全然運動しない社会人が衰えさせる超基本的な「3つの仕事力」。運動不足で脳は萎縮する!

リモートワーク・在宅勤務中のビジネスパーソン。運動不足で肩こりがひどい様子

テクノロジーの進化で人々の身体活動が減少するなか、新型コロナウイルス感染症の拡大は、こうした状況をさらに悪化させました。

サンパウロ州立大学の研究者らによれば、パンデミック発生時の外出制限で人々の身体活動は約33.5%減少し、座りがちな行動は約28.6%増加したそうです(2020年10月28日『Frontiers in Endocrinology』に公開)

身体活動の低下は脳に悪影響を及ぼすといいますが、それは「社会人に欠かせない3つの基礎力」にも影響があることを意味します。詳しく説明しましょう。

社会人に不可欠な「3つの基礎力」

リクルート初のフェローに就任した大久保幸夫氏(参考記事の2010年当時はリクルートワークス研究所所長)によると、社会人には以下3つの基礎力が欠かせないそうです。

 社会人に欠かせない「3つの基礎力」
  1. 対人能力:人に対応するスキル
  2. 対自己能力:セルフマネジメントのスキル
  3. 対課題能力:課題や問題に対応するスキル

(枠内参考:『PRESIDENT』2010年3月15日号、「リクルートマネジメントソリューションズ」内コラム(2020年1月10日公開))

これらは、時代や仕事が変わっても役立つ能力なのだとか。今回は、この3つの基礎力に、運動不足がどう影響するのか説明していきます。

1. 対人能力

対人能力とは、コミュニケーションスキルや営業スキルなど、他者と効果的に意思疎通を行なう能力のことです。意思疎通能力には、記憶力認知力(理解、判断、論理、言語)などが関わるのだそう(橋本行政書士事務所サイト内「高次脳機能障害の評価」参考)

◎ 運動と「記憶力」の関係

ジュネーブ大学医学部神経科学科など研究チームの論文によると、運動により私たちの体内にはアナンダミド(AEA)という物質が増強されるそうです。この物質は、脳の海馬のシナプス可塑性を促進し、記憶機能を改善するのだとか。北海道大学医学研究院教授の神谷温之氏によると、刺激に応じた神経細胞どうしの伝達強化により、脳に記憶を残す現象をシナプス可塑性というそうです。

◎ 運動と「認知力」の関係

ボストン大学の研究チームが2,770人の男女(平均年齢48.7歳グループと71.3歳グループ)を対象に調査したところ、中等度~高強度の運動を1日10~20分ほど行なう人は、良好な認知機能の傾向があるそうです。ちなみに、同大学が行なった2,354人の男女(平均年齢53歳)を対象とした研究では、ウォーキング等の軽い運動を1日1時間増やすと、脳の老化が1.1年遅くなるとわかったとのこと(いずれも2019年発表の研究)

記憶や認知機能に関わるのであれば、運動不足は「対人能力」にも悪影響を及ぼすと考えられます。

良好なコミュニケーションをとっている仕事のチーム

2. 対自己能力

対自己能力とは、物事がよき方向へと進むよう、うまく感情やストレスをコントロールしたり、スケジュールを管理したりする能力(=セルフマネジメント)のことです。

◎ 運動と「感情」および「ストレス」の関係

東邦大学名誉教授の有田秀穂氏によれば、運動不足は神経伝達物質のセロトニンを減少させてしまうそうです。セロトニンはスッキリとした気分や心の安定を保つ脳内物質。満ち足りていればストレスをうまく受け流せますが、不足すると不安やイライラが強くなってしまうのだとか。セロトニンの分泌を促すには、ウォーキングやジョギング、自転車こぎなど、激しすぎないリズミカルな運動が適しているとのことです。

◎ 運動と「スケジュール管理」の関係

東京都医学総合研究所 特任研究員の渡辺正孝氏によれば、脳の「前頭前野」損傷患者は計画を立てたり、優先順位をつけたりすることに障害を示すそうです(脳科学辞典「前頭前野」より)。ならば、前頭前野はスケジュール管理にも関係するはず。

また、ハーバードヘルスレターの編集長ハイジ・ゴッドマン氏によると、多くの研究は運動しない人よりも運動する人のほうが前頭前野(と内側側頭皮質)が大きいと示唆しているとのこと。

したがって、運動は、感情やストレスのコントロールに関わる脳内物質のほか、スケジュール管理に関わる脳領域にも影響がある活動です。運動不足になれば、「対自己能力」を損なう可能性は高いでしょう。

リモートワークでストレスをためているビジネスパーソン

3. 対課題能力

対課題能力は、問題解決や論理的思考、生産性向上に関わる能力のこと。筋道を立てて考えたり、試行錯誤を重ねて問題解決のための知識を見いだそうとしたり、仕事に集中して生産性を高めたりすることなどです。

◎ 運動と「問題解決」および「論理的思考」の関係

2018年の白眉セミナー(京都大学)では、脳の前頭前野が知的な問題解決において重要な脳領域だと伝えていますちなみに、グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長の村尾佳子氏によれば、問題解決能力が高い人は論理的思考力が高いとのこと。つまり前頭前野⇔問題解決⇔論理的思考です。

また、国立長寿医療研究センターが50歳以上の男性381名と女性393名を対象に調べたところ、身体活動が少ないほど前頭葉が萎縮しやすいとわかったのだとか。前頭前野はこの前頭葉に含まれています。

◎ 運動と「生産性向上」の関係

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長の島田由香氏いわく「集中と生産性は関係が深い」とのこと。同氏によれば、会社でリサーチを行なうと95%もの社員が「自分の生産性が高いと感じるのは集中しているとき」と答えるそうです。

一方、京都先端科学大学健康医療学部准教授の満石寿氏は、集中できないとき「お手玉でジャグリング」をするだけで集中しやすくなるといった実験例を挙げ、体を動かすことと集中力に深い関係があると示しています。つまり、運動⇔集中力⇔生産性向上というわけです。

これらをふまえると、運動は問題解決や論理的思考に関わる脳領域にいい影響を及ぼし、集中力を高めて生産性向上に貢献します。運動不足を改善しなければ、「対課題能力」の向上も見込めませんね……!

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運動不足が及ぼす「社会人に欠かせない3つの基礎力」への悪影響について説明しました。是が非でも今日から積極的に体を動かしましょう!

(参考)
Frontiers in Endocrinology|The Urgent Need for Recommending Physical Activity for the Management of Diabetes During and Beyond COVID-19 Outbreak
リクルートマネジメントソリューションズ|今さら聞けない「ビジネススキル」とは何か?
リクルートマネジメントソリューションズ|セルフマネジメントとは
交通事故サポートセンター|高次脳機能障害の評価
保健指導リソースガイド|1日にたった10分の運動でも認知能力の向上につながる 運動をしない習慣がもっとも危険
プレジデントオンライン|20代~35歳:目の前の仕事を120%で乗り越えよ
Scientific Reports|Effect of acute physical exercise on motor sequence memory
北海道大学 脳科学研究教育センター|シナプス可塑性のメカニズム
ニチレイ健康保険組合|運動習慣でメンタル強化「歩く」ことから始めよう
Harvard Health|Regular exercise changes the brain to improve memory, thinking skills
京都大学 白眉センター|『知的な問題解決能力の神経メカニズムを探る -試行錯誤によって未知問題を解決するときの前頭前野機能-』
グロービスキャリアノート|社会人に必須の問題解決能力を鍛える3つの方法
国立長寿医療研究センター|No.13 動くことは脳を鍛えること
SmartHR Mag.|「働き方改革とは生き方を決めること」――生産性向上に“集中と余裕”が必須なワケ【ユニリーバプレミアムフライデーセミナー】#04
先生に聞いてみた -京都先端科学大学ブログ-|スポーツと心理学が「学問」として結びつく
e-ヘルスネット|認知機能
脳科学辞典|前頭前野

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