに考えられるようになるとのこと。ストレスへの耐性がつくそうですよ。

ストレス対処法を100個書き出してみた07

はたして筆者は勉強のストレスに強くなれたのか?

ストレスによる自己嫌悪を回避できた!

コーピングレパートリーを用いてストレスに逐一対処していった結果、筆者はストレスを引きずらなくなりました

もともと、仕事・家事と勉強の両立に特にストレスを感じやすかった筆者。「仕事が大変だったから、今日はやりたくないな」と勉強をしない日が続くこともありました。さらに「勉強しないといけないけど、家事もできてない……」と自己嫌悪に陥り、ストレスが増える悪循環になっていたのです。

そこで、「仕事で疲れている」というストレッサーに気づいた段階でコーピングレパートリーを参照し、「お香をたく」という対処法を実行してみました。するとリラックスして気持ちを切り替えられ、勉強へのおっくうさを軽減できたのです。

一方、お香をたいてもやる気が出ない日は、別の対処法として「その日やったことを紙に書き出す」というコーピングを実行。その結果、自分の気持ちや状況を整理して自己嫌悪を回避できました

ほかのストレッサーに対しても、「コーピングレパートリーから選んで試せば大丈夫」という気持ちでいられたため、以前ほど心身に負担がかからなくなったように思います。ストレスコーピングを実践し続けていけば、ストレス耐性も高まり、勉強のパフォーマンスを安定させられると感じました。

短時間でできるコーピングがおすすめ

ストレスに対処する際は、「5分間ストレッチ」「チョコレートを食べる」など、短時間で手軽にできるコーピングが実践しやすいと感じました。

というのも、「映画を見る」「旅行へ行く」などまとまった時間が必要なものだと、実行のハードルが高くなってしまうためです。

特に、ストレスコーピングの実践初期にはたくさんの対処法を試して、ストレッサーとのマッチングをすることが重要だと実感しましたので、ぜひコーピングレパートリーをつくる段階から「簡単な対処法を挙げる」ことを意識してみてください。

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効率よく勉強を続けるために、ストレスへの対処は大切です。勉強に疲れた人やつらさを感じている人は、ぜひストレスコーピングを試してみてくださいね。

【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。

(参考)
東邦大学|ストレスと脳
コトバンク|健康心理学
PHPオンライン衆知|自分なりのストレス対処法を100個書き出し、常に持ち歩こう

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