わかりやすいノートの取り方・6つのルール

わかりやすいノートの取り方1

今回のテーマは「ノートの取り方」。授業やセミナー、会議や研修など、「人の話を聞きながら、内容をノートに書き留める」機会は多いもの。

しかし、先生が話すスピードが速くてペンが追いつかなかったり、復習しようと授業ノートを見返したとき、自分で書いたのに理解できなかったりと、ノートのとり方で悩んでいる方は多いのではないでしょうか?

そこで今回は、話のポイントを書き留めるコツと、世界一のノート術として名高い「コーネル式ノート術」を解説し、ノート・メモの極意をより深く学べるオススメ書籍をご紹介します。勉強にも仕事にも役立つので、大学生から社会人まで、ノートの取り方にお悩みの方は、ぜひご一読ください。

わかりやすいノートの取り方の条件

上手なノートの取り方の条件としては、「再現性」と「素早さ」という2つが考えられます。

再現性

そもそも、ノートを取る最大の目的は、知識などを「記録」することです。人間は、1回聞いただけの話を、すぐに忘れてしまうもの。記録として残しておき、あとから記憶を再現できるようにしておく必要があるのです。したがって、「読み返したときに、わかりやすいか」という点が、ノートの良し悪しを決める大きなポイントになります。

素早さ

講義やセミナー、会議など「人の話をノートに書き留める」シチュエーションでは、ノートを取るスピードも重要です。ノートを取ることに時間をかけすぎると、大事なことを聞き逃したり、話の内容にまで考えが回らなかったりしてしまいます。したがって、講義中などのノートの取り方としては、「大事だと思ったことだけを、ササっと書き留める」くらいが理想です。

わかりやすいノートの取り方2

わかりやすいノートの取り方のコツ

上で挙げた2つの条件を満たすためには、具体的にどのようなノートの取り方をするべきなのでしょうか? 6つのポイントをご紹介します。

ポイントを絞る

ノートを取る際にやりがちなのが、話を一言一句そのまま写そうとすること。

ノートに書いておく情報は、多ければ多いほどよいわけではありません。むしろ、書き留めた情報があまりに多すぎると、読み返すときに混乱してしまうかもしれませんね。そもそも、言葉を書き写すことに必死になり、話の内容の理解がおろそかになってしまっては、本末転倒です。

ノートを取る際には、「どの情報が重要か」「どの情報を書き残すべきか」を考え、取捨選択しましょう。たとえば、すでに知っている情報や、自分にとって必要でない情報、重複する情報などは、わざわざノートに書く必要がないはずです(※ただし、会議の議事録のように、言葉を一言一句正確に残しておかなければならない場合は別)。

どの情報を残すべきか判断できない、という方は、「その話から何を学びたいか」を、あらかじめ明確にしておきましょう。たとえば、Apple社に関するセミナーで「斬新なアイデアの生み方」を学びたいと思っている場合、「iPhoneが生まれた経緯」「スティーブ・ジョブズの仕事術」などは重要ですが、「Apple社の事業戦略」「スティーブ・ジョブズの生い立ち」などの情報は、ノートに書き残す必要性が低いですよね。

ノートに何を書き残しておくかを判断するには、「感動」という基準もあります。セミナーを受ける目的が、「気づき」や「自己成長」を得ることである場合などは、特に効果的でしょう。

箇条書きで簡潔に書く

主語や述語が完璧に整った長い文章を書くのではなく、キーワードや要点だけを簡潔にまとめて「箇条書き」するのが、ノートの取り方の基本です。たとえば、話のなかで以下のような説明があったとします。

サブスクリプションとは、製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を支払う方式のこと。

一言一句ノートに書き留めるよりも、以下のように短くすると、素早く書き終わりますね。

サブスクリプション=商品の一定期間利用に代金発生

ノートを取るための時間は限られています。「完全な文章を書く」ことよりも「要点を簡潔に書く」ことに注力し、話を聞いて理解するための時間的余裕を確保しましょう。

記号・略語を用いる

素早くノートを取る秘けつは、情報の「記号化」や「省略」。ノートを取るときに使える記号には、以下のような例があります。

  • たとえば→ex
  • 参考→cf
  • なぜならば→∵
  • ゆえに→∴

こうすれば、わざわざ接続詞を書かなくても、情報の意味や論理関係を表現できます。あるいは、たとえばセミナーで「マネタイズ」という言葉が頻出するのであれば、2回目以降は「マネ」と略すなど、できるだけ短く書ける工夫をしましょう。

ただし、記号化・省略の際は、「ノートを読み返したときにわかるかどうか」に気をつけてください。忘れてしまいそうなら、ノートの端に「マネ=マネタイズの略」など、記述のルールをメモしておくと安心です。

忘れることを前提に書く

必ず念頭に置いておきたいのが、「ノートを読み返す頃には、話の内容をほとんど忘れている」ということ。

講義などの直後、まだ記憶が新しい段階ならば、雑に書かれたノートを読んでも理解できるでしょう。しかし、数日経って復習する頃には、内容をほとんど忘れている状態から、ノートの文字情報だけを頼りに記憶を再生することになるのです。

ノートを取るときには、「数日後の自分が読んでも理解できるか?」を常に意識しましょう。さもないと、“自分でも読めないノート” になり、頑張って記録を残した意味がなくなってしまいます。

「簡潔に」かつ「読みやすいように」書かなければならないのが、ノートを取る難しさなのです。

「記憶のとっかかり」をつくる

あとで復習することを考え、「記憶のとっかかり」になることをノートに書き残しておきましょう。本筋から外れた雑談や、話の最中に起きたハプニングなど、印象的なエピソードを書き残しておくと、読み返したときに「ああ、あのとき習ったことだな」と記憶がよみがえりやすくなります。

筆者の高校時代の体験をお話ししましょう。採用1年目で不慣れだった地理の先生が、地球の自転によって生じる「コリオリの力」をうまく説明できず、しどろもどろになってしまったことがありました。そのときの先生の焦った表情や、教室の気まずい雰囲気などと合わせて、今でも「コリオリの力」という言葉が頭に残っています。

また、話の内容と関連する図やイラストを描くことも、記憶のとっかかりを残す手段として有効です。

重要な項目に○をつける

クリエイティブ・ディレクターの小西利行氏は、記憶の再現性を高める方法として「重要な箇所に○印をつける」というテクニックを紹介しています。

ノートに書かれている情報は、すべてが同じくらい重要というわけではありません。「必ず覚えなければ」という情報もあれば、「余裕があったら覚えよう」という程度の情報もあるでしょう。しかし、ノートに書きこまれた文字情報をざっと見るだけでは、「情報の重さ」の違いを見極めることは困難です。

そこで、「重要な項目に○印をつける」というシンプルなテクニックを用います。「この箇所は重要ですよ」というメッセージを未来の自分に送ることで、復習時の混乱を防げるのです。「重要な情報を絞れず、たくさん○がついてしまう」という方は、「1ページに3つまで」などのルールをつくりましょう。

以上、「わかりやすいノートの取り方」として、6つの具体的なポイントをご紹介しました。次にノートを取る際は意識してみてください。

わかりやすいノートの取り方3

「コーネル式」ノートの取り方

復習を効率化できる方法として、「コーネル式」というノートの取り方をご紹介します。コーネル式ノート術とは、アメリカの名門・コーネル大学の教授だったウォルター・パーク氏によって開発された方法です。

コーネル式では、ノートの紙面を以下のように3つに区切って使います

コーネル式のノートの取り方。1ページを「キーワード」「ノート」「サマリー」に分ける。

(画像は筆者が作成)

青色で囲った「ノート」のスペースは、普通のノートと同様に、話の内容をメモする目的で使用します。前章までに紹介してきたコツを踏まえながら、必要な情報を過不足なく記入してください。

黄色で囲った「キーワード」と、赤で囲った「サマリー」は、復習のタイミングで活用するスペース。「キーワード」には、話に登場した重要な言葉や、復習中に浮かんだ疑問、補足情報などを書き込みます。上の例では、「5Gの意味」「3つの特徴」など、見出しのようなキーワードのほか、「Gbpsとは?」といった疑問も書きました。

「キーワード」スペースは、「ノート」スペースの内容をきちんと覚えているか確認するため、小テストのように活用することもできます。「キーワード」スペースに書かれている「3つの特徴」という言葉を見て、「高速・大容量」「多数端末接続」「低遅延」という5Gの3つの特徴を列挙できるか確かめるのです。

サマリー」スペースには、「ノート」の内容を簡潔に要約してください。要約作業をとおして話の本質を理解できますし、次回以降の復習にも役立ちます。試験直前などで時間がないときは、各ページの「サマリー」だけを拾い読みするだけでも、大きな復習効果が得られるでしょう。

知識を効率的にインプットしたい方は、「コーネル式」のノートの取り方を、ぜひ実践してみてください。

わかりやすいノートの取り方4

ノートの取り方を学べる本

最後に、ノートの取り方をもっと詳しく知りたい人向けに、オススメの本を3冊ご紹介します。

『メモの魔力 The Magic of Memos』

1冊目は、SHOWROOM株式会社代表取締役社長・前田裕二氏の『メモの魔力 The Magic of Memos』。大ヒットを記録した話題作なので、ご存じの方も多いでしょう。『メモの魔力』で紹介されているノート術(メモ術)では、単に知識をインプットするのでなく、あとでどうアウトプットするか、という点に主眼が置かれています。

具体的には、

  1. 知識や事象を書き留める(インプット
  2. 本質を取り出す(抽象化
  3. ほかのものに適用できないか考える(アウトプット

という手順をたどることで、ひとつの情報から多くの学びを得るのです。

ノート術としてのテクニカルな話だけでなく、仕事をするうえでの本質的な考え方や、前田氏自身の信念や思想にも触れることができる良書ですので、ぜひ手に取ってみてください。

『図解 頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』

次に紹介するのは、経営コンサルタントの高橋政史氏による『図解 頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』。特に「方眼ノート」を使うメリットを解説しています。方眼ノートには、「レイアウトが自然と綺麗になる」「思考のフレームが定まりやすい」など、数々の利点があるそうです。

ノート術一般についての記述も豊富で、図解も充実しています。方眼ノートの導入を考えている方のみならず、ノートの取り方に悩んでいる多くの方にとっても役立つ内容です。

『「超」AI整理法 無限にためて瞬時に引き出す』

最後は、経済学者の野口悠紀雄氏による『「超」AI整理法 無限にためて瞬時に引き出す』。スマートフォンなどに蓄積された「電子メモ」を、AIツールを駆使して整理する方法を解説した、少し上級者向けの内容です。

スマートフォンやPCにメモを打ち込み、保存している方は多いでしょう。電子媒体は紙のノートと違って携帯しやすいし、いくらでも書き込めるので便利な一方、「情報が膨大すぎて活用しにくい」という欠点があります。

『「超」AI整理法』では、乱雑にたまりがちなメモデータを検索・活用する極意が、9章に渡って解説されています。ノートの取り方を学びたい方だけでなく、AIについて知りたい方にも興味深い内容になっていますので、ぜひチャレンジしてみてださい。

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ノートの取り方は、勉強はもちろん仕事のクオリティにも直結しうる必携のスキルです。「いかに効率的に、再現性の高いノートをつくるか?」と意識しつつ、自分なりのノートテクニックを確立していきましょう。

(参考)
福島哲史(2006),『いつの間にか仕事が片づく法則』, すばる舎.
高橋政史(2014),『図解 頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』, かんき出版.
東大家庭教師友の会(2014),『東大生が捨てた勉強法 なぜ彼らは「あのやり方」をやめたのか』, PHP研究所.
小西利行(2016),『仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。』, かんき出版.
吉田裕子(2016),『「きちんと考える」技術』, 秀和システム.
市村洋文(2017),『1億稼ぐ人の「超」メモ術』, プレジデント社.
前田裕二(2018),『メモの魔力 The Magic of Memos』, 幻冬舎.
野口悠紀雄(2019),『「超」AI整理法 無限にためて瞬時に引き出す』, KADOKAWA.
Cornell University|The Cornell Note-taking System
コトバンク|コリオリの力
コトバンク|サブスクリプション
NTTドコモ| 5G(第5世代移動通信システム)

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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