これであなたも”人たらし”に!? 周囲の人が思わず手伝いたくなる「お願いの作法」

オフィスにて複数の男女がテーブルに集まり、パソコンや書類を広げ笑顔で仕事をしている

仕事をするうえで、周囲の人との協力は不可欠。しかし、「うまく人を巻き込んで協力者を増やす」ことに苦手意識を感じている人もいるのでは?

たとえば「同僚が仕事を頼むと、みんな納得して行動するのに、自分が言っても反応がいまいち。どんな違いがあるのだろう」といった具合です。

「あの人の依頼なら即対応しよう」と思ってもらうためには、仕事の頼み方を工夫するといいかもしれません。そこでこの記事では、相手のモチベーションを高めて仕事に巻き込み、成果を挙げている人がやっている仕事の頼み方を3つご紹介します。

【ライタープロフィール】
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

1. 3Wと依頼形で依頼する

まずはじめに上手な依頼の仕方の「基本」を知りましょう。

おすすめなのは、「3W依頼形」というかたち。3Wとは「どうして(Why)・なにを(What)・いつまでに(When)」の3つのW。3Wを明確に伝えたうえで「○○していただけないでしょうか?」と依頼形で伝えるのです。

すると相手に要望がわかりやすく伝わります。「きちんとやってください」「なる早でお願いします」のような曖昧な伝え方では相手に情報が十分に伝わらず、行動してもらうことが期待できなくなってしまいます。

また依頼形で頼むことはビジネスの場面において重要です。「これをやっておいて」なんて指示されるより、「〇〇をしていただけますか?」と頼まれたほうが気持ちよく仕事を引き受けることができますよね。さらに、依頼形で頼むと相手に断る余地が生まれます。断る余地のない依頼は偉そうな印象を与えてしまいますし、相手の協力しようという意欲をそぎやすくなります。

そんな3Wと依頼形を意識した頼み方をアサーティブネスと呼びます。近畿大学総合社会学部の教授で、アサーティブジャパンの認定講師である堀田美保氏は次のように説明します。

本当に自分が伝えたい大切なメッセージを、シンプルかつ具体的にわかりやすく伝え、その上で、相手と会話のキャッチボールをしながら、一緒に問題解決をするのが、アサーティブネスのコミュニケーションスタイルです。

(引用元:RMS Message, vol.48, pp.16-18|「アサーティブネスで心理的安全性を形成する」

自分の思いを明確かつ具体的に伝えながら、一方的にならないよう相手と意思疎通を図るのがアサーティブなコミュニケーション。特に仕事を頼む場面では依頼する側の一方的なメッセージになってしまいがちですが、相手の都合や要望を聞くことが重要なのです。

では、スケジュールの変更連絡をしてもらう場面をアサーティブな依頼の仕方でやってみましょう。

NG例「スケジュールの変更は、すぐに教えてください」

OK例「取引先と調整をするので(=Why) スケジュールの変更は(=What)翌日には(=When)教えていただけないでしょうか?」

3Wを明確にすることで、要望がとても具体的に伝えられますね。また、「していただけないでしょうか?」と依頼形にすることで、相手に断る余地を与えています。これで依頼された側は自分の都合や要望を言いやすくなります。

明確でわかりやすく、相手とのコミュニケーションができる余裕のある、まさにアサーティブな依頼の仕方です。3Wと依頼形のフォーマットを、さまざまな依頼の場面で使ってみてください。

並んで座り、タブレットを手に語りかける女性と、それを聞く男性

2. 選択の自由を与える

仕事を頼むとき、ただ「○○してください」とお願いしていませんか? それでは相手に動いてもらうことはできません。そこで、「AかBをしていただけませんか?」のように選択肢を与えたうえでお願いをしてみましょう。

例として、打ち合わせを頼みたい場面を考えてみます。「明日、打ち合わせをお願いできませんか?」という伝え方だと、相手の答えはイエスかノーのどちらかです。しかし「明日か明後日、打ち合わせをお願いできませんか?」と伝えれば、相手は明日か明後日のどちらかから選んでくれる可能性が高まります。アサーティブなコミュニケーションのポイントである依頼形を保ちながら選択肢を与えることで、ノーの選択に意識が向きにくく、いつできるか、どうしたらできるかに意識が向くようになるのです。

『伝え方が9割』を著書にもつ佐々木圭一氏は「2つ以上の選択肢を並べることで、相手が前向きに行動できるようにする技術」として「選択の自由」を挙げています。「『AかBどっち?』と言われると、人はどちらかを選んでくれる可能性が高まる」のだとか。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|本当に「伝え方が9割」なのか? 実験で検証(後編)「募金よろしくお願いします」の伝え方を変えたら、協力者が約1.6倍に!

「選択の自由」の効果は、立教大学経済学部による検証実験で実証されています。大学のキャンパス内で「1分アンケートか5分アンケート、どちらか答えていただけませんか?」と声をかけ、協力してくれる人の人数を調査しました。すると、一般的な「アンケートにご協力お願いします」という声かけと比べ、「約1.4倍の人がアンケートに協力した」のです。(カギカッコ内引用元:同上)

つまり、選択の自由を与えることで協力者を増やすことができたのですね。

では、仕事の依頼をする場面での活用例も考えてみましょう。

 資料の作成を手伝ってほしい

→「売上のまとめか顧客情報、どちらかの作成をお願いできませんか?」

 相談に乗ってほしい

→「水曜日か金曜日、お時間をいただけないでしょうか?」

 アドバイスをもらいたい

→「本日の提案について、口頭かチャットでご意見をうかがえますでしょうか?」

このように、アサーティブなコミュニケーションを意識しつつ選択肢を与えることで、その中から相手が自分で選ぶため「やらされている」感が少なくなり前向きに行動できそうです。これであれば仕事を依頼したときに、気持ちよく協力してもらえますね。

デスクに向かって並んで座り、書類を手に語りかける女性とそれを聞く男性

3. 相手の能力を評価する

周囲を巻き込む頼み方をするためには、アサーティブなコミュニケーションを意識することに加え「相手の能力をほめる」ことも有効です。どんな人にも「他人に認められたい・ほめられたい」という承認欲求があると言われているからです。

たとえば「○○さんはプレゼンがとても上手なので、私のプレゼンにアドバイスをいただけませんか?」といったように、「あなただからこそお願いしたい」という気持ちを伝えましょう。

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀氏は、本来「人は、人から頼られると、うれしいもの」だと述べています。それは「『持っている知識や経験を誰かに伝えたい』『自分の能力で誰かを助けたい』そんな欲求を潜在的に持っている」からだそうです。

とはいえ、命令や単純な依頼だけでは「相手の承認欲求は満たされ」ず、「あなたのためにしっかりやろうという気持ちを起こさせることにもつながらない」と言う松橋氏。(上記カッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|“大きな成果”を出す人は、やっぱり「お願い上手」

単純な依頼に終止せず、相手の承認欲求を満たして協力してもらうために、能力を評価することが大切なのですね。

それでは、企画に行き詰っていて相談したい場合を想定して、NGな依頼の仕方とOKな依頼の仕方をご紹介しましょう。

NG例 企画が思いつかないので、相談に乗ってもらえませんか?

OK例 企画が思いつかなくて悩んでいるんです。○○さんの企画はいつも画期的で採用率も高いので、どうしたらいいアイディアが思いつくのか、教えていただけませんか?

どちらの依頼の仕方がいいかは一目瞭然ですね。OK例のように依頼をされたら、張り切って協力してあげたくなりそうです。

このように、アサーティブなコミュニケーションに加え相手の能力を評価したうえで「だからあなたにお願いしたい」と伝えることが大切です。

積み木にアルファベットが書かれていて、GREATと並んでいる

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伝え方を少し工夫するだけで、気持ちよく仕事を引き受けてもらいやすくなります。ぜひ今回ご紹介した方法を実践して、自然と協力者が集まるビジネスパーソンをめざしましょう!

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