「勉強を毎日続けたい。だけど、思ったように続かない……」
そんな悩みを抱える方へ、脳の仕組みにアプローチして勉強の習慣化を成功させる方法をご紹介します。キーワードは「4日間はひとつの勉強だけ」。筆者も挑戦してみました。その納得の成果をぜひご覧ください。
- 勉強が「続かない」のはなぜなのか
- 勉強を「続ける」ためにやるべきこと
- 「4日間、ひとつの勉強だけ」に取り組むメリット
- 「4日間、ひとつの勉強だけ」のルールで勉強の習慣化にチャレンジ!
- 実践してわかった、勉強を4日間サイクルで習慣化するコツ
勉強が「続かない」のはなぜなのか
私たちがなかなか勉強を続けられないのには、脳の防衛本能が関係しています。
メンタルコーチの大平信孝氏によると、脳には、できるだけ変化を避けようとする性質があるのだそうです。「勉強を続けるぞ!」と思っても三日坊主になってしまうのは、それまでの “勉強していなかった” 状態から “勉強し続ける” 状態へと変わることを、脳が嫌がっているせい。
特に、習慣をいきなり大きく変えようとすると、防衛本能が強く働くとのこと。やる気に任せて勉強を一気に習慣化しようとしてもうまくいかないのには、こういう原因があったのです。
勉強を「続ける」ためにやるべきこと
では、どうすれば勉強を続けられるようになるのでしょうか。
大平氏によると、脳は変化を嫌う一方で、少しずつの変化なら受け入れることができるそう。そこで、まずは「小さなアクション」から始めることをすすめています。
たとえば、いきなり「毎朝1時間勉強しよう」と思っても、脳にとっては変化が大きすぎるもの。それを「毎朝5分だけ英単語帳をめくろう」というような小さな目標に変えれば、脳はより受け入れやすくなります。そして、5分の勉強ができるようになったら、10分、15分……と、小さく変化させながらステップアップしていけばよいわけです。
このように、小さな目標をひとつずつこなして、最終的に目指したい目標の達成率を上げることを「スモールステップの原理」と呼びます。心理カウンセラーの中島輝氏によれば、この原理によって快感情が生じると、「報酬系」という脳回路が活性化するそう。そして脳科学者の篠原菊紀氏によると、快感情は「線条体」という部位により行動と結びつくとのこと。
つまり、小さな目標をひとつずつこなして「できた! 嬉しい!」と思えると、さらなる目標に向けて行動を続けられるようになるのです。
「4日間、ひとつの勉強だけ」に取り組むメリット
作業療法士の菅原洋平氏は、勉強を習慣化するには「4日間、ひとつの勉強だけを行なう」というルールを設けるのが効果的だと述べています。
たとえば……
1~4日め:朝に「英単語5分」
5~8日め:朝に「英単語5分」+「リスニング5分」
9~12日め:朝に「英単語5分」+「リスニング5分」+「文法問題5分」
といったイメージで、日常のなかに “1コマだけ” 新たな勉強を入れ、それを4日間こなす……というサイクルを繰り返していくのです。というのも、新たに始めた1コマの勉強が、自分にとっての日常になるには、最低4日必要だからだそう。
ひとつの勉強を4日以上継続すると、脳はその勉強をするのにエネルギーを使わなくてよくなります。つまり、勉強という行動が、脳の防衛本能によって守られるようになるのです。これこそが習慣化に成功した状態。
その状態に至ってから、勉強時間や教材を増やし、あらためて4日以上継続することを繰り返せば、無理なく勉強を習慣化できるというわけなのです。
「4日間、ひとつの勉強だけ」のルールで勉強の習慣化にチャレンジ!
筆者も実際に「4日間はひとつの勉強だけ」という方法で勉強を習慣化できるか試してみました。菅原氏は、新たな勉強に最低4日かけること以外は特に指定していなかったので、筆者なりに工夫して以下の手順で実施しました。
- 最終目標の設定
今回は「1日45分の勉強を習慣化すること」を最終目標としました。 - スモールステップの設定
1日45分の勉強に行き着くために、今回は「15分→30分→45分」と15分ずつ勉強時間を伸ばそうと決めました。 - スケジュールの作成
1日のどの時間に勉強するか、スケジューリングをしました。菅原氏によると、習慣化には最長2週間かかるとのことなので、下記のような2週間分の表をつくりました。
各欄の意味は次のとおりです:
- 時間→勉強できそうな時間帯を書いておく欄。筆者は仕事のスケジュールが不安定なため、あえて緩めに設定しました(13:00~16:00のどこかで15分勉強する、という具合)。
- 記録→実際に勉強した時間帯と内容を書く欄。
- 改スケジュール→次のステップに進めそうなとき、新しい勉強時間を書き込む欄。
- 4日間以上実践
組んでみたスケジュールで勉強を進めました。
なお今回筆者は「1分間ライティング」で勉強しました。これは記憶力日本一に6度輝いた経験をもつ池田義博氏が提唱する方法で、「勉強して記憶したことを1分間でひたすら書きまくり、記憶度を確かめる」というものです。勉強時間内は教材の本を読み続け、最後の1分で覚えたことをチェックしました。
(※1分間ライティングについて詳しくはこちら『“記憶力日本一” の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。』)
はたして、1日45分の勉強を習慣化できたのか――筆者の2週間の歩みをご覧ください!
1~6日め(15分×6日間)
まずは「1日15分」の勉強から。1冊目の教材は、苅谷剛彦著『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』です。スケジュールは順調に消化……に見えますが、ここで、最低ラインの4日間より2日長くとりました。その理由は後述します。
7~10日め(30分×4日間)
「改スケジュール1」の欄に青字で書いたように、7日めから勉強時間を「30分」に増やしました。同様に青字で勉強記録もつけ、4日間で板についたので、次のステップへ。
11~14日め(45分×4日間)
いよいよ勉強時間を「45分」に。「改スケジュール2」の欄に赤字で45分の時間設定を書き込んでいます。
1冊めの読破が見えてきたので、もう1冊追加(甲野善紀:松村卓著『「筋肉」よりも「骨」を使え!』)。30分を1冊めの教材、15分を2冊めの教材という配分で勉強しました。
45分勉強に着手して4日めには苦もなく勉強することができ、2週間で45分まで勉強時間を増やすことに成功しました! 今回の取り組みはいったんここで終了としましたが、次は1時間に増やしても大丈夫だという実感があります。
ちなみに……1分間ライティングで勉強したノートの紙面は、このようになりました。最後の1分間で、覚えたことをひたすら書きまくった結果です。
実践してわかった、勉強を4日間サイクルで習慣化するコツ
「コンディションの悪いとき」に目を向けるといい
勉強を習慣化するうえで最も重要なのは、体力やスケジュールに余裕がない日でも勉強に取り組めるようになったか、しっかりと見極めることだと感じました。
じつは、今回筆者が「1日15分」の勉強に6日間かけたのには、こんな事情がありました。1~3日めは順調だったものの、忙しくて疲れていた4日めは勉強をするのがおっくうで、「勉強にエネルギーを使わなくていい状態」にはほど遠く……。どうにか勉強自体はできたものの、次の日から安心して勉強時間を増やせるとは思えない状態でした。
そこで、5日め以後も15分の勉強を継続したところ、4日めと同様にひどく疲れていた6日めには、苦労せず勉強に成功。そこでやっと、「1日30分」に移れると判断できたのです。
もしも5日めから無理に勉強時間を増やしていたら、勉強に必要なエネルギーが増す一方になり途中で挫折していたかもしれません。「疲れていても、勉強にすんなり向かえるか?」は、習慣化のステップを次に進めていいかを判断する基準になると思いました。
勉強の習慣化は「記録」をつけると進めやすい!
簡単な勉強記録をつけたことが、勉強を習慣化するうえで大きな助けになりました。
というのも、勉強時間や内容を可視化すると、「続いてる!」という達成感を毎日得ることができたから。勉強記録が快の感情をもたらし、行動意欲へつながったと言えそうです。
実際、イギリスのシェフィールド大学などの研究で、目標までの進捗を記録することが目標達成率の向上につながると報告されています。ぜひみなさんも、簡単なものでもいいので勉強記録をつけるようにしてみてください。
なお、勉強時間を増やすたびに記録の色を変えてみたところ、習慣化の軌跡がひとめでわかり、達成感を得やすいと感じましたよ。色づかいを工夫することもおすすめします!
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千里の道も一歩から。小さなことからコツコツと始めて、勉強習慣を手にしましょう!
(参考)
東洋経済オンライン|意志の力は不要!「すぐやる人」になるコツ2つ
STUDY HACKER|「先延ばし癖」どうすれば解消できるのか? “すぐやる” ための『3つの習慣』
PRESIDENT WOMAN Online|"仕事も勉強も三日坊主"が治る3つのステップ
東洋経済オンライン|子どもを「勉強好き」に育てるとっておきの秘訣
菅原洋平(2020),『ヤバい勉強脳』, 飛鳥新社.
STUDY HACKER|“記憶力日本一” の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。
苅谷剛彦(2002),『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』, 講談社.
甲野善紀, 松村卓(2014),『「筋肉」よりも「骨」を使え!』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
PubMed|Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。