「外資で働いてみたいけれど、どのような英語スキルが必要なんだろう?」
「外資でキャリアを積むには、いまの自分の英語力で足りるのだろうか?」
そう疑問に思っている方はいませんか。
外資で活躍するための英語力は、コロナ禍において変化を遂げています。
今回は、外資で必須の6つの英語スキル、そしてポスト&ウィズコロナの時代に外資で求められる英語力について、最新の情報をお伝えします。外資企業への転職を考えている方、外資企業でキャリアを伸ばしていきたい方、必見ですよ。
外資で英語が求められる6つの場面
外資では、高い英語力が不可欠。そう考えている方が多いでしょう。
じつは、ひとくちに外資系といっても、その実態はさまざま。英語が日常的に必要な企業や部署もあれば、それほど必要とされないところもあります。
たとえば、本社スタッフとの密なコミュニケーションが欠かせないところや、チーム内に英語話者がいるところでは、スタッフ全員に相当程度の英語力が求められます。一方、本社とのコミュニケーションが一部の経営幹部に限定されているところでは、入社時には高度な英語力が必須でない場合もあります。
ただし、英語が使いこなせると、キャリアアップの選択肢が格段に増えることは事実。外資で英語を必要とする場面は、大きく分けて以下の6つです。
- スモールトーク
- メール対応
- 電話対応
- 社内会議
- 資料作成
- 取引先との商談
1つずつ説明しましょう。
1. スモールトーク
スモールトークとは、挨拶や雑談のこと。内容は、「おはよう、週末はどうだった?」のようなちょっとしたやり取りから、「昨夜の大リーグの~は......」といった会話までさまざま。頻度は朝・昼・夕方の1日3回ほど。それぞれほんの数秒で終わることが多く、業務に差し障りがない範囲でみな話しています。
スモールトークができるとチーム内の雰囲気がよくなりますし、まったく知らない人と打ち解けるきっかけにもなります。周囲の人と円滑な関係を築くために、スモールトークに対応できる英会話スキルが必要になるでしょう。
2. メール対応
近年、ビジネスにおけるコミュニケーションの主流はメールやチャットとなりました。それは外資でも同じこと。メールは口頭でのやり取りと比べて時間がかかりがちですが、メール文面の作成に手間取っていたら仕事を効率的に進めることはできません。
外資で働くためには、メールやチャットに正確かつ迅速に対応できる英語力が不可欠。ビジネスメールのリーディング・ライティングスキルが要求されていることは言うまでもないでしょう。
3. 電話対応
1980年代~90年代後半のモルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズNY本社では、ほとんどのコミュニケーションは電話でした。2021年現在、日本支社のシニアマネージャーがNY本社とコミュニケーションをとる手段は主にメールとなりましたが、重要な事案に関してはいまも電話で話しています。
電話にしっかり対応できるリスニング・スピーキングスキルがあれば、外資でキャリアを伸ばしやすくなるでしょう。
4. 社内会議
Zoomなどのウェブ会議ツールを使用した社内会議は、外資でも頻繁に行なわれています。チーム内のミニ会議は日本語で行なわれることもありますが、アジア統括本部などを含む大きな社内会議は英語のみ。英語による社内会議は避けて通れない道だと言えます。
会議の頻度は、業種やポジションによって異なります。頻度が一番高いのは、金融業界のシニアマネージャー。ほぼ毎日、複数の英語社内会議への参加が求められます。外資で活躍したいなら、会議に積極的に参加するためのリスニング・スピーキングスキルが欠かせません。
5. 資料作成
外資の東京支店では、クライアントが日本人であるため、日本語でプレゼン資料を作成するのが基本。ただし上司が日本人以外であれば、英文資料の作成や、英語での口頭説明を求められる場合があります。また、海外本社や海外支店で使用した英文資料を、そのまま日本のクライアントに使用することも。
英文資料の作成スキル、資料について英語で説明するスキルだけでなく、英文資料を読み解くスキルも重要になるでしょう。
6. 取引先との商談
取引先をはじめとした社外との商談やプレゼンテーションは、東京支店の場合は日本語で行ないます。しかし、ひとたび海外本社に移ると、英語による商談の機会は必然的に増えます。
正式な商談前には、状況確認を目的としたミーティングを実施します。ミーティングは、約30分の情報交換程度で終わるものもあれば、電話で済ませることも。そのなかから提案できそうな内容が見つかると、しっかりとしたプレゼン資料を用意したうえで、あらためて商談やプレゼンテーションの機会を設定します。いずれにせよ、複雑な商談に対応できるだけの高度なスピーキング力が必要となるでしょう。
このように外資では、「読む」「聞く」「話す」「書く」という英語の四技能が総合的に求められているのです。
外資入社時に必要な英語スキル
上記6つの英語スキルは、1から6に向かって難易度が上がっていきます。さらにこれらは、大きくふたつに分けられます。
ひとつめは、1~3(スモールトーク・メール対応・電話対応)の英語レベル。ふたつめは、4~6(社内会議・資料作成・取引き先との商談)の英語レベル。
入社時には、各ポジションに応じて、以下のどちらかが求められます。
- 1~3の英語レベル(スモールトーク・メール対応・電話対応)
→秘書としての採用 - 1~6の英語レベル(スモールトーク・メール対応・電話対応・社内会議・資料作成・取引き先との商談)
→プロフェッショナルとしての採用
※コンサルティングファームであれば、コンサルタント・アナリストなど。投資銀行であれば、セールス・トレーディング・アナリスト・マーケティング・コーポレートバンキングなど(呼称は企業によって異なる)
入社時に必要な英語力は企業や採用場所、部署やポジションによっても異なるため一概には言えませんが、ここではモルガン・スタンレーとリーマン・ブラザーズのNY本社、東京支社を例に説明しましょう。
【NY本社の場合】
秘書採用では1~3、プロフェッショナル採用では1〜6の英語スキルがあって当たり前。大学生やMBA(経営学修士)生対象の新卒採用でも、資料作成やクライアントとのミーティング参加などの実務をこなせる英語力があることが前提となります。
【東京支社の場合】
秘書採用において1~3が必須となるのは、NY本社同様。一方、プロフェッショナル採用においては、事情が少し異なります。経営幹部との英語での意思疎通に支障がなければ、採用候補となりうるのです。ただし、同じレベルの候補者が複数人いた場合は、英語力が高い人が有利になります。
入社時に求められる英語レベルはその他さまざまな要因によっても左右されますが、いずれにせよ、入社前から高い英語力をつけておくのに越したことはありません。
コロナ禍における「外資で必須の英語力」
コロナ禍において、外資で要求される英語スキルに変化が見られるようになりました。
ポスト&ウィズコロナの時代における働き方の大きな特徴は、リモートワーク。 リモートワークが加速した結果、「発言力」と「英作文力」がいままで以上に求められるようになったのです。それぞれ解説しましょう。
発言力
リモートワークの広がりとともに、ウェブ会議が拡大していきました。Zoomをはじめとしたウェブ会議では、発言した人の顔がパソコンの画面にはっきり映ります。逆に言えば、発言しない限り、存在感を放つことができないということ。存在感が薄れ、目立たなくなる——個人の存在感が大切となる外資では、これは命取りとなりかねません。
あなたがたとえ人の話に一生懸命に耳を傾け、有益な考えをもっていたとしても、それを周囲に伝えられなければ意味がありません。複数人が話すなか、適切なタイミングで、価値のある発言ができるか否か。このような「発言力」が、これまで以上に問われるようになったのです。
英作文力
リモートワークによって、対面で直接話す機会は大幅に減りました。代わりに増えたのが、チャットやメール。コミュニケーションが口頭での会話から文字ベースのチャットに置き換わったため、英文を書く機会が圧倒的に増えたのです。その結果、より卓越した英作文力が求められるようになりました。
リモートワークにおいて存在感を発揮しながら効率よく仕事を行なうために、外資で求められる英語力も少しずつ変化しているのです。
外資で評価されるのは「スマートな英語」
では逆に、コロナ前後で変わらないことはなんでしょう? それは、外資では常に「即戦力」が求められるということ。英語力においては、成果を出すことに直結する「スピード」と「正確性」が評価の基準となります。
スピード
給与水準の高い外資では、おのずとコミュニケーションコストが上がるもの(第1回『モルガン・スタンレーの新入社員が最初の1週間で叩き込まれる5つのこと』参照)。対面からリモートワークに変わっても、コストのかからないコミュニケーションが肝となるのは同じです。
コミュニケーションコストを削減する鍵のひとつは、スピード感。情報を瞬時に理解し、すばやく伝えるための英語力が必要になります。
スピードについていけるだけの力を身につけておかないと、まわりから取り残され、いずれは退職勧告を受けることになりかねません。数多くの業務をスピーディーにこなすことのできる英語スキルが、外資では求められているのです。
正確性
コミュニケーションコストを削減するふたつめの鍵は、正確性。正確でなければ、やり取りの回数が増え、コミュニケーションに無駄が出てしまいます。効率よく仕事を進めるために、正確に話すスキルは基本中の基本です。
さらに外資では、話すことと同様に書くことが求められます。資料作成の機会が多いため、「英語で正確に書く技術」がないと、キャリアアップへの道が閉ざされてしまうことも。外資で活躍するためには、正確なライティングスキルが不可欠です。
正確性に自信のない方は、各種ツールの力を借りることも有効。たとえば、「DeepL」のようなAI翻訳ツールや、「Grammarly」「Hemingway Editor」をはじめとする単語・文法の校正ソフトには無料サービスもあり、手軽に使うことができます。これらのツールを使って弱点をカバーしながら、ライティングスキルそのものも日々磨き続けていくとよいでしょう。
外資でキャリアを伸ばすのは、スマートに仕事をこなしながら、大きな成果を出す人。スピーディかつ正確な英語運用ができれば、他の採用候補者よりも一歩抜きん出ることができます。
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今回は、外資で活躍するために重要な英語スキルをご紹介しました。外資への転職を検討中の方、外資でさらにキャリアアップしたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
【ライタープロフィール】
Stephen Pong(スティーブン・ポング)
青山学院大学卒。モルガン・スタンレーNY本社に新卒で入社し、東京支店でも勤務。リーマン・ブラザーズに移り、東京支店およびNY本社でキャリアを重ねたのち、メリルリンチ日本証券にて初代WEBマネージャーを務める。その後、ライブドアへ転職し、WEB事業部・戦略コンサルティング事業部(電通へ出向)・ファイナンス事業部にて勤務。現在は独立し、ビジネスパーソン向けに外資系企業への転職支援を行なう。
■連載『外資で働くための「一流ワークハック術」』一覧はこちら