あなたは、日頃ネガティブなことばかり頭に浮かんで、うんざりしてはいませんか?
「勉強のやる気が出ない……」
「仕事が大変だ……」
「あの人と仲よくするのに疲れた……」
後ろ向きな気持ちでいては、面倒な勉強や難しい仕事、退屈なコミュニケーションがますます嫌になっていくもの。
そこで今回は、ネガティブ思考を断ち切るための超絶簡単な方法をご紹介します。筆者の実践例も参考にしてみてくださいね。
私たちは、1日に「4.5万回」もネガティブなことを考えている……!
じつは、人は1日4.5万回もネガティブなことを考えているそうです。
このデータを2005年に発表したのは、アメリカ国立科学財団。そもそも人の脳は、1日1.2万〜6万回の思考を行なっているそう。そのうち約80%はネガティブなものであるため、多いときにはおよそ4.5万回もネガティブなことを考えている計算になると伝えています。
さらに、1日の思考のうち、95%は前日と同じ内容の繰り返しであるとのこと。すなわち、どうにかしてネガティブ思考を断ち切らなければ、4万回以上ものネガティブ思考が毎日繰り返されてしまうのです。当然、嫌な気分も増してしまいますよね。
そんなネガティブ思考は、脳に悪影響を及ぼすことも。脳や神経に詳しい医学博士の米山公啓氏は、ネガティブ思考によって脳の老化が早まると指摘します。というのも、脳にストレスが加わり、海馬の神経細胞が破壊されるから。そうなれば、記憶力の低下にもつながりかねません。
ネガティブ思考をポジティブに変える方法
「それほどまでに回数が多いのだから、ネガティブ思考を断ち切ることは無理なのでは……?」と思う人もいるでしょう。ですが、心理カウンセラーの中島輝氏は、ネガティブ思考が行きすぎないよう、ポジティブな思考のクセをつくることはできると言います。それには「いいこと探し」をするのが効果的だそう。
中島氏によれば、同じことを繰り返すと、ニューロン間のつながりが脳内で刺激され、思考のクセが強くなっていくとのこと。つまり、意識して「いいこと」を見つけ続ければ、「明日もいいことが起きるはず!」と期待できるようになり、潜在的な思考がポジティブに変わっていくのです。
もちろん、ポジティブ思考にはメリットがあります。心理学者の鈴木直人氏いわく、ポジティブ思考には、ネガティブ思考によって高まる不快感・心拍数・血圧などを、すばやくもと通りにする効果があるそう。また、逆境やストレスにポジティブな意味を見いだすことで、思考や行動のレパートリーが広がるとも述べています。
否定的な言葉をポジティブに言い換えてみた
普段ネガティブ思考に陥りがちな筆者も今回、中島氏の提案にしたがって、意識的に「いいこと探し」をやってみることに。次のような手順で進めました。
- 日常の些細な不満から真剣な悩みまで、否定的な言葉が浮かんだら、つどノートに書く
- その言葉をポジティブにとらえ直し、「いいこと」として否定的な言葉の隣に書く
今回は、ノート1ページの「左3分の1のスペースに否定的な言葉」を書き、「残った右側のスペースに、ポジティブにとらえ直した言葉」を書くスタイルとしました。
なお、手書きにこだわったのはせっかくなら脳にいいやり方で実践したかったから。脳神経内科医の長谷川嘉哉氏によると、キーボードで打つよりも手書きのほうが、さまざまな脳の部位が刺激されるのだそうです。
以下が、否定的な言葉を「いいこと」としてとらえ直したノートです。
いくつか抜粋すると……
- やる気が出ない → 気分が乗らなくてもいったん始めてしまえばこっちのもの
- 人の役に立てていない → どうせ自分の人生、自分を楽しませて自分の役に立てばいい
- 失敗した → 誰しも失敗はする。学べてラッキー。次に活かす
- 満員電車がうんざりする → 人のぬくもり
- 明日起きられるかな → 起きられる。いままでだって起きてきたじゃないか
ポジティブな変換をするにあたって、気をつけたことが2点あります。
ひとつめは、必ず現状を肯定すること。「いまがダメだからこうしよう」ではなく、「いまのままでも十分いい」「いまの私もよく頑張っている」と考えるのです。
精神科医の水島広子氏が、「ネガティブ思考を『ダメなもの』と否定するところからは、さらなるネガティブしか生まれない」と指摘しています。現在のネガティブな状態も受け入れるのが本当のポジティブだということ。筆者も、「やる気が途絶えた」という否定的な言葉には「よく頑張りました」と肯定するところから始めました。
ふたつめは、他人と比べないこと。公認心理師で精神保健福祉士の水口明子氏は、誰かと比べると自分の欠点がいっそう目につき、ますます落ち込んでしまうと述べています。
大切なのは、過去の自分と比べること。筆者も「他人が頑張っているのに自分はダラけている」と否定的に考えてしまっていたため、「昨日は頑張ったのだから、今日はダラけていい。休むのなんて人それぞれでいい」と、自分自身の基準で物事をポジティブにとらえるようにしました。
否定的な言葉をポジティブに言い換えたら、ネガティブ思考が軽減された!
否定的な言葉をポジティブにどんどん言い換えていったところ、自分の悩みを、もうひとりの自分へ相談している感覚になりました。他人からもらう助言とは違い、自分が自分にする助言ならば、負担になったり受け入れられなかったりするようなことは絶対ありません。ノートへ書き込んでいくにつれて、どんどん気持ちが楽になっていくのをはっきりと感じられました。そして、ポジティブ思考をスッと無理なく受け入れることができ、自然と前を向けたのです。
また、否定的な言葉をノートへわざわざ書き出したことで、自分のネガティブな考えを客観的に見ることができました。一度ネガティブ思考に陥ってしまうと、否定的な言葉がどんどん勝手に浮かんできて、頭のなかで考えるだけではポジティブ思考になりづらいもの。ですが、自分に助言するような感覚でポジティブな言葉を文字にしていったところ、おのずとネガティブに考えることも減りました。
どうしてもネガティブに考えてしまいがちな人は、ポジティブのクセが強くなるまで、紙に書き出して実践してみることをおすすめします。
***
もし次にネガティブなことが思い浮かんだら、ノートをさっと開いて、ポジティブに変換してみてください。あなたのネガティブな脳も、きっとポジティブに生まれ変われるはずです。
(参考)
STUDY HACKER|「夜をどう過ごすか」が自己肯定感を左右する。明日も最高のスタートを切るための大切な夜習慣とは?
Mission.org|To Have What You Want, You Must Give-Up What’s Holding You Back
Woman type|ネガティブ思考は「脳の老化」を早める! 人生100年時代に女性たちが意識すべき“脳ケア”とは/医師・米山公啓さん【医師監修】
公益社団法人日本心理学会|ポジティブ感情はなぜ必要か?
STUDY HACKER|医師「手書きが脳にいいのは当然」――脳を刺激する“最高のアナログ習慣”してますか?
Dybe!|「まずはネガティブを認めることから」精神科医に聞く、自己肯定感を持ってラクに生きる方法
Suits woman|他人と比べても優越感と劣等感を持つだけ。“生きづらさ”を取り除く考え方
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。