就寝前の思考は、脳や神経に影響を及ぼしやすいそうです。だからこそ、今日のつらかったことや、嫌なことを思い出してばかりいるのはおすすめしません。寝る前こそ今日のよかったことを頭に思い浮かべ、手で書き出してみましょう。
識者らに学ぶ「寝る前にやってはいけないこと」と、毎日の習慣にするべき「就寝前によかったことを5つ書く方眼ノート術」を紹介します。
寝る前の「無防備な脳」には危険がいっぱい
公認心理師・うつ専門メンタルコーチの川本義巳氏によると、いつも憂うつな人の共通点は、夜寝る前に今日の嫌だったこと、つらかったことを思い出すところなのだそうです。
たとえば、「また今日も会議で意見を言えなかった」「店員さんの感じが悪かった」などと考え続け、さらには過去の嫌な記憶まで引っ張り出し、疲れて眠るまでこの作業を続けてしまうのだとか。
川本氏いわく、もうすぐにでも寝てしまうような半覚醒状態のとき、脳はとてもリラックスしているため、非常に無防備な状態とのこと。ポジティブな言葉を素直に受け止められる反面、ネガティブな言葉もすんなりと受け入れてしまうそうです。
だから、寝る前にマイナス思考で過ごしてばかりいると、無意識の領域にそれらが格納されてしまい、日常の行動や思考までもが、どんどんマイナスになってしまうのだとか。
そこで川本氏は、ほんの少しでも「よかった・癒された」と感じられたことを、就寝前に思い出すようすすめています。
「脳のゴールデンタイム」がムダになるクセ
精神科医で作家の樺沢紫苑氏によると、どんな人にも、一日のうちに “つらいこと・楽しいこと” は同じくらい起こっているそうです。それなのに、寝る前につらかったことばかりを思い出す頻度は、人により差が出るのだとか。
突発的なことは別として、もしも上記のようにみなが同じ条件下にあるとすれば、寝る前につらかったことばかりを思い出している人々は、ムダに不愉快な時間を過ごしていることになります。
加えて、一日の終わりの寝る前15分間を樺沢氏は「脳のゴールデンタイム」と呼び、非常に記憶しやすい時間帯だと言います。嫌な記憶を刷り込むより、嬉しかったことや楽しかったことを、しっかりと記憶するほうがいいのは明白です。
そうしたことから樺沢氏は、就寝前の15分以内に、嬉しかったことや楽しかったことなどのポジティブな出来事を、3つ思い出すようすすめています。「配達の人が感じよかった」「〇〇の変顔が笑えた」「かわいい犬と目が合った」などなど、些細なことなら意外とたくさん思い出せるはず。
「日記習慣」が自律神経の切り替えをスムーズに
私たちのからだを無意識のうちに働かせている自律神経は、からだを活発に動かすときに働く交感神経と、休めるときに働く副交感神経のふたつに分かれるそう。
たとえば、朝の目覚めには副交感神経優位モードから⇒交感神経への切り替えが必要となり、夜の眠りには交感神経優位モードから⇒副交感神経への切り替えが必要になるとのこと。いまひとつ調子が出ないときは、自律神経の切り替えがスムーズにできていない可能性があるそうです(以上、「e-ヘルスネット(厚生労働省)」と「サワイ健康推進課」の説明より)。
そうしたなか、自律神経研究の第一人者として知られる順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、日記を書くことで自律神経の切り替えがスムーズになると伝えています。切り替えがうまくいけば日中のイライラモードがリセットされ、ぐっすり眠れるようにもなるとのこと。
また、心身の状態を日々書き留めていると、ちょっとした不調にも気づきやすいそうです。さらに、就寝前の日記は副交感神経を優位にするので、寝ているときの腸の消化吸収力が活発になり、免疫力を高めてくれるのだとか。いいことづくめですね!
寝る前のネガティブ思考を防ぐコツ
国家資格キャリアコンサルタントの池田千恵氏の場合は、就寝前に今日一日を振り返り、よかったことを5つ数えるようすすめています。同氏が「よかったファイブ」と呼ぶこの習慣で数えるのは起こった事実だけなので、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と後悔ばかりに傾く思考を抑制できるとのこと。
ちなみに、なぜ5つかと言えば、池田氏が長年お世話になっている医師が、「1~3つより、5つ挙げるほうが大変なので、そのぶん無理にでも “よかった体験” を数えられるようになる」と教えてくれたからなのだそう。「よかったこと」が貯まれば自信も積み上がるので、ノートに記録していくといいそうです。
「よかったことを5つ書く方眼ノート術」をやってみた
そこで今回筆者は、池田氏の「よかったファイブ」を、8mm方眼罫のノートで実践してみることにしました。まるでペン字を練習するかのように、マス目のなかに1文字1文字ゆっくり、丁寧に書いていこうと思います。
なぜならば、前出の小林氏が「マス目に沿ってきれいに書ける方眼ノートを使うと、書いているうちに気持ちが落ち着く」と伝えているからです。
同氏によると、(うまい・へたではなく)乱雑な文字は自律神経の乱れにつながるので、ゆっくり丁寧に書くことが大切とのこと。気持ちに余裕がないときほど、そうしたほうがいいそうです。
上の写真は、筆者が実際に書いたノートです。内容は「欲しかった味ののど飴が買えた」「お腹が数ミリへこんだ気がする」など、本当にどうでもいいことばかり。
しかし、一日の終わりに必死になって「今日のよかったこと」を探していたら、就寝前の思考がその “よかったこと” に、すっかり覆われてしまいました。
そうして生まれたのは、「完璧ではないが明日も何かしらいいことがあるだろう」という感覚と、「きっと何かは(些細でも達成)できるだろう」という、ごくごく小さな自信でした。これが積み重なれば、自信を失わせるちょっとしたスキマだって埋まるのではないでしょうか。
また、寝る直前の静かな時間、丁寧に、ゆっくりと、うまくマス目のなかに入るように文字を書いていると、本当に心が安らぎます。
とりわけ筆者は文字を省略して速く書こうとしてしまうので、心の落ち着き具合を強く感じました。ものすごく、おすすめです……!
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寝る前に「よかったことを5つ書く方眼ノート術」で、どんどん自信が積みあがるワケは、小さなたくさんの「よかったこと」が思考を覆い、気分を下げるスキマまでも埋めてくれるからでした。よろしければお試しくださいね。
(参考)
ゆほびかweb(マキノ出版)|【樺沢紫苑】名精神科医が教える!大開運の口ぐせと「ポジティブ3行日記」後編
サンキュ!(Benesse)|ネガティブな感情をリセット!自律神経が整う1日3行日記のススメ
朝時間.jp|クヨクヨ体質をリセット!就寝前の「良かったファイブ」ノート術
ESSEonline|憂鬱な人に共通する習慣。「寝る前」にやってはいけないこと
@DIME アットダイム|手帳やノートが乱雑な人は自律神経が乱れ気味?
サワイ健康推進課|朝が変わる!良い睡眠のための「寝る前習慣」
e-ヘルスネット(厚生労働省)|自律神経失調症
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