喜怒哀楽を表に出したがらない “自称ポーカーフェイス” はいずれ心身がやられていく

喜怒哀楽の感情はもっと出すべき01

怒りや哀しみに代表されるような「喜怒哀楽」を表に出しすぎず上手にコントロールすることは、大人として、あるいは社会人として、たしかに必要なスキルです。感情を我慢しながら冷静に物事にあたっていかなければならない場面が、私たちには多々ありますよね。

しかし一方で、感情を捨て去ることができないのもまた事実。感情は、私たちにとって自然な “反応” であり、出来事を自分のものとして受け入れるための “対処” でもあるからです。そのため、感情をずっと押し殺したままでいることは、時に心身に大きなストレスをため込むことにもつながります

今回は、喜怒哀楽を表に出さないように頑張りすぎている人に向けて、うまく感情を外に発散させる方法をご紹介しましょう。

「喜」を表現できないと寿命が短くなる!?

まずは、最初の「喜」について。喜びと健康の関係について、2001年に発表された興味深い研究があります。ケンタッキー大学のデボラ・ダナー教授が、180人の修道女を対象に大規模な追跡調査を実施。平均年齢22歳の修道女たちに自叙伝を書かせ、60年後に、その「文章」と彼女たちの「寿命」について分析を行なったのです。その結果、“喜び” をはじめとするポジティブな言葉を多く使っていた修道女は、そうでない修道女に比べて10年も長生きしていたことが判明したのです。

ロンドン大学の別の研究では、幸福度の高低によって、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)の含有量に32%もの差が生じることもわかっています。コルチゾールは、糖尿病や高血圧にも関連する物質。毎日ポジティブに過ごして幸せを噛みしめられるかどうかは、私たちの寿命や健康にも遠からず関わってくるのです。

では、「喜び」を表現するにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、“ポジティブ心理学の父” と呼ばれる心理学者のマーティン・セリグマン氏が提案する「感謝の手紙」をご紹介しましょう。これは文字通り、家族や仕事仲間など、普段から関わることの多い人への感謝を手紙に書き起こすというもの。抑うつ感が減ったり幸福感が高まったりといった効果が得られることも実験で証明されています。

手紙が気恥ずかしかったら、小さなメモ用に書くだけでもいいかもしれません。「いつも料理をつくってくれてありがとう」「スライド資料を丁寧に仕上げてくれて助かった」など、些細なものでもかまわないので、感謝の気持ちを伝える習慣をつくってみてはいかがでしょうか。日常的に物事のポジティブな側面に意識を向ける機会にもなりますから、思考もポジティブになり、より「喜」の感情を噛みしめられるようになるでしょう。

喜怒哀楽の感情はもっと出すべき02

「怒」を表現できないと健康に悪影響が!?

続いて、我慢せざるをえない場面も多い「怒」について。テネシー大学のサンドラ・トーマス氏らが行なった調査により、怒りを我慢することで「ガンの罹患率が上がり」「ガンの進行が促進されてしまう」ことが判明。ほかにも、心理学者のロバート・W・ファイアストーン氏は、「頭痛・高血圧・心血管疾患のリスクを高める」といったことも指摘しています。私たちの想像どおり、怒りの我慢は健康によくないようですね。

しかし、怒りの表現は、あらゆる感情表現のなかでも特に慎重に行なわなければいけません。なぜならば、怒りは容易に「敵意」や「攻撃」といった方向に転化してしまうからです。

臨床心理士のみらー氏は、感情を適切に表現するために「DESC法」をすすめています。これは、相手を不快にさせずに自分が伝えたいことを伝える「アサーション」と呼ばれる技法の一種で、以下の4つのステップで主張を整理します。

【D:Describe(描写する)】状況や事実を客観的に述べる
【E:Express(表現する)】自分が感じていることや意見を言葉に表す
【S:Specify(提案する)】相手にしてもらいたいことを提案する
【C:Consequences (結果を伝える)】提案したことを実行してくれた場合/実行してくれなかった場合の結果を伝える

例として、「締め切りに遅れたのに謝罪がなかった」場合を想定して、DESC法を用いて主張を整理してみましょう。

【D:Describe(描写する)】→「締め切りに遅れたよね?」
【E:Express(表現する)】→「連絡がなかったから、なぜ遅れているのか、いつごろになりそうなのかわからなくて不安になったよ」
【S:Specify(提案する)】→「守れる締め切りを教えてほしいし、遅れそうなときは早めに連絡が欲しいな」
【C:Consequences (結果を伝える)】→「締め切りを守ってくれると信頼できるし、遅れそうなときに連絡してくれれば安心できるよ」

このように、事実と自分の意見をしっかり分けることで、仮に怒りの感情がわいたときも、建設的な形で表現できますよ。

喜怒哀楽の感情はもっと出すべき03

「哀」を表現できないとストレスがたまり続ける!?

みなさんは、哀しいときに泣いていますか?

生化学者ウィリアム・H・フレイ氏の研究によれば、哀しいときに流す涙には抗ストレス作用があるとのこと。玉ねぎを切ったときに出るような涙と “感情がたかぶったとき” の涙を比較分析したところ、後者にストレスの原因物質が含まれていることがわかりました。つまり私たちは、感情的な涙を流すことで、体内のストレス原因を外に排出できるのです。泣くと不思議とすっきりするのはそのせいかもしれませんね。

また、マーケット大学のマーガレット・クレポー氏が、胃潰瘍や大腸炎などストレスに関連する病気を持った人たちと健康な人たちとの比較調査を行なったところ、前者の人たちは泣くことを「弱さ」や「コントロールの喪失」とネガティブにとらえ、健康な人たちに比べて涙を流す機会も少ないことが判明しました。涙を流すことが病気リスクを低減させているかもしれないことが示唆されたわけです。

とはいえ、哀しい出来事に遭遇したときに人目もはばからず泣くのは抵抗があるかもしれません。では、週末に泣きためておくのはどうでしょうか。脳生理学者の有田秀穂氏は、涙のストレス解消効果は数日にわたって続くことから「週末号泣」をすすめています。やり方はいたって簡単で、週末に自分の好きな感動的な作品(映画や小説など)に触れて涙を流すというもの。過去に泣いたことがある作品でも効果があるといいます。

泣く暇もないほど忙しい日々をおくっている人は特に、休みの日に時間をとって、ぜひ思いっきり泣いてみましょう。

喜怒哀楽の感情はもっと出すべき04

「楽」を表現できないと痛みに強くなれない!?

オックスフォード大学のチームが発表した、声をあげて楽しく笑うことの効果についての研究結果があります。この研究では2つの実験が行なわれました。1つめは、被験者に「笑える番組(コメディドラマ)」あるいは「笑いの要素の少ない番組(ゴルフの試合や野生動物の紹介など)」を観てもらいながら軽度の痛みを与える実験。2つめも同様、被験者に「スタンダップコメディ」あるいは「演劇」を観てもらう前後で空気椅子をしてもらう実験です。

その結果、15分間笑っただけで、痛みに対する耐性が10%前後も上昇することがわかりました。この結果は、笑った際に、鎮痛効果をもたらす「エンドルフィン」という神経伝達物質が分泌されたことによるものと考察されています(エンドルフィンにはこのほか、快感や陶酔感を生み出す効果もあり)。

また、近畿大学と吉本興業などのチームが、20代から60代の男女20人に吉本新喜劇などを見せ、笑顔になった回数の気分の関連性を調べたところ、笑いによって「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアが減少することも判明しました。このように、楽しいときに声をあげて笑うことは、痛みに対する耐性を高めたりネガティブな感情を抑制したりといった効果を私たちにもたらしてくれます

ポーカーフェイスを演じず、笑いたいときには素直に笑う。たったこれだけで、あなたにはいろいろなメリットがふってくるのです。

***
どんな感情でも、押し殺していてはストレス等の原因になります。ぜひ自分の心に正直になれる機会をつくってみてください。

文 / 谷口亮祐

(参考)
東洋経済オンライン|「楽観的」というだけで、10年も寿命が伸びる
WIRED|「幸福は最良の薬」を裏付ける研究成果
HUFFPOST|The Surprising Benefit Of Writing A Gratitude Letter To My Father
PubMed|Anger and cancer: an analysis of the linkages.
Psychology Today|The Simple Truth about Anger
ねとらぼ|他人を傷つけずに自分の言いたいことを伝える「DESC法」のすすめ
The New York Times|BIOLOGICAL ROLE OF EMOTIONAL TEARS EMERGES THROUGH RECENT STUDIES
日刊SPA!|「泣くことは最高のストレス解消法」と脳の研究者が推奨
AFP|「笑いは百薬の長」は真なり、英オックスフォード大研究
プレジデント・オンライン|「笑い」がもたらす痛み緩和、驚きの身体反応 ゲラゲラ笑うとエンドルフィン出る
近畿大学|産学連携で「笑い」の測定方法を開発 「笑い」が身体・心理的に与える影響を医学的に検証

 

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