なかなか覚えられないのは「素質がないから」「年齢のせい」などと言い訳していませんか?
日本記憶力選手権大会で延べ6回も優勝し、日本人で初めて「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得した池田義博氏によれば、記憶力は筋肉と同じなのだとか。鍛えれば鍛えるほど向上するそうです。
そこで今回は、あまりにもいろいろと思い出せないので「うっかり記憶を断捨離したのではないか……」と不安になっている筆者が、記憶力アップに役立つ「イメージ変換トレーニング」に挑戦してみました。
まずは、記憶における「イメージ」の重要性から説明します。
なぜ記憶に「イメージ」が大切なのか?
こんな “ことわざ” があります。
“A picture is worth a thousand words” ――1枚の絵(写真)は千の言葉に値する――
日本でいうところの「百聞は一見にしかず」ですが、注目したいのは、ものすごくたくさんの言葉に、“たった1枚の画像が匹敵する” と説いている部分。
池田義博氏いわく、脳は「文字」よりも、絵や映像などの「イメージ」を優先的に覚え、思い出すとのこと。世間にはさまざまな記憶術がありますが、本質はどれも「絵や映像で覚えること・イメージングすること」である、と同氏は断言しています。
たとえば、「以下の文字を眺めて内容を記憶してください」
と言われるよりも、「以下の写真を眺めて内容を記憶してください」
と言われるほうが覚えやすいのではないでしょうか。
あるいは、文字情報を絵に描きなおしてもいいかもしれません。 カナダのウォータールー大学が行なった、2018年8月30日公開の研究では、学習の対象を絵に描くことで、記憶力が向上するとわかったそうです。単語や画像だけではなく、教科書の定義などの学習も、描画によって強化されたとのこと。
池田氏は言います。
単語も数字も人の名前も、文字ではなく映像に変換して覚えるのが記憶術の基本です。
(引用元:東洋経済オンライン|忘れっぽい人でも「記憶力」をぐんと伸ばすコツ)
先述のとおり、その「記憶術の基本」は、科学的にも証明されているわけです。
「イメージ変換のトレーニング」のやり方
しかし、「文字」を絵や映像などの「イメージ」に変換するのが難しいと感じる方も多いでしょう。そこで、「イメージ変換トレーニング」が役立ちます。
池田氏が著した『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル』(サンマーク出版 )を参考に、手づくりで行なう場合の「イメージ変換トレーニング」のプロセスを書き出してみました。
(参考:池田義博(2019),『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル 』, サンマーク出版.)
- 表をつくる
- 言葉を書き入れる
- 2つの言葉(列ごと)でイメージをつくる
- 2つの言葉のひとつを消す
- つくったイメージを思い出しながら、消された言葉を再度書き出す
このプロセスで一番重要な、3番目の「イメージをつくる」について少し説明しましょう。
列の上下に「ガム」と「屋根」という言葉を書いたとします。その場合、たとえば「屋根にガムがくっついている」イメージなどを思い浮かべます。
あるいは、もっとインパクトのある「巨大なガムにくっつかれて屋根が外れた」などのイメージでもいいかもしれません。
記憶術と速読の実践研究で知られる、トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏は、イメージによる記憶を強化するのは、そのイメージを突拍子もないものにすることだと、著書『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』(マガジンハウス)の中で述べています。
では、さっそく筆者も挑戦してみましょう。
「イメージ変換トレーニング」をやってみる
まずは、2行×10列(2段)で「イメージ変換トレーニング」のための表をつくります。
表ができたら、脈絡を気にせず、思いついたまま20個の言葉を埋めていきます。
次に、上下の言葉で、“突拍子もないこと” を意識しながら、自由にイメージをつくっていきます。筆者の場合はこうなりました。
- コップ(警察官)とコップが横断歩道で交通指導
- 傘をひっくり返し皿にして、カレーをがっつりテイクアウト
- ばんそうこう型タオルがやけに拭きにくい
- この税金は巨大クッションに利用されます
- 国道を走っていたら純喫茶「ノーベル賞」を発見
- かなり苦しそうにストレッチしている卵
- 「工事中ご迷惑をおかけします」と犬が言う
- 小さいスズメが大型トラック運転中
- ヒーターしか出てこない映画
- 鏡に映りたがる美意識高めのぬいぐるみ
くすっと笑えるイメージ変換なので、とてもおもしろいのですが、なかなか最初は難しいものですね。
次に、一列にある2つの言葉の、ひとつだけを消していきます。
最後に、先ほど考えたイメージを思い出しながら、空欄を埋めていきましょう。
あれ……! これは想像以上です。驚くほどイメージが頭の中に浮かんできますよ。
「イメージ変換のトレーニング」をやってみた感想
イメージ変換のトレーニングをやってみたのは今回が初めてですが、難なく全問正解でした。
2つの言葉でイメージをつくるプロセスに少し時間がかかったので、印象に残りやすかった部分もあるかもしれません。
しかし、情報の一片(2つの言葉のうちのひとつ)を目にするだけで、あれほどすぐに自分が考えたイメージが浮かんでくるとは思いませんでした。
「そもそも脳はイメージで考えることが得意なので、イメージで覚えたほうが楽」だと池田氏は言います。同氏いわく「記憶力=イメージの力」とのこと。
ぜひ、このトレーニングを積んでイメージ変換に慣れ、記憶力を高めてくださいね。
***
今回参考にさせていただいた池田氏の『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル』(サンマーク出版 )には、イメージ変換の訓練以外にも、さまざまな記憶力アップ問題が記載されているので、ぜひご覧になってみてください。
筋トレばりに記憶力を鍛えて、みんなでムキムキになりましょう!
(参考)
東洋経済オンライン|忘れっぽい人でも「記憶力」をぐんと伸ばすコツ
SAGE Journals|The Surprisingly Powerful Influence of Drawing on Memory
ゴガクル英語|フレーズ・例文 百聞は一見にしかず。
宇都出雅巳(2016),『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』, マガジンハウス.
池田義博(2019),『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル 』, サンマーク出版.
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。